第143話 騒がしいディナー

全ての競技が終わり、僕たちはディナーを食べるために貴族街のレストランに移動した。

レストランは以前マチルダ副団長に連れてきてもらった貴族の屋敷を改装したレストランで、出迎えには騎士がずらりと10名以上並んでいたのだが、その中になんとマチルダ副団長の姿もあった。


「皇女殿下、お待ちしておりました」

マチルダ副団長が一歩前に踏み出て跪くと深々と頭を下げる。


後ろの騎士達も同じように跪き頭を下げるが、騎士達は赤や青のタスキをつけている。もしかしてさっきの競技に出ていた騎士達だろうか?


「副団長さんがお出迎えですか?今朝お会いした時はお聞きしていませんでしたけど」


「実は今日の競争競技の敗者チームを駆り出しました。殿下に労ってもらおうと画策していたのですよ。殿下の横で慰労も兼ねて食事をさせてもらってもよろしいでしょうか?」


「そう言う事ね。ルーク、カイトさんよろしいですか?」


「もちろんです!!マチルダ副団長!騎士の競技を色々教えてください!!」

ルークがハキハキと答える。騎士団モードに入ったようだ。


「せっかくのデートを邪魔して悪いね。もし良かったら後で私の席の横に来るかい?」


「是非お願いします!」


「ルークったら張り切っちゃって」

エリザベス殿下がちょっと嬉しそうに微笑んだ。


「僕も後でマチルダ副団長にお話したい事があるのですが・・」


「シャルロットくんをほっといて私に興味があるのかな?もちろん大歓迎だ。君は私の中では近衛騎士団の一員だからね。もう私から逃れることはできないのさ」


えっ。唾つけているどころか蛇に絡まれている気分なのですけど・・。


「いえ、マチルダ副団長に相談があるだけなのですが」


「もちろん相談にも乗る。なんでも私に相談しなさい」


「ありがとうございます」




そうやってディナーが始まった。

とてもおしゃれな貴族御用達のレストランだけど、今日は騎士達が大盛り上がりで賑やかな食事となった。


ウインライト「それにしても騎士駿馬競争ってめちゃくちゃ面白いですね!!俺も騎士団に入って競技やりたいっす!!」


「そうだろう!今日は負けたがあの競技は騎士の全てが詰まってるぞ。君も是非魔法学園を卒業したら騎士団に入ってくれ!!」


いつのまにか騎士達に混じってウインライトが飲んでいるんだけど・・・。

鎧を脱いだ騎士の人たちも嬉しそうに競技の話をしている。


ルーク「1レース目は青が赤を押さえ込んだけど、2レース目は青は赤の押さえ込みに失敗しましたよね!どこが問題でした?」


いつの間にかルークまで目を輝やかせてやってきて騎士達に質問を始めた。


「1レース目はこいつ(指さして)が早々に獲物を落としやがったからな!!それで押さえ込まれちまったんだよ」


「いやあスマンスマン・・いててて・・笑うと肋骨が痛むぜ」

指をさされた騎士が笑って謝るが、どうやら落馬の衝撃で肋骨を折ったらしい。


ルーク「あっ!落馬の時に痛めたんです!?」


「ああ、落馬の時に肋骨を痛めちまった。まあ騎士なら骨折はみんな一度は経験するさ。いててて」


ウインライト「俺も早く騎士団に入って骨折してえ!!」



・・・バカな話が聞こえてくる。ウインライトは本当に騎士に憧れてるんだねえ。


アビーとマーガレット、そしてリオニーは隅のテーブルで食べているが、酒が入ったせいで探偵団の事など忘れて盛り上がっているようだ。恋バナでもしているのだろうか?


これでシャルロットが気づかないわけがない。

視線を移すとシャルロットが黙々と食事を食べている。すぐに、シャルロットが僕のほうを見て微笑む。


「シャルロット気づいた?ウインライトやアビーもここで食べているみたいだね」


「うん。知ってたの。朝からカイトの事を見てたの」

「えっ!?朝から??」


探偵団は最初からバレバレだったって事!?僕は朝は何処にいるのかさっぱりわからなかったのに。


「うん。アビーがカイトに水魔法で水かけてたの」


それもバレてる!!


