1年学園祭編

第145話 秋の気配

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なんと3万PVの大台に乗りました!

とはいえ、PVは序盤ばっかり増えているんですけど・最新話までお付き合いいただく方はごくわずか。ここまで読んで戴ける事はありがたいお話です。

みなさま、下手くそな作文にお付き合いいただきありがとうございます。

感謝感謝です。

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皇城の東側には皇帝の住まう宮殿が威厳を放ちながらそびえ立っている。

城壁と一体化したその宮殿の朱色の瓦屋根は太陽の光を反射して赤々と輝き、猛々しい雰囲気があるが、宮殿内は静寂に包まれ厳かな雰囲気を漂わせていた。


その宮殿の中を2人の騎士が靴音を響かせて歩いている。



「近衛騎士団団長アルフォンス参りました」

「同じく近衛騎士団副団長マチルダ参りました」


皇帝と内々に接見するため近衛騎士団のアルフォンスとマチルダは応接の間に足を踏み入れた。


「来てくれたか。また相談があってな」


隣に執務長官のトムスを従えた皇帝陛下がゆったりと椅子に座って話を切り出す。


「陛下にお声を戴けることは誉でございます。ご相談とは騎士団から陛下に上奏させていただきました恩赦の件でございますか?」


「そうだな。その件だ。実はエリザベスからもお願いされてしまってな。

そなたからは先日、誘拐事件の進捗が無い事の報告は受けたと思うが、恩赦の件はそれから進展があったということでよいな?」


「では、マチルダから説明させましょう」


「はっ、陛下。エリザベス皇女殿下誘拐の事件について進捗がございました。

魔法学園でエリザベス皇女殿下と同学年のカイト-ドレインとルーク-デュクラージュ卿はご存知でいらっしゃいますでしょうか?」


「ルークはエリザベスを救った生徒であろう。余が叙爵したのだ。もちろん知っておる。カイト-ドレインはドレイン卿の隠し子という事だったな。カイトとやらは良くは知らん」


「事件に関わった容疑で現在拘束中のカミーユと面会を彼らに許可いたしまたところ、カイト-ドレインより首謀者の情報が得られるかもしれないとの話がありました。

同時に彼からカミーユの恩赦を求められました。

恩赦については当初は断ってはいたのですが、エリザベス殿下からも是非にとの事でしたので上奏に至った次第でございます」


「カイト-ドレインが・・。ドレイン家が罪人の恩赦を求めるとはどういう事だ。何か裏があるのではないのか?」


「いえ、私の見立てでは裏はありません。クラスメイトを助けたいのだと考えております」


「私が恩赦を出さなければ、首謀者の事は話さないとそう言う事か?」


「いえ、交換条件などはございません。

カイト-ドレインの話では、陛下からの恩赦がなくても話をさせる事は出来るとの事ですが、是非にとお願いされまして」


「私もエリザベスに是非にとせがまれておる。マチルダ。本心を言ってみたまえ。どのようにするのが良い」


「カイト-ドレインはドレイン家の嫡男ではなくても将来この皇国を代表する魔法使いになる逸材です。ここで恩を売る事は皇室にとって大きな利になるかと。また、皇女殿下に陛下の寛大なお気持ちを見せる事も出来るのであれば、これに替わるものなしと存じます」


「恩赦をしろというのだな」


「もちろん、証言が正しく首謀者が捕まった場合の話です。その時には恩赦をすると皇女殿下に約束されれば良いかと」


「そうだな。では恩赦は前向きに進めるように。長官も法務院にそのように伝えたまえ。

ふぅ。これでエリザベスに良い顔が出来る」


「はっ」

「はっ」

「では、そのようにいたします」



**********



夏が終わり、皇都に涼しい風が吹き始めている。


「すっかり秋の気配ね」

アビーが呟く。


確かに風が心地よい。

動の魔法の実習が終わったあと、僕はまっすぐ寮には戻らずアビーと2人で園庭を散歩していた。ちょっとしたデートだ。


「長い夏だった気がするよ。今年の夏は色々ありすぎだったから」


「夏合宿に、海水浴、魚人騒ぎ、そして皇女殿下誘拐事件・・・」


「今朝ルークから聞いたんだけど、カミーユの恩赦について陛下の許しが出たそうだよ。もちろん首謀者が捕まったらだから、この事はルークと僕、そしてアビーだけの秘密だよ」


