第84話 海水浴1
今日は待ちに待った海水浴の日だ!
僕たちは朝食を食べた後、打ち合わせ通りマーガレットの店に集合している。
皆、マーガレットの店の試着室で出来立てホヤホヤの水着を下に着込んで海にいくのだ。
僕は既に寮から海パンにシャツという格好だけど、日焼けが気になってツバの長い麦藁帽子も被ってみたのだが、どうもしっくりこない。
だから麦藁帽子はカトリーヌにつけてもらう事にしたけど、
「カイト!短パンありがとな!」
店から出てきたウインライトは僕と同じく短パン状の水着にシャツ1枚という、この世界ではあり得ない格好をしている。
しかし、僕と同じ格好なのにウインライトはカッコいい。短パンから生える銀の尻尾がまたよく似合う。
「いっちょ行きますか!」
ウインライトにニヒル笑みを浮かべて声をかけられると、思わずついて行きたくなってしまった。
(
日焼けした肌もあってか、彼は今にも湘南の海で女の子をナンパしてキャッキャウハウハしそうな雰囲気がある。もし日本で生まれてたら大学生の頃にはショウナンボーイになっていたはずだ。
知らんけど。
「もう準備万端やで〜!」
真っ先に試着室から出てきたのはリオニーだった。ブラウスから少し赤い水着の色が透けていて、とても(エロっちっくなところが)いい感じだ。
マーガレット「海楽しみだね。水着もバッチリだったよ」
アビー「カイトおまたせ!」
ビアンカ「カイト〜〜!きてきたよ〜〜」
ちなみにビアンカにはカトリーヌが作ったワンピースタイプを着せているが、透けてはいない。
「カイト様お待たせいたしました。」
ビアンカの着付けを終えたカトリーヌが最後のようだ。麦藁帽子が黒髪とマッチして素晴らしい。
「これで8人。揃ったな!! ビアンカちゃんだっけ?今日はよろしくな!」
ウインライトは普通のセリフもかっけーのだ。
銀の髪と尾の
「みんな準備はできたかい? じゃあ出発しよう!」
全員が着込み終わったところで僕たちは用意した2台の馬車に乗り込んで一路海岸を目指す。
僕の乗る馬車にはビアンカ、カトリーヌ、リオニーが乗ることになった。
もう一台は、アビー、マーガレット、シャルロット、ウインライトとなり総勢8名の大所帯だ。
馬車に乗って大通りに入ると少しして左手の建物の間からロンドアダマスの皇城が姿を現す。いつみても皇城は大きくて美しい。城というか宮殿のようだ。
皇城の中に建つ大聖堂がちょうど南側に来るところで道は三叉路となり、大きく二つに別れている。
一つはロードライズ川を渡り、南のバーリントンに向かう道、もう一つは北に向かう道だ。
その別れ道の正面中央には両手に杖を持ち、左手の杖を上に突き出した巨大な石像が聳え立っている。20mはあるのではないだろうか? よくもまあこんな大きな石像を造ったものだ。
真聖教の教会でも同じような構図の壁画が祭壇前に描かれている。そう、第一の使徒と呼ばれる英雄アーノルドの壁画である。
アーノルドは真聖教の信仰対象なのでこの国の人で知らない人はいない知名度No1の人物なのだが、しかし、この巨大な像には
こんなパクリが許されるのであろうか??
許されるのである。
皇国を造ったグローリオン皇帝は同時に真聖教の法王を最初に名乗った人物なのだから許されないはずがない。
過去の伝説的な英雄と自分を重ね合わせるなんて、やり方が上手いね。
「はあ。えらいもん建てましたなあ」
「うわああ〜すごい。カイト!でっかい人がいるよ!!!」
リオニーとビアンカは初めて見たのだろう。こっちの方(西側)に来る機会はあまりないしね。
「でっかい人がいるねえ」
「この人は人間族だから英雄アーノルドとは違うよね?カイトはこの人の事しってるの?」
ビアンカが像を見て感じた疑問を口にする。
「グローリオンさんだよ」
「グローリオンさんってあのグローリオンさん!?」
「グローリオンってこの国の名前やん。ってことは皇国の父って人やん!」
「皇国の父なんて呼び方は知らなかったけど、建国した人だね」
「グローリオンさんバイバイ〜〜。」
ビアンカが巨大な像に手を振る。外では言わないでね。不敬にあたるかもよ!
