第90話 お出かけ
夏休みも半ばを過ぎた。今日はビアンカを連れて皇立大劇場で演劇を見る事になっている。
今回は前の反省を生かしてカトリーヌに頼んで6人掛けの馬車を呼んでもらった。
なんたってこの国No1の大貴族の呼び声高いドレイン方伯の息子なので仕送りはたんまりあるし、皇国から生活費名目での支給もある。これくらい屁でもないのだ。
とはいえ先日、水の魔法具を2本とビアンカにも青い宝石のネックレスをプレゼントしたので結構減ってしまった。
次、魔法具買うのは来年だろうなぁ。
アビーとウインライトとはマーガレットの店で待ち合わすことにして、僕たち・・ビアンカ、カトリーヌ、リオニー、シャルロットの5人は馬車で移動中だ。
「お出かけ お出かけ 楽しいな 馬車で お出かけ 楽しいな♪」
ビアンカが馬車の中で歌を唄っている。
何処かで聞いたことがあると思ったら、北原白秋作詞の「あめふり」のようなリズムの歌だった。
「おー!!ビアンカもその曲教わったんやね。「おでかけ」は名曲やなあ。」
馬車に一緒に乗り込んでいるリオニーもこの曲を知っているようだ。
「ガタガタ ゴトゴト らんらんらん♪」
リオニーとビアンカがハモり始めた。
いや、これまんまパクってないか???
「それは教えてもらったのか?」
「そうだよ。歌の時間にみんなで歌ってるんだよ」
「ほかにビアンカはどんな事教えてもらってるんだい?」
「本を読む時間と・・文字を書く時間」
「読み書きも教えてもらってるんだね」
「ビアンカはもう読むのは得意だよ。今は「ケイヌロンの叙事詩」を読んでる」
おい!!難しい本読んでるな。知らない本だけど・・。
「へええ。有名なケイヌロンの物語やんな。昔お祖父さんに聞かされたことがあるで。演劇の題目にもなってるはずや」
「私も知ってるの・・・」
ガーン。シャルロットも知っているのか。僕だけ知らないけど、超有名なんだろうな・・。
「カイト様は無教養ですので知らなくても仕方がありませんが、とても有名な叙事詩です。」
相変わらずのカトリーヌ節だ。
「ビアンカ。どんな話か教えてくれるかい?」
「いいよ。ほんとうに面白いんだよ。
えーと。ある国にケイヌロンって王子がいたの。北に旅をしていたら
なんかリアルだな・・。
「でも王子はまだ広い世界を見たいって言って、ドワーフ国に旅立つの。」
恋人と子供は置いていったのかな???
「ドワーフ国でも狼人族の襲撃からドワーフを守って戦ったら宝剣を貰えたの。その宝剣を携えて海辺にいくと今度は
子供はそうやってできるんだね・・・。
って、ヒュドラって言った?
図書館で読んだ「メルアギティ島の信仰」でも出てきたね・・。
「王子は
子供はどうしたの????
「でね、今、ケイヌロン王子がエルフの国の王女と結ばれるかどうか?ってところ。ワクワクドキドキでしょ?
もう少しで読み終わるよ。」
おませな本だなあ・・・。
「そっか。結ばれるといいね・・」
「シャルロットも結ばれていい・・」
「フフフッ かっこいい王子様が大活躍する大好きな本だよ!」
またビアンカが少し大人に見えた。
********
さて、マーガレットの店につくと、アビー、ウインライトが既に来ていて出迎えてくれた。
「カイト!昨日ぶりだね。」
「おいおい。2人は昨日も会ってたのかよ??」
ウインライトがちょっと砕けた笑みを見せる。
「昨日は2人で学園の図書館に行って魚人について調べてたんだよ」
「ああ。そう言うことか。あの気持ち悪い魚人のことなんて俺は忘れたいくらいだけどな。
で、なにかわかったか?」
ウインライトも結構興味ありそうな顔をしている。
「いや、まあ少しだけ。」
「お待たせ〜〜。ビアンカちゃんようこそ。今日もすっごくかわいいぞ!お姉さんと仲良く観劇しようね。」
マーガレットは出てくるなりビアンカを独り占めしようとする。ビアンカは僕とカトリーヌの間に座る予定なのだが・・。
「その前に、この近くにあるランチが安くて美味しい店を予約しているから。いきましょ。」
*****
昼食の時に、先ほどの魚人の話をみんなとした。
どうやらビュドラはケイヌロンの叙事詩に出てくるのでこの国ではとても有名な海の悪魔だそうだ。
実は真聖教の聖書によっては呼び名は違うが同じような海の悪魔の逸話はあるらしい。
元の世界ではギシリャ神話にでてくる多数の頭を持つ怪物だったけど、こちらでもそんな感じかな?? ヘラクレスと違ってケイヌロンは眷属は倒したけどヒュドラを倒してはいないらしい。
で、そのヒュドラの眷属とやらは手足のある魚の怪物だそうだ。
それって魚人では?「深きもの」では?
ヒュドラの眷属・・・。海の神の下僕・・・。今度またケイヌロン叙事詩も読む必要が出てきたね。
真聖教では悪魔でも、メルアギティの海の信仰から見ると神・・。ってこともあるかもね。そういえば元の世界でもキリスト教では悪魔だけど・・って話は色々あった気がする。
神とは?悪魔とは・・・。うーむ。パオロが呼び出す悪魔とはいったい・・。
昼食を食べた後、マーガレットの店でお召し替えをして皇立大劇場で演劇「聖ビルクスの奇跡」をみることになっている。
演目が「ケイヌロンの叙事詩」でなくて少しホッとした。子供の教育に悪そうだもん。
皇都は真聖教の総本山なので「聖ビルクスの奇跡」は妥当な演目だわね。
**************
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます