第137話 ダブルデート2
俺に淡い緑色の服を着た美女が近づいてくる。
近衛騎士団の団員でエリザベス殿下の護衛をしているレイラさんだ。
「ウインライト君とマーガレットさんこんにちわ。今日ご一緒するレイラです。君たちには私と行動を共にしてもらいます。よろしくね」
「ああ。よろしくお願いします」
「よろしくお願いします」
「打ち合わせの時に話をしましたが、私はエリザベス殿下の身を守るため、殿下の赴く所に先に行き安全を確認する役目を負っています。
もし、不審な人物がいる場合は尋問も致しますが、あなた達は何もしなくても構いません」
「わかりました」
「わかったわ」
「じゃあ今日はよろしくね。」
レイラさんは黒灰色の髪を持つ美人だ。20過ぎだろうか?とっても美人で大人の魅力に溢れている。
近衛騎士団に入ればこんな美人と仕事が出来る!?絶対騎士団に入ってやるぞ。
「ウイン。ちょっと顔がニヤけてるんですけど。どう言う事?レイラさんみたいなのが好みなの?」
「そうだな〜。大人の魅力って奴じゃねえか?マーガレットはまだ子供だからな!」
「何よー!ウインだってまだ子供じゃない。でも確かに綺麗な人だね〜〜。殿下の護衛だけはあるわね」
ーーーーーーー
「カイトはまだこーへんのか?おっそいなあ」
「もうそろそろだと思うわよ。それにしてもその格好。この宮殿に全く合わないわね」
リオニーは庶民的な服装として茶色い麻の服を来てきているのだが、このエレガントな景色と全く合っていなかった。
時折通る貴族から白い目を向けられている。
対してアビーは貴族っぽい清楚なワンピースでつばのある帽子もおしゃれだ。
「庶民的な服を来てこいって言われたやん?」
「庶民的すぎるわよ。宮殿では浮まくりよ」
「あっ。殿下がきたで!」
リオニーとアビーが庭に咲くバラの影に隠る。不審者感丸出しだ。もし知らない人間が見れば衛兵を呼ばれる怪しさだ。
「誰から隠れているのですか?? 殿下には気づいてもらっていいのです。いえ気づいてもらわないといけないのですよ?」
エリザベスの後方の監視役である騎士ドミニクがリオニーとアビーの行動に眉を顰める。
「うちらは気づかれたらあかんねん。シャルロットはクラスメイトがいたら嫌がるやろ?」
「そういうことですか・・・。では私とも適度な距離をとってくださいね。不審者に見えますので」
「わかってるって!カイトとシャルロットの自然な様子を観察したいんや」
「すみません。ドミニクさん」
アビーはなんだか申し訳なさそうに謝る。
「あの・・周囲の危険を確認してもらいたいのですが・・・まあいいです」
ドミニクはため息をつく。
「なんや。ルークは様(さま)になってるやん。エリザベス殿下もルークとちょっとええ感じやで。カイトも楽しそうに殿下と話とるなあ」
アビー「シャルロットはカイトにしがみつきすぎよ!!」
リオニー「おっ!動いたで!!ルート通り庭園に入っていくみたいや」
殿下とカイトたちが話ながら庭園を進んでいくのが見えた。
ドミニク「さっ!我々もついていきますよ」
*********
「周辺を確認してください。花壇の影に襲撃者が隠れているかもしれないですからね。まあここは場内だからそんなことはありえませんが、予行演習です」
レイラがウインライトとマーガレットにそう伝えると、
「了解しました!!」
ウインライトが気合いの入った声で返答した。ウインライトは騎士団志望。もう団員になったつもりで動いているのだ。
「返事は小さくでお願いします・・・」
先行偵察と監視という役目ではこの返答は目立ちすぎるだろう。
レイラは少し呆れ気味だ。
「ウインは気合い入りすぎじゃない?レイラさんの前だから張り切っているんでしょ?」
「俺は近衛騎士団に入るんだ。今いいところを見せておかないとな!」
「はいはい。まあ、そういうところがウインの良い所なんだけどね」
「前から誰かくるぞ!」
先頭をいくレイラの前に人影が現れる。2名だ。
ウインライトは腰の剣に手を置き少し身構える。
レイラ「まって、副団長です」
歩いてきたのはマチルダ副団長とその部下だった。後ろで束ねた黒い髪に白い団員服がよく映える。
マチルダ「ご苦労。君たち、今日の殿下の護衛よろしく頼むぞ」
「はっ!!」
レイラは両手を後ろにする騎士団の敬礼スタイルを取る。
「はっ!!」
ウインライトも負けじと両手を後ろにして姿勢を正した。
「えっ。私もするの?」
マチルダも両手を後ろにした。
「楽にしていい。私は皇女殿下に挨拶に来たまでだ。通っていいかな?」