馬車はしばらくするとロードライズ川に並行して走る道に分岐して一路西の港街インストスを目指す。
インストスに続く道に入るとすぐに道幅が狭くなるが、石畳で舗装されており馬車は走りやすそうに快走している。このまま舗装路が続くからインストスまで4時間ほどでつけるのだろう。
街の途中で昔の城壁のようなところを何度か通ったが、結局完全に街を囲む城壁はロンドアダマスにはないのかも知れない。
皇国建国以来この巨大都市に攻め込む力を持つ外敵がいなかった事もあり、拡張に拡張を重ね街が肥大化する内に城壁を作り替えるのを諦めたのだろう。
次第に建物が少なくなり、やがて一面麦畑や豚や山羊の放牧地が広がるようになる。
「のどかだねえ」
「麦の穂が綺麗なあ。」
「おでかけ、おでかけ楽しいな♪」
ビアンカはおでかけの歌を歌い出した。
どこかで聞いたことがある歌なんだけど・・。
**********
ちょうど太陽が頂点に達する頃にインストスの街に到着した。
インストスの街はそこまで大きな町ではないが、ロンドアダマスが近い港町としてそれなりに賑わっている。
ルーベッド・メルシュという商会が手広く商いをしていてこの街のドン的存在なんだとか。
僕をリブストンまで送り届けてくれたアルフレッドさんも自分の街ではそんな感じだったんだろうか?
この街の建物は白と灰色の石造り壁が多いのが特徴で、強い日差しの中で白と灰色が混じった壁が輝きロンドアダマスとはまた違った雰囲気を作りだしている。
海の近くに来たからには、海鮮丼が食べたくなるが、この世界にそんなものはない。
とりあえず今日泊まる宿の下がレストランになっているので、そこで食事をしてから海水浴場、否、この世界には海水浴場なるものは存在しない。単なる砂浜に向かうことにした。
食事をとった後、街から10分ほどの所で馬車が止まった。牧草地が広がるその場所から5分歩けば砂浜に着くと言うことだ。
カトリーヌが先に降りて馬車から荷物を下ろし始める。
炎天下の中、僕は天幕になる布と棒を背負い歩くと、すぐに汗だくになって額から汗が滴り落ちてくる。
「暑い〜〜〜。重い〜〜。」
「カイト。すっごい荷物ね。何背負ってるのよ?」
アビーが僕に怪訝な顔を向ける。
「夏休み補完計画の資材だよ。ちゃんと補完しないとね。」
「よくわからないわね。何か持っても良いわよ?」
「アビー様、大丈夫です。カイト様のご趣味の品には触らない方が良いかと思います。」
「そ、そうね。頑張ってねカイト。」
しばらく汗を滴らせて歩くと眼前には川と言うには大きすぎる水辺が現れた。もうこれは海だった。
対岸には白と緑の陸地が見えるがかなり遠い。
水辺から視線を手前にすると太陽に照らされた白と灰色が混じる砂の大地がギラギラと輝き、そこに立つ人を蜃気楼のように歪めてる。
真っ白ではないが憧れの砂浜がそこに広がっていた。
「とうとうきたどー!!」
僕は砂浜を見て嬉しくなり何故か大声で叫ぶと重い荷物を捨てて、砂浜に走り出す。
「とうとうきたどー!!」
やまびこのような可愛い声がするとビアンカが後ろから走って追いかけてきた。
「うちが一番乗りやでえ!!」
闘争本能を掻き立てられたのか、リオニーも尻尾を振って走り出す。
3人で砂浜を駆ける姿は子供のようだっただろう。
いや、砂浜にはすでに何人もの子供が海遊びを楽しんでいたのだが、その子供たちは僕たちが叫びながら走ってくるのがよほど怖かったのか、怯えた様子で逃げていったのだが•••テンションMAXの僕達はそんな事全くお構いなしだ。
「あいつこんな重い荷物置いていきやがって・・・それにしても凄い景色だなあ。」
「カイト様がご迷惑をおかけして申し訳ありません。カイト様の荷物は私が・・」
