第136話 ダブルデート1
ダブルデートでリオニー達探偵団が監視に参加する事を騎士団に打診したところ、次の日にはOKが出た。
いいの?OK出しちゃって!皇女殿下の警護大丈夫なのだろうか?僕が心配になるよ。
どうやらマチルダ副団長の直属の部下として襲撃事件の調査を行っているファレル小隊長(学園調査隊長)がOKを出したらしい。
マチルダ副団長の意思も働いている可能性が高い。僕達がマチルダ副団長から信頼を得られていると言う事で良い方に考えよう。
探偵団の参加了承を聞いたリオニーが「よっしゃ!やったるで!」と大喜びしていたが、いったい何をやると言うのだろうか?
変な事はしないで欲しいなあ。
僕はちょっと複雑だけど、みんなやる気みたいだし、まっ!いいか。
デートコースは以下の通りになった。
皇城庭園見学→ロンドアダマス大聖堂→南門より城外へ→レストランにて昼食→カイト行きつけの魔法具店→川港→皇室所有の船にて遊覧→馬車にてコロシアムにて馬術競技観戦→ホテルレストランにて夕食→解散
デート前の夜に学園の事件調査支部として設けられた部屋で打ち合わせが行われた。
なんだか大袈裟な気がするが、これが護衛の通常の役目なんだとか。ご苦労様です。
実は探偵団にマーガレットが入団する事になった。
ウインライトが「ルークとカイトばっかりデートしてずるい」とマーガレットを誘ったそうな。どんな理由なんだ?
もしかしてウインライトはマーガレットの事が•••。
まあ、いいや。そうなるとクラスの半分が探偵団だよ。
マーガレットは魚人とか騎士団には全く興味は無いみたいだったけど、ウインライトに誘われたからなのか、僕たちの尾行ってのが刺さったからなのか、とても乗り気だ。
エリザベス殿下側付きの護衛3名は白銀の鎧を着て殿下の両脇と後ろを固める。
そして少し離れた場所の監視役は民に溶け込む普段着に剣だけをつけてエリザベス殿下に先行偵察する者と、後ろから見守る者に別れる。
周辺監視の騎士団員は各1名だが、探偵団員のウインライトとマーガレットは先行に付き添い、アビーとリオニーは後方となった。
ーーーーーーー
そしていよいよデート当日がやってきた。
僕とシャルロット、そして侍女のカトリーヌが馬車に乗り込み皇城に向かう。
「カイト•••。デートありがとう」
シャルロットは馬車に乗り込むや否や僕の腕にしがみついてくる。
「ああ、楽しみだねシャルロット。今日は皇女殿下とルークも一緒だからいつもは行けないところも行けるみたいだよ」
「うん。カイトがいればいいの」
「カイト様、ハレンチな行動はくれぐれもお控えください」
カトリーヌが僕の腕にしがみつくシャルロットをじっと見つめる。
表情はいつもの冷静なカトリーヌなんだけど、ちょっと気まずい。
「もちろんだよ。僕はドレイン家の家名を汚すわけにはいかないからね」
馬車が巨大なグローリオン像が建つ三叉路にやってくる。
いつみても巨大で迫力がある像だが、ポーズは第一の使徒アーノルドのパクリに見えて仕方がない。
「すごくおっきいの。カイト」
シャルロットが憧れの人を見るかのような目でグローリオン像を見ている。
「そうだね。皇国建国の父、グローリオン皇帝だそうだよ」
「うん知ってる。神に祝福された偉大な人なの」
「そうだね。グローリオン皇帝はまさに神に祝福された者だ。僕なんて足元にも及ばない人だよ」
「そんな事ないの。カイトは本当に神に祝福されてるの。グローリオン皇帝みたいになる人なの」
「ハハハッ。僕は何十万もの軍隊を動かして、自分の国を作ろうなんて思わないよ。でも違う意味で人々の役に立てたらいいね」
「フフフッ。カイトはグローリオン皇帝陛下を超える人なの」
「そ、そう?なんかプレッシャーだな。でもありがとう」
僕はシャルロットの頭を左手で撫でる。
「カイト様くれぐれも殿下の前ではハレンチな行為はお控えください」
ええ?!これはハレンチじゃないよね!?