「なんなんだろうねぇ。僕とシャルロットのデートが気になったのかな?」


「うん。たぶんそうなの。カイトは渡さないの」

「僕は誰のものでもないんだけど・・・」

「シャルロットはカイトの1番になるの」


「あははは・・・」



「そうそう。カミーユを助ける件だけど、さっきルークにこっそり相談してみたんだ」


「うん」

シャルロットが食事をやめて横に座る僕を見つめた。


「それで2人でマチルダさんに当たってみようと思う。いいよね?」


「うん。カイト・・ありがとう」

シャルロットの目が少し潤んでいるような気がする。やはりシャルロットは素敵な良い子なんだ。


「シャルロットの頼みだからね。頑張ってみるよ」



*******



食事も最後のデザートと紅茶がやってくると言う時に、僕はルークと共にマチルダ副団長に話しかける。


「少しお話しよろしいでしょうか?」

「ああ、構わないさ。少し酔っているがいいかい?」


「もちろんです」


このレストランは室内だけでなく、昼間には美しい庭園が見られるテラス席が用意されている。夜は暗くて庭園が見れないため使われないそのテラス席にマチルダ副団長と共に移った。


「それで、話とはなにかな?2人で騎士団に入隊する事を決めたのかい?」


「カミーユの件で相談があります」

僕は真剣な眼差しでマチルダ副団長の冗談に切り返した。

冗談なのか本気なのかはわからないけど・・


「カミーユは重要な容疑者だ。皇女殿下の誘拐犯を助けることはできんぞ」

マチルダ副団長も途端に表情が固くなる。


「シャルロットからある情報を得たのでご相談なのです」


「ある情報とはなんだ?シャルロットはやはり何か知っていたか?」


「いえ、シャルロットが直接知っているわけではありません。しかしカミーユに指示を出していた可能性のある人物はいるようです」


「その人物は誰だ?どこにいる?」


「それを知るのはカミーユだけです。そこで相談です。僕とルークがカミーユに面会する許可をください」


「取り調べ中の人物の面会は断ったはずだが?」


「僕とルークがカミーユを説得して首謀者を聞き出せるとしてでもですか?」


「君たちがカミーユから首謀者の事を聞き出せると言うのか?」


「はい。ただしこれはカミーユと話をしてからですが・・真実を話せばカミーユに恩赦を与えると言う条件をつけてみてはと思っています」


「皇女殿下誘拐に携わった人間に恩赦!?そんなもの認められるはずがないだろう」


「だからルークにも加わってもらっているのです。皇帝陛下へ懇願できるのは皇女殿下しかいらっしゃいませんので」


「恩赦?、、それは無理だ。皇帝、皇室の権威を傷つけるものが死罪にならないことはあってはならない」


「私はカミーユは、修道院で洗脳され皇女殿下誘拐への加担も誘拐だとは思っていなかったのではないかと考えています。

シャルロットから聞いたのはカミーユは神の御心に従ったのだろうとの話だけですが、それで僕は確信しました」


「神の御心だと!?ルーク!お前もアインホルンの森で皇女殿下を救出した時に同じ言葉を聞いたんだったな」


ルーク「はい。俺が皇女殿下を襲った賊と剣を交えた時に、賊は神の御心だと言っていました」


「やはり真聖教会・・パオロか?」


「シャルロットの話からカミーユは孤児院で洗脳されたと考えています。僕はカミーユを救いたい。そう思っています」


「洗脳されていたとしても、カミーユに恩赦は難しいと思うが・・君たちにカミーユとの面会の許可は出そう。どちらにしろ手詰まりだったからな」


「ありがとうございます!!」



****



その頃・・・・


「シャルロット!カイトとのデートはどうだったのよ!!」

アビーが赤い髪に赤い目、赤い顔をしてシャルロットに絡んでいた。


「そうやでええ〜〜カイトとどこまでいったんや〜〜Aまでか?Cまでか?」

リオニーも絡んでいた。


「えっと・・・キスまでなの・・」


「ええええ!!!!キスしたんかい!!うちもまだしてへんのに!!!カイトに今度文句いったる!!!」


「ダメよ!!ダメダメダメ〜〜!!私以外にキスなんてさせないわよ!!」

アビーがリオニーの頭を押さえつけるが、リオニーは驚いた顔をして振り返り、その顔をアビーの目と鼻の先にまで寄せマジマジと見つめる。


「えっ!?・・・・・・・

ど、どういうことなん??もしかしてアビーも!?!!!!」



*************

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