「いいや、こんな美人に重い荷物はもたせられないな。俺が持つよ」
「美人だなんて・・。いえ、私が・・」
「いや俺が・・」
「何やってるのよ二人で持ったらいいじゃない。私も持つわ」
*****
「カイト!!このクソ重い荷物どこに置いたらいいよ?!」
「あっ 持ってきてくれたんだ。流石はウインライト。そこでいいよ!」
「さて、浮かれすぎてしまったけど、今から日除の天幕を貼るよ。
天幕の下で休んでも良いし、荷物を置く場所にもちょうど良いからね。」
「この、木の棒とロープと大きな杭はそのためのもんか?」
「そうそう。ちょっと低いけど木を2本砂の上にたてて・・・」
そういって、持ってきた2mほどの木の棒2本と布と杭でちょっとした現代日本で流通しているタープのようなものを張った。
「さあみんなで泳ぎに行こうよ!!みんな服を脱いで!!」
「ヤッホー!!!」
僕とウインライトは元々海パンを履いているのでシャツを脱ぐだけだ。
「カイト様、本当にその格好で泳ぐのですね」
そういうカトリーヌはすでに上を脱いで茶色の水着姿になっていた。
水着と麦わら帽子の相性もバッチリだ。
いつもはどんな時でも冷静なカトリーヌだが、少し胸の辺りを手で隠しているのがなんだか新鮮な発見をした気持ちになる。
「カトリーヌ似合うよ。」
「そ、そうですか??」
「手を下ろしてみて??」
「カイト様、なんだか目がイヤラシイ気がするのですが・・」
「いや??」
「ご命令なら・・」
カトリーヌが胸を隠すようにしていた手を下ろす。
胸の辺りにだけある水着だが、それが胸を持ち上げていて膨らむところが綺麗に膨らんでいる。
「き、綺麗だよ」
「こら!カイト!自分の侍女になんて言葉をかけているの!」
アビーが怒った顔でやってきた。
その姿ももちろん水着だ。
アビーは黄色い水着姿だ。まだ15歳なのにカトリーヌに負けないくらいプロポーションが良い!
C??いや、Dカップくらいだろうか。
それにしても胸を隠す目的の水着なのに、水着を補強するための紐が胸を挟む形で締められていて・・・とてもSMチックではないか・・・。
これは・・・・
大成功だ!!!!!
強調されている胸に視線が釘付けになってしまい、もう離れられない・・・。
「カイト様、目が変質者になっておりますよ」
「なってないなってない!」
思いっきり釘付けになっていたのだが、その声で我に帰った。
「ど、どう??」
アビーが赤い顔をしながら僕を見つめる。
「い、いい••」
「なによそれ!侍女に言ったセリフが言えないのかしら?」
「あっ・・。 はははっ アビーもとっても綺麗だよ!」
視線だけでなく脳まで釘付けになっていてうまく思考できなくなっているが、いやあ、良いものは良いのである。
「カイト・・私は??」
シャルロットの水着は白に水色のラインが入っている。小さな胸だが、やはり紐の効果で強調されていて良い感じだ。背も低いのでなんだか清楚な美少女が水着になった感じがする。
これはこれで可愛い。
「・・・・いい」
「カイト様、幼女を狙う危ない変質者の目になっております!」
「ああ、ごめん。とっても似合ってて驚いたよ。可愛いよ!」
「やった・・」
そう言って腕を掴んでくるシャルロット。ちょっとアビーの視線が気になった僕だが、アビーの視線はすでに海に注がれていた。
「こんな景色初めてみるわ」
「うおおお!!夏休みは最高だなあ!!」
「そうね!夏休みは最高ね!!」
後ろでウインライトとマーガレットが騒いでいる。
「じゃ、泳ぎに行こうか!」
「およくゼェ〜」
「おお〜〜〜〜!」
***************
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