第19話 2学期
僕が病院で入院していた事もあってか、夏休みがあっという間に過ぎてしまった。花火大会の後、LINEでやりたい事リストを送ってもらった。
やりたい事リスト
・体育祭で全力で走りたい
・ゆうくんと遊園地デート
・水族館デート
・占い
・プリクラ……
やりたい事リストは長文で送られてきた。でも、もし自分が明美の立場だったらもっとやりたい事があると思う。高校生で余命1年とか宣告されたら、やりたい事沢山あるはず……。あの夢が本当なら、3月に明美は死ぬ。それまでに出来る限りやりたい事リストをやらないと……。
1番最初に書かれていた体育祭で全力で走りたいという願いはすぐに叶いそうだ。
2学期が始まって、クラスでは体育祭の話題で盛り上がっていた。
「クラスの中から応援団を選びます。誰か、応援団してくれる人居ませんか?」
学級委員が黒板の前で応援団という文字を書き始めた。僕達の高校の体育祭では、1年対2年対3年で行われる。絶対に1年が不利なように思えるが、毎年、意外と良い勝負をする。
その中の応援合戦では、応援団が流行りの曲を踊ったり、歌ったりする。応援団の中から団長と副団長が選ばれ、学年全体を指揮する。
僕達のクラスの他に4クラスあるが、応援団は何人が参加しても大丈夫だが、1人も居なかったらクラスが盛り上がらないため、毎年2人以上は参加している。
去年は賑やかなクラスだったため、10人ぐらい応援団に参加した。応援団の盛り上がりもあって、去年は3年に大差で勝ってしまった。
「ゆうくん、応援団しないの?」
明美が僕に聞いてきた。僕は応援団みたいな人前に立って何かするのはあまり好きでは無い。
「明美がするなら、少し考えるよ」
「私は……純粋に楽しみたいからいいや」
結局、誰も応援団に立候補しなかった。重い空気がクラス中に流れ始める。
「今日の放課後にまた聞きます。それまでに少し考えて見てください」
結局、朝のホームルームでは決まらず、1時間目が始まってしまった。応援団に似合っている人といえば、僕の頭の中に1人思い浮かんだ。
1時間目の授業終わりに、僕はその人の席に向かった。
「ねえ、拓海。応援団しないの?」
中学3年生の体育祭で友達から推薦され、赤組の応援団長になった拓海は、応援団長という役割を見事に果たし、赤組の勝利に貢献した。
あの時は、友達の悪ノリで無理やり応援団長になったらしいが、拓海の応援団長の姿はかっこよかった。
「陰キャの僕には似合わないよ」
体育祭の応援団はリア充と陽キャの集まりだとよく言われている。そういう面では拓海は応援団には似合わないかもしれない。
「でも、あの時の拓海が1番カッコよかったよ」
「応援団になったら、モテるかな?」
「モテ期が来るかもしれないよ」
「でも、こんな僕をみんなが応援団として認めてくれるかな……」
拓海は自分の事になると、いつもネガティブに考えてしまうところがある。拓海は友達も多いし、人脈も広いから大丈夫だと思うけど……。
その日の放課後のホームルームで再び応援団を決める事になった。
「誰か、応援団したい人は居ますか?」
その瞬間、2人の手が上がった。拓海と女の人だった。結局、拓海は応援団になることを決めた。もう1人の女の人は誰だっけ……。僕は人の名前を覚えるのが苦手で、クラスメイトの名前もまだ覚えられていない。
立候補した彼女は髪がショートで眼鏡をかけていて、いつも恋愛小説を読んでいるイメージしか無い。クラスのムードメーカー的存在でも無い。
どうして……彼女が立候補したのだろうか。黒板に名前が書かれてた。
石原拓海、
この2人がクラスの応援団となった。「頑張れよ」「絶対勝とうぜ」そんな声が聞こえてきた。
そして、何故か分からないが、数日後、応援団だけの会議で団長が拓海、副団長が水野さんになってしまった。
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