「どうぞお通りください、副団長」
レイラが両手を後ろにしたまま答える。
ウインライトやマーガレットの後方20-30mほどのところにエリザベス一行はいる。
マチルダはそのままエリザベスに向けて歩いていく。
********
「皇女殿下ご機嫌麗しゅう」
突然のマチルダが庭園に現れ、石畳の道で膝をつき首を垂れる。
「まあ、マチルダさん。わざわざ挨拶に来てくれたの?お久しぶりですね。頭をお上げください」
「殿下に事件の報告もしなければと思っておりましたが、なにぶん色々大変な事がありましたので」
マチルダは部下と共に立ち上がると、僕たちに一歩近づく。
ルーク「マチルダ副団長、お久しぶりです」
僕「先日はビアンカがお世話になりました」
「なんだよ?ビアンカちゃんをマチルダ副団長がどうお世話するんだ?」
「ビアンカと一緒に近衛騎士団城に遊びにいったんだよ。ビアンカがユニコーンに乗りたいっていうからマチルダさんに乗せてもらったんだ」
「ええ。俺もユニコーンに騎乗したいぞ!!今度頼めないかな?」
「ルークは馬も乗った事ないだろ??」
「2年になったら騎乗の授業取ろうとおもってる。貴族は馬くらい乗れないとな」
「騎士になるためには馬を所有している事と騎乗スキルは必須だしね」
「まだ寮暮らしだけど、家と馬を買うために金を貯めてるんだぞ」
俺とルークは二人で話が盛り上がる。
「殿下、歩きながら話をしても?」
マチルダが皇女殿下に手を出す。エスコートする合図だ。
「ルークが良いならね」
エリザベス殿下はチラッとルークの方を見ながらその手を取った。
「もちろん大丈夫だ。マチルダ副団長。俺・・私のことは気にせず殿下と話してください」
ルークもだんだんと立ち振る舞いがうまくなってきたような気がするね。
「それで、アインホルンの森の事件ですが、1年Bクラスのカミーユを捕らえて尋問していますが、まだ首謀者の情報は得られておりません。ですが、殿下の安全のため今日のように街を散策されるときは調査班の一小隊を動かしますのでご安心ください」
「そうですか。引き続きお願いいたします。ですが拷問はだめですよ。彼は無実の可能性もあると聞いています」
「その可能性は薄そうです。陛下の勅命を受けておりますので手を抜くことは出来ません」
「そうですか・・・。インストスで暴動があったと聞いたのですがそちらは大丈夫ですか?」
「インストスの暴動は鎮圧いたしました。これから復旧が大変です。しばらくインストスには2個連隊を常駐させますのでご心配されるようなことはないかと思います」
「本当に近衛騎士団には苦労をかけるわね。ですが皇国の平和を守ることは大事なことです頑張ってください」
「殿下からの励ましの言葉。ありがたく存じます。それでは私はここで」
マチルダ副団長は殿下と並んで少し話をすると敬礼してその場を去っていった。
「ルーク。寂しかった!?」
エリザベス殿下がルークの腕を取って体を密着させる。
えっ、殿下の胸がルークの腕に当たってる気がする・・なぜか僕がドキドキしてしまうのだが・・目のやり場にこまるなあ。
「もういいのか?」
ルークはちょっと照れ気味に応えた。
「マチルダさんも大変そうね。インストスの暴動の処理もあるみたいだし。そういえばインストスにはカイトも行ったとききましたよ?」
「マチルダ副団長に請われたので兄とウインライトと一緒に行きましたよ」
「暴動は街を牛耳る商会に憤った市民が起こしたって本当なのですか?」
「まあ概ねその認識で正しいですね」
「ふーん。大きな声ではいえませんが・・ルークからは魚人という化け物が現れたって聞きましたよ」
「えっと・そんなこと言ったっけ?」
ルークはとぼけたことを言っているが、まあ喋るだろうなあ。口止めなんて無理な話だし。
「僕からはなんとも・・近衛騎士団から聞いてくださいね」
「そう。それにしてもここの花々はいつも綺麗ね。そこのベンチに座りましょう」
石畳には10mほどの間隔を開けて二人掛けベンチがある。奥を殿下とルークが手前に僕とシャルロットが座ってしばしカップルで歓談タイムとなった。
殿下の護衛3人は当然殿下の方についていく。
「シャルロット。これで2人で話ができるね」
「カイト・・・先日の続きがしたい」
シャルロットが目を瞑ってカイトに顔を近づける・・・
*************
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