第126話 近衛騎士団城訪問
今日は朝からマチルダ副団長の所へメルシュ家で発見したルーベッドの日記を届けに行くことになっている。
今回はビアンカも一緒だ。マチルダ副団長にはその事は伝えていないけどまあ大丈夫だろう。
ビアンカにユニコーンを見せてもらえるだろうか?
それは心配しているけど、断られても僕はマチルダさんを口説く方法を知っているのだ。
フフフッ
近衛騎士団の居留地は皇城の西の端にあり、皇帝陛下が居する建物群とは別の丘にあるため、別名近衛騎士団城とか騎士団城と呼ばれている。
城の敷地は広大で、集団で馬上訓練が出来るほど広い。
チャーターした馬車でその近衛騎士団城の門を潜ると城郭の切れ目から多くの騎士達が駿馬に跨って広い敷地を走りまわっているのが見えた。
「カイト!騎士様がたくさんいるよ!!」
「そうだね。ここは近衛騎士団のお城だからね」
「すごいかっこいい!!このえ騎士団って皇都を守ってる騎士様だよね」
「そうだよ。よく知ってるね。偉いぞビアンカ」
「このえ騎士団の騎士様との恋のお話を読んだの。このえ騎士団かっこいい!」
「そんなお話あるんだね・・。今日は近衛騎士団の偉い人と会うから大人しくしてるんだよ」
「ユニコーンは?」
「ユニコーンも見せてもらおうね」
「やったね!!カイト偉いぞ!」
ビアンカにお褒めの言葉をいただいた。連れてきてよかったよ。
*****
騎士の一人に案内され城内の一室にやってくると、すでにマチルダ副団長がお待ちですとすぐ通された。
「カイト-ドレイン様が到着されました」
「入ってもらってくれ」
応接の間のような場所の中央には椅子とテーブルがあり、黒髪を後ろで束ねた30代後半の女性=マチルダ副団長とその両隣に2人の騎士と思われる人が座っていた。
「マチルダ副団長、こんにちは」
「カイト君。わざわざ城にまで足を運んでくれて悪いね。インストスでは君たちに助けられた。お礼をしたいところなのだが公式には難しくてな」
「お役に立てたなら良かったです」
「ところで隣の女の子はどなたかな?」
マチルダは不思議そうな顔をしてビアンカの事を尋ねる。
「ビアンカ。挨拶して」
「ビアンカです。えっと。魔法学園の児童院にいます。よろしくお願いします!」
「魔法学園の児童院?魔法が使えるのかね!?」
「そうですね。ビアンカは火と水魔法が使えます。将来有望でしょう?」
「その歳でもう魔法の才能がわかったのか。しかも2つ持ち。英才教育をすれば一流の魔法使いに。フフフッ」
「近衛騎士団には入れませんよ!」
「いや、魔法学園を卒業するまでは近衛騎士団は手を付けられないからな。今から来いとは言えないが、たまに連れてきてくれたら私が手ほどきしてやっても良いぞ!」
「副団長。今はそんな余裕ありませんよ」
マチルダの隣に腰をかける男性がマチルダ副団長に苦言を呈した。
「ま、まあそうだな。今はインストスの事後処理に皇女殿下拉致事件の調査と手がいっぱいだ。だから落ち着いたらまた連れて来てくれるかい?唾をつけるのは早い方が良い」
「ははは・・・唾はつけないでくださいね。それで、インストスはその後どうですか?」
「何も変わっちゃいないが、魚人どもがまたいつ襲ってくるかわからんからな。そのための備えはしなければならない。大変だよ全く」
「魚人や悪魔崇拝の情報が入れば僕たちにも共有してください。お力になれると思いますので」
「パオロとの関係だね?もちろん君達の事は信用しているからね。その時は頼むよ」
僕はその言葉に頷きつつカバンを手に取り中を探り出す。
「これが、ルーベッドの日記になります。中頃のページにダゴンとの契約の話が書かれています」
そう言って僕は分厚い日記をカバンから取り出しマチルダの前へ差し出すと、マチルダは日記を手に取りペラペラとページをめくり始めた。
「ここか」
そう呟きしばらく日記を眺めるマチルダだったが、気になる事があるようで、再び僕の顔に視線を移す。
「ダゴンは頭の中に直接話かけてくるとあるな。君達もダゴンから同じように言葉を聞いたのだね」
「そうです。神に逆らう皇国を滅ぼすと伝えられました」
「この日記によればダゴンは非常に賢い。いや我等人間など虫ケラのように感じるように書かれている。ダゴンの言う大いなる神と我等の崇める真聖教の神は同じなのかね?」
「同じかも知れませんし、違うのかも知れません。ただ、僕の考えでは違う神だと思います」
「理由はなんだい?」
「理由は旧教です。旧教の内容はご存知ですか?」
「学園で習ったから少しはな」
「学園で習うのですね。僕はまだ一年生なので教わっていませんでしたが、旧教の創世神話では大いなる神が数多くの
その中にク・リトルリトルという
「クトゥルフ!!」
「マチルダ副団長はクトゥルフ神を知っているのですか!?」
「君達が連れてきた、魚人の娘がいるだろう?彼女がクトゥルフ神の話をしていたのだよ!」
「本当ですか。クトゥルフ神がなんと言っていました!?」
「スコット。調書を」
スコットと呼ばれた右隣の男性は本を取り出して、ページをめくりマチルダに差し出す。
「クトゥルフ神は深淵のイエルルで待っていると言っていたようだ。その後はよくわからない呪文を唱えだしてな。
今も時折り呪文を唱えているらしい」
「深淵のイエルル!!」
「イエルルとはなんだ?知っているのか?」
「ダゴンが伝えて来た言葉にイエルルと言うものがありました。正確には『主とイエルルがこの大地に戻る時』に皇国を滅ぼすとダゴンは言いました」
「主とは邪教の神の事か?」
「恐らくはクトゥルフ神の事かと思います。イエルルが何かはわかりませんが、旧教での大いなる神はク・リトルリトルを大地と共に海に沈めて封印したと書かれています。
イエルルはその大地を表しているのかもしれません」
「神話は本当だというのか?クトゥルフ神は何を待っている?その封印が解けた時は何が起こる?」
「僕の知識では全くわかりません。ゲイル兄様なら何か知っているかもしれませんが」
「今は方伯がこの皇都にいるので、ゲイル君に接触しにくい。君から聞いておいてくれないか?」
「もちろんゲイル兄様にも聞いてみます。
それと、エリザベス皇女殿下の拉致事件の事なのですが」
「カミーユの事かね?」
「そうです。クラスメイトのカミーユが近衛騎士団に捕まったとお聞きしました。どう言う事でしょう?彼が実行犯だと言う証拠が見つかったのでしょうか?」
「カイトー。まだー?つまんない」
「・・・・・」
横に座っているビアンカが僕の袖を引っ張って駄々をこね始めた。
ビアンカが好きな話じゃなかったね。
「ちょっとだけ我慢しててね。すぐユニコーンを見に行くから」
「うん。じゃあ我慢する」
「ビアンカと言ったかな?そういえば今日はどうして連れて来たのかね?」
「いえ、社会勉強の一環ですよ。それとユニコーンが見たいというので」
「ユニコーン見せてくれるってカイトが約束してくれた」
「ああ、ジローを見たいのか?」
「ジロー??日本人名じゃん!」
「ん??何かへんか?」
「いえ、変わった名前だなあと」
「そうかい?可愛い名前だと思うがな。それじゃあ今からジローに乗せてやろう。カミーユの事は食事の時に話をしよう」
「やったー!!マチルダお姉ちゃんありがとう!」
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