ーーーーーーーー
馬車が皇城の前に到着する。
皇城の大きな門には兵士が10名ほど並んでいる。門の反対側には橋が掛かっていて、橋の先に近衛騎士団城が聳え立っている。
近衛騎士団城と皇城はこの橋で結ばれていると言えるだろう。
僕たちの馬車は橋の下を通る道から上がってきたことになる。
僕とシャルロットが馬車を降りて門の方へ近づくと、近衛騎士団の白銀の鎧を着た騎士が門の中から1人歩いて来きた。
よく見るとエリザベス殿下の護衛キャサリンだ。
「カイト様お待ちしておりました。殿下が城内でお待ちです」
「ありがとう。キャサリンもすっかり良くなってよかったよ」
「アインホルンの森ではカイト様に救われました。ありがとうございました」
キャサリンは人型の爬虫類に襲われて大怪我を負ったので再生魔法で命を救ったと言う経緯がある。
縁がある人が護衛にいてくれるとなんだがホッとするね。
「こっちが、今日一緒するシャルロットです。面識はあったかな?」
「シャルロットです。よろしくなの」
「シャルロットさんは水の授業でお見かけした事は何度も。今日は殿下の護衛としておそばにおります。よろしくお願いしますね」
僕たちは護衛のキャサリンに連れられて城の中に入っていく。
皇城は小高く広い丘にある城で、石垣の上には宮殿のような見事な建物が東西に長く四角く庭を囲むように建っている。
区画は二つに分かれていて、東側は皇帝や子息が暮らす建物や皇帝が謁見する謁見の間、重要官庁があり、中庭は庭園になっている。
対して、西側の建物群は同じく官庁も入っているが、元老院やそれに近い実際の実務を行う部署が揃うエリアとなり、ロンドアダマス大聖堂もこの西側の中庭に存在する。
そして、中庭の大部分はだだっ広い石畳で多くの人が集まる事ができるスペースになっている。出陣式とかここで行うのだろうか?
さて、僕たちが西の正門を潜ると、そこに貴族のような衣装のルークと黄金の美しい髪を靡かせ白い上品な洋服を着たエリザベス皇女殿下が白銀の護衛2名を従えて待っていた。
探偵団メンバーはそこには見当たらないが、離れて見ているのだろうか?
「エリザベス殿下ご機嫌麗しゅう」
僕が殿下に挨拶をする。
「フフッ。相変わらず堅苦しい挨拶をするのね。今日は一緒にデートするのだものエリザベスでいいわよ」
「いやいや。それはまずいので、では、殿下とだけ。こんにちわ殿下」
「こんにちわカイト。そして、シャルロットさんもこんにちわ。水の授業で顔は合わせてるけど話すのは初めてね」
「殿下。こんにちわなの」
「カイト!今日は普通の奴は入れない東宮殿の庭を散策できるぞ。早速行こう」
ルークが建物に囲まれただだっ広い石畳の広場を東に向けて歩き出す。
「ルークは庭園に行った事あるの?」
「俺は叙爵した時にな。謁見の間にも行ったが、すげえ立派だったぞ」
「ルークの謁見は完璧だったわよ。まるで一流貴族みたいだったわ。いえ、もう貴族よね。デュクラージュ卿」
エリザベス殿下がお茶目な笑みで言った。なんだが本当に相思相愛なんだなあと感じる。
「カイトも貴族なの。ドレイン家なの」
シャルロットが僕の腕を掴みながら何故かそんなことを言う。
張り合っているのかな?
「そういえば、カイトとシャルロットさんはお付き合いしているのかしら?」
「い、いえ仲の良い友達ですよ。ね。シャルロット」
「私はお付き合いしてもいいの•••」
「フフッ そう言う事ね。私が恋のキューピット(愛の神様)になれるかしら」
「シャルロットはカイトの事が好きなのか?」
ルークは躊躇なく攻めて来る。
「カイトは神の申し子なの。祝福されてるの」
「それって好きって事だよな?」
「カイトと私は•••結ばれるの」
チラッと僕の方を見るシャルロット。
「フフッ。カイトはどうするのかしら?」
エリザベス殿下が笑みを浮かべる。
「今日は友達としてシャルロットの事をもっと知りたいと思ってデートする事にしたんだよ。
シャルロットが良い子だったら僕もシャルロットもお互いが本当に好きになって結ばれるかもしれないし、でもまだまだ知らない事だらけだからね」
「シャルロットは良い子なの。カイトの理想の子になるの」
「シャルロットは健気だな。羨ましいぞカイト」
「シャルロットさんは可愛いですね。でもカイトは天才魔法使いだしライバル多いでしょう。シャルロットさん応援していますよ」
「ライバルなんていないですよ。もちろんシャルロットは可愛いと思います」
「じゃあ結ばれてもいいよね?」
シャルロットが俺の袖を引っ張る。
「まずは友達からだよ。シャルロットがどんな子なのか色々教えてほしいんだ」
「だってよ。シャルロット。秘密はダメだぞ。お互いを知る事から始めないとな」
ルークが良いまとめ方をしてくれた。
そうこうしているうちに、ロンドアダマス大聖堂を超えて、皇城の東側エリアに抜けるための門が現れる。
この門にも5名ほどの衛兵が立っているが、エリザベス殿下一行は顔パスで通り抜ける。
門を抜けた先、そこには見事な西洋風の庭園が広がっていた。
彩とりどりの花が咲き誇りとても美しい。
庭園には十字に大きな道があり、その道の東の先にはひときわ大きな宮殿が聳え立っている。皇帝陛下の暮らす宮殿だろう。
僕たちは美しい庭園の小道に足を進める。
ーーーーーーー
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