第2話 10年後
朝食を食べ終えた僕は、自分が何をしているのか調べるために、自分の部屋に戻ってスマホを手に取った。
スマホの電源を入れると、時間が大きく表示されていて、鍵のマークが下にあった。このスマホには、暗証番号4桁の数字でロックされている。暗証番号を解かないと……。
それから、自分の今のスマホの暗証番号である自分の誕生日や同じ数字の羅列、好きな数字を色々と入れてみたが、どれも違った。
――10分間使用不可能
という文字が表示されたため、諦めてスマホをズボンのポケットに入れた。
これから、何をしたら良いのか1つも分からない。僕がどんな会社に勤めているかも分からないし、何をしているかも分からない。
近くにあったリュックの中を見てみると、手帳が入っていた。ここに何かしら書いているかもしれない。手帳を捲ると、「1年3組 生徒名簿」と書かれた紙が半分に折って最初のページに挟まれていた。
という事は……僕は教師をしているのかもしれない。それから、手帳を捲っていくと学校名が書かれていた。あとは、スマホで検索すれば、学校に行けるかもしれない。スマホの暗証番号をもう1回考え始めた。
「わたし、たんじょうびが6月15日なんだよね」
小学生の明美ちゃんの顔と声が頭に浮かんできた。もしかしたら、10分後、スマホのロック画面に暗証番号が再び表示された。
――0615
その数字を押した瞬間、ホーム画面が開いた。LINEには、知らない名前の人が上の方に沢山いた。その中に明美のLINEもあったが、トーク画面には青色が広がっていた。
「あんなに、順調だったのに……」
ピロリン
明美のLINEを見ていた時、ズッ友ハイスクールという高校3年1組のグループラインから1件のLINEが届いた。
「1週間後の同窓会について詳しく話します。場所は尾道国際ホテルで、時間は19時からです。8000円を各自持参してください」
僕のクラスメイトらしき名前が沢山入っていた。楽しそうだな……。この大人のまま、1週間過ごす事が出来れば、クラスメイトの大人の姿が見れるということか。
明美は、どれだけ可愛くなっているのだろうか。想像するだけで胸が張り裂けそうだった。
「ゆうくん、遅刻するよ!!」
自分の部屋に響き渡る静香の声。僕は、近くに置いてあったスーツを着て、学校に行く準備をした。
外に出ると、青い自転車が1台置かれていた。車の運転は正直、自信は無かったが、自転車なら、、漕げるかもしれない。自転車に乗り、地図を頼りに学校に向かった。
それから、学校に行って授業をしたが、パニックを起こした僕はそのまま倒れ込んでしまい、目が覚めると放課後になっていた。高校生の僕に教師の仕事は無理だった。家に帰ると、静香が待っていた。
「おかえり」
高い声で、僕に向かって笑顔で言ってくれた。静香の可愛らしい高い声に聞き覚えがあったが、思い出せない。
「ただいま……」
そう言いながら、自分の部屋に戻り、鞄を床に置いた。改めて自分の部屋を見渡してみると、本棚に赤い本が入っていることに気がついた。
その本の表紙に「盛栄高校卒業アルバム」と書かれていた。そのアルバムの1ページ目には、生徒一覧が載っていて、写真と名前が書かれていた。僕の写真も拓海の写真もあったが、何故か明美の写真はどこにも無かった。
そして、長い1週間が終わり、いよいよ同窓会が始まる。
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