第128話 秘密の探偵団?

魔法学園は授業と授業の間に10分の休憩がある。いや、10分しかないのでできる事は少し友達とだべるかトイレに行く事くらいしかない。


「カイト、昨日マチルダ副団長とあったんだろ?カミーユの事は聞けたのか?」

「カイト、私にもどうだったのか教えてくれる?」


一限目の授業が終わって、ウィンライトとアビーが僕の席に詰め寄ってきた。

僕が近衛騎士団のマチルダ副団長と会うと言ってたから気になっていたらしい。


「カミーユの事は聞いてみたよ。でもあまり教えてくれなかった。

近衛騎士団は皇帝陛下の勅命で動いているとだけ言われたよ」


「なんだよ。卑怯じゃないかよ。皇帝陛下の勅命だって言われたら何も言えないじゃねえか」


ウインライトが声を荒げるのもわかる。昨日は僕も同じ気持ちになったからだ。


「カミーユは本当に皇女殿下襲撃者の仲間なの??」


アビーが直球で攻めてきた。そうだね。結局はアビーの一言に尽きるんだ。

カミーユは本当に犯人の仲間なのか?それが一番重要な事だ。


「僕にわかるわけないよ。でもその事で話がしたいんだ。昼食は公園のベンチで食べない?ちょっと食堂では言いづらいし」


「何か内緒話??」


「よしわかった!俺たちだけにしか話せない事があるんだな?」


「アビーとウインライトだけなん?

うちだけ仲間はずれなん?インストスに行った仲間やん」


それを聞いたリオニーが灰色の尻尾を立てながら不満げにやってくる。


「もちろんリオニーにも話を聞いて欲しいよ」


「しゃあないな〜。これで秘密の探偵団結成やな!」



探偵団って。

この世界に探偵なんてあるんかいな?



**********



昼食の時間になると僕たちは食堂でパンとチーズとハムを頼んで、4人で庭園のベンチで食べることにした。


その前に、

「シャルロット。今は4人だけで話がしたいんだ。シャルロットとは放課後2人で話がしたいんだけどいい?」


後ろにピッタリと着いてくるシャルロットに声をかける。


「カイト・・・。うん。わかったの。放課後2人きりで」


シャルロットはそういうと納得してくれたみたいだ。




「カイト、シャルロットと2人で何を話すんだ?」


「もちろんカミーユの事だよ。シャルロットに聞きたい事もあるし」


「シャルロットと2人きりなんて、近づき過ぎたらダメだからね」


あれ?アビーが僕の心配?焼いてくれてる?


「シャルロットも可愛いからなあ。でもカイトはうちの体狙ってるんやろ?うちは2人っきりでデートに誘ってくれへんのん?」


「冗談でもそれはダメ!」


アビーがリオニーの頬をつねる。


「イタタタタ!アビー冗談やって。冗談。」


なんだ冗談なの??

ちょっとドキドキしたんだけど。


「で、カイト!話ってなんだよ」


「うん。3人に来てもらったのは、皆んなはカミーユが犯人の一味だと思うか?って事だよ」


「カイトはカミーユが犯人だと思ってるのかよ!クラスメイトだぞ」


「カイトはどう思ってるの?」


アビーは逆に僕がどう思ってるのか気になるようだ。


「マチルダさんは、状況的にカミーユが食事に睡眠薬を入れて、寝静まった後に犯人を誘導したと言っているんだけど、

僕は、、カミーユかケンロック先生のどちらかが犯人だと思っている」


「ケンロック先生は殺されたのよ?そのケンロック先生を疑うの?」


「そうだぜ。それは酷くないか?」


「でも、犯人の仲間は2人の内どちらかしかないと思うんだ。

ケンロック先生が仲間だった可能性も無いとは言い切れない。最後に口封じのために殺されたのかもしれないよね?」


「でもケンロック先生ええ先生やったでぇ」


「ケンロック先生が良い先生だったとしても弱みを握られて、仕方がなくって事もあり得るよ」


「他の人間の可能性は無いのかよ?」


「じゃあ、犯人はアビーやマーガレットだとか言われたらどう思う?」


「私?やマーガレット?ありえないわ。食事の時に誰も殿下の所に行ってないもの。カミーユを除いては・・・」


「Aクラスの子達も同じように誰も殿下の鍋には近寄ってないって言ってるんだよ。カミーユは何故殿下の食事に参加したのかは聞いた?」


「カミーユは私たちには何も言わずにエリザベス殿下の所に行ったわ。

取り調べの時に聞いた話では、Bクラスの食事のエビルファングの肉がまずいからだって」


「エビルファングの肉は本当にまずいからな。その理由ならわかるぜ」


「でもあのカミーユが、エリザベス殿下とケンロック先生に積極的に話をしていたと言うのは、僕たちクラスメイトからすれば信じられない事じゃない?

3人ともカミーユとまともに話をした事ある?」


「無いわね。カミーユが積極的に話をしていたと言うのは信じられないわ」


「確かにな」


「それとカミーユは、と言うよりシャルロットもだけど、孤児院出身だったことを隠していた事も気になるんだよね」


「シャルロットは犯人ちゃうからね!!孤児って思われたら嫌やったんちゃうか?だから隠していただけちゃうん?

うちも学園に来た当初は平民やのにこんな所に来て良いいんか?って思ったもん」


最近シャルロットと少し仲良しなリオニーがシャルロットを庇おうと声を上げる。


「まあそうかもしれないけど、その孤児院が僕の家の領地だってのが引っかかるんだよね」


「もしかして、カイトのお父ちゃんが犯人とかなん!?!?」


「ハハハッ それは無いと思うけどね。

どちらにしろ、カミーユが捕まったのにはそれなりに理由があると言う事だよ。

それで、カミーユの事を1番知っているのはシャルロットだと思うんだ。だから今日は僕が突き詰めて聞いてみようと思って」


「そう言うことかいな。逢引きとちゃうんやな」


「シャルロットにカミーユは犯人か?って聞くのか?

いつも通り”違う”とか、”知らない”って言うだけじゃないのか?」


ウインライトの予想はごもっともだ。そんな事はみんなシャルロットに聞いているし近衛騎士団ももちろん尋ねただろう。


「まあそうなんだけどね。今日はそこをさらに踏み込んで話したいなと思って」


「まあ、でもカイトに任せるで。

シャルロットはカイトに懐いてるしな。聞き出せるんはカイトしかおらへんと思うわ〜」


リオニーはわかってくれたらしい。


「カイト、シャルロットに手を出したらダメだからね?」


手は出さないよ。

アビーの茶色い瞳が何故か少し鋭く輝いているように感じた。



***************

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