第3話 同窓会
10年後の世界に来て、あっという間に1週間が過ぎた。慣れない教師や人間関係、色々と大変で1日が長く感じた。早く高校生に戻りたい。
謎のチョコレートも何処にも無いため、戻る方法を完全に見失っていた。僕は、慣れないスーツに着替え、尾道国際ホテルに向かった。今日は同窓会。高校のクラスメイトの10年後の姿が見れると思うと楽しみで仕方がなかった。
「明美の10年後の姿が見れるのか……」
高校生であんなに綺麗で可愛かったのだから、化粧とかしたらもっと可愛くなるだろうな。そんな事を思いながら、電車に乗り、尾道駅に向かった。尾道駅からは、徒歩で5分ぐらいの場所にある。
1週間ぶりに見る尾道の街並みをゆっくり眺めながら、尾道国際ホテルを探した。
「おお、久しぶりだな!!」
後ろから低い男の声が聞こえた。振り返ると、金髪でスーツを着ている男が真後ろに居た。
「誰だっけ?」
「俺は拓海だよ。
つい最近まで見ていた拓海は、眼鏡をかけていて陰キャで勉強熱心だった人で、僕の知っている拓海とは天と地の違いがある。垢抜けた拓海に驚きが隠せなかった。
「10年後、そうなるんだ……」
「なんか言った?」
「いや、金髪カッコいいね」
「だろう?」
口調も全然違う。もしかしたら、明美も金髪ギャルになっているかもしれない。そんな不安も過りながら、高校の話で盛り上がりながら歩き始めた。
「そういえば、高校3年生の夏休みにタイムカプセル埋めたよな?」
僕の知らない話だ。2ヶ月後にタイムカプセルを埋めるのか。僕はどんな物を入れたのかな。
「そうだったね」
「今回の同窓会でそのタイムカプセルを開けるらしいよ」
「そうなんだ……」
2ヶ月後の自分がタイムカプセルに何を入れるのか、自分が持っている物で1番可能性のあるものを考え始めた。高校生活の中で1番思い出がある物って言ったら……日記と1枚の手紙かな。
日記は、高校に入学する時にお母さんに買ってもらった物で、それから毎日起きた事や気持ちを文字にしている。
そして、もう1つの思い出の物である手紙は、小学6年生の時に自分の家に届いた明美からの手紙だ。
何が書かれていたかもう覚えてないが、ずっと机の中に入っている。もしかしたら、タイムカプセルに入れているかもしれない。
「止まってないで、早く行こうぜ」
そんなことを考えていると足が止まっていた。僕は、拓海の元に走って追いつくと、目の前に大きな建物が見えてきた。
上の方にHOTELROYALの文字が見えた。ここが尾道国際ホテルか……。ずっと尾道に住んでいたが、こんな豪華なホテルには来たことが1回も無かった。
尾道国際ホテルに入ると、見た事のある顔が何人か集まっていた。見ただけであの人だと分かる人もいれば、全然分からない人も沢山いた。
「久しぶりだね、裕介」
僕の元に近づいてきたのは、身長の高い眼鏡をかけたクールな男だ。
「あの……誰ですか?」
「俺は、
「うん……」
高校3年生になってクラス替えがあったため、まだ知らない人が沢山いた。桐生君も名前は聞いたことはあったけど、話した事は1回も無かった。
これから、桐生君と仲良くなっていくんだなあ。桐生君と拓海が顔を明るくして色々と話し始めた。
「そういえば、佐藤さんが来れば、文化祭の3班が揃いますね」
拓海がそう言った。文化祭の3班?まだ、文化祭で何をするかも知らない僕は、何のことか1つも分からなかった。文化祭で僕達は何をするんだろう。
それから、みんなと適当に話しながら、時間は過ぎていき、同窓会の開始時間である19時になった。丸い机の周りに拓海と桐生君と僕の3人で座った。
まだ、僕の隣に1つだけ椅子が置かれていた。まだ、あと1人来るのかな……。明美、来てほしいなあ。そう思っていた時、扉が開いた。
「はあ……はあ。ごめん、遅れた」
真っ白なドレス姿のプリンセスが現れた。長い髪、整った美しい顔、体型も細く、高いハイヒールを履いていた。
「遅いよー、早く座りな」
司会の女の人がそう言うと、僕の隣の席に座った。
「久しぶりだね。裕介くん」
「君は……」
「え、覚えてないの?文化祭で一緒に映画作ったじゃん」
「文化祭で映画……」
「それより、どうして白いドレスで着たんだよ」
周平がその女の人に言うと、周りを見渡して恥ずかしそうに、席に座った。
「ごめん。派手な服で来ちゃった」
『そういえば、佐藤さんが来れば、文化祭の3班が揃いますね』
さっきの拓海の言葉が蘇る。もしかして、、
「佐藤さん?」
「そうだよーー。今日は楽しもうね」
期待して損した。顔を見た瞬間、何か違うなとは思ったけど、もしかしたら明美かもしれないと思ってしまった自分を殴りたい。
そして、司会の挨拶と共に同窓会が始まった。明美の姿はどこにも無かった。
「これから、タイムカプセルに入っていたDVDを見たいと思います」
目の前に大きなモニターが現れ、タイトルが表示された。
『男女逆転シンデレラ』
このタイトルを見た瞬間、隣の席の拓海が声を出した。
「これ、文化祭のやつじゃね?」
その声を聞いた周りの人達が騒ぎ始めた。僕達は、文化祭で映画を作ったらしい。
「それじゃあカウントダウンいきます。3.2.1.0」
そのかけ声と同時に映画が上映された。
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