「捕まるといいけど、首謀者はもう逃げ出るんじゃないかしら。あれから随分経つもの」


アビーの言う通り殿下誘拐に失敗してカミーユが捕まったし、逃げていてもおかしくないんだけど、シャルロットの話からはどうやら逃げてはないんだよね。


「捕まる事を願うよ」


「そうね。カミーユは学園に戻ってくるの?」


「そうなると思う。魔法の才を持ってるものは魔法学園か修道院預かりになる。

魔法学園の方が目が届くだろうし騎士団としてもその方が良いんじゃないかな」


カミーユに恩赦があった場合、学園に戻って来れるかはまだわからない。でも近衛騎士団は修道院には渡さないだろう。

カミーユらに指示を出した首謀者が捕まったとしても、本当の首謀者であるパオロに繋がる事はないだろう。

近衛騎士団の捜査はまだ続くことになる。カミーユは近衛騎士団の手が届くところに置いておきたいと考えれば修道院はない。


魔法学園に戻ってきたとしても、しばらくはカミーユには監視がつくはずだ。


「そう。じゃクラスメイトとして仲良くしないとね」


「みんなで楽しい魔法学生活に出来たらいいね。そうだ!秋といえば収穫祭だよ!」


「そうね!皇都の収穫祭は見た事ないけど、私の家の領地ストークでも収穫祭は盛大に行われるわ」


「去年の収穫祭に僕は皇都に旅立ったんだ。まだ1年しか経ってないなんてびっくりするよ」


「そういやカイトは農村で暮らしてたって言ってたけど農村の収穫祭ってどんなのかしら」


「僕のいた村では一年でお酒が飲める唯一の日だね。貧しい村だったらお酒を飲んでいる父ちゃんを見るなんて収穫祭くらいだったよ」


「父ちゃん??カイトのお父様はドレイン方伯よね?」


「は、ハハハッ、母方の祖父を父ちゃんって呼んでたんだ。ハハハッ」


「お祖父様はそんなに貧しかったの??貴族よね?」


「実は母さんの祖父はアーブル大陸から渡ってきた貴族なんだ。だからこっちでは貴族ではないんだよ。元貴族だったが正しいかな」


「アーブル大陸の国の貴族だったって事?それで納得いったわ。貧しい生活だった理由がようやく解明ね」


僕はまた口から出まかせが出てしまった。相手によって違う事を言ってるから、聞き取り調査されたらまずいかも!


「カイト。他に隠し事はない?」


今日のアビーは突っ込んでくるなあ。

隠し事だらけだよ!


「ないよ!アビーに隠し事なんて。

収穫祭はみんな楽しそうだったよ。祭りはいいよね!学園祭楽しみだぁ!」


話を逸らすために学園祭の話に話題を変えてみた。


「そういや学園祭もあるのよね。学園祭って何するのかしら?」


アビーは学園祭の事は知らないんだね。一年生で知ってる人の方が少ないだろうけど。


「学園祭って演劇とか出し物だしたり、料理屋台出したりして学園の生徒が楽しむものなんだ」


「料理屋台って庶民的ね。こんなところでそんなもの出して人が来るのかしら?」


「魔法学園の学園祭は皇都の秋の収穫祭の『神奉祭』の一環として行われるからね。すっごい人が来るみたいだよ」


「そうなの?神奉祭は聞いた事はあるけど見た事はないのよ。皇都の収穫祭はとても盛大なんでしょうね」


「凄く盛大なんだよ。英雄アーノルドや過去の使徒達の像が街を練り歩くんだけど、魔法学園の馬車停留場がその使徒の像の中継地点になっているからね。夜は全ての使徒像が魔法学園で待機するんだ。だから魔法学園は見物客でごった返すんだよ」


「そうなの?まるでメイン会場ね」


「神奉祭の見どころは最後にロンドアダマス大聖堂の前に使徒の像が勢揃いしての大奉納典礼だろうね〜。皇族も参加する一大イベントみたいだよ」


「カイトは何故そんなに知ってるのよ?田舎村で暮らしてたんでしょ??」


「僕は勉強家だからね。本の知識だよ」


嘘は言ってはいない。ラノベの知識だからね。

皇都の秋の『神奉祭』は皇都最大の一大イベントだ。皇国各地から観光客が集まってくるからとっても賑やからしい。なにせ人がどんどん集まるから学生の屋台は手が追いつかないので、一般の屋台エリアも用意されるほどだ。


この祭りの間は魔法学園の正門が解放され、馬車停留場が使徒像の停留場になるので、乗り合い馬車はその期間は運行されないし学園自体が休園になる。

だから『神奉祭』に合わせて学園祭を開催するってのはなかなか理にかなっている。


学園祭楽しみだな。



唐突にアビーが僕の腕を掴むと引き寄せてきた。

「デートの時シャルロットとはキスしてないって言ってたけどほんと?」


アビーの赤い瞳が僕を見つめる。


「もちろん。アビーは僕の事見てたのに疑うのかい?」


「皇城の庭園で、シャルロットとキスしようとしてなかったかしら?」


「してない。してない。どこかから水が降ってきたし」


「あら、そう?雨でも降ったの?晴天だったのにおかしいわね」


「水の魔法使ったよね?」


「船の上ではどうだったの?」


「どうって。シャルロットと色々と話したよ。

洗脳とか言ったけど、シャルロットはやっぱり良い子だよ」


「良い子ね。見ててシャルロットは本当にカイトの事が好きなのはわかったわ。これからどうするのよ」


「シャルロットをパオロ達の教会の呪縛から助けてあげたいと思ってる」


「どうやって?」


「シャルロットと心を通わすしかないと思う。僕にはなんでも喋れるようになってほしいかな」


「もう。シャルロットと心を通わせるの? 仕方がないわね。じゃあ私とのキスはお預けかな」


何故そうなる!?アビーとキスはしたい。キスだけじゃなくその先も。


「えっ!?シャルロットとは、と、友達だよ」


「私のことは?」


「アビーの事はす、」


「す?」


「意地悪だねアビーは。アビーは僕の事どう思ってるんだい?」


「女の子にそんな事言わせるの?」


「言わなくて良いよ。キスして」


アビーの美しい赤い瞳が僕を真っ直ぐに見つめる。そして唇が重なった。


学園の中でまたイチャイチャする2人であった。



*********

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