魔法学園1年生夏休み編

第80話 夏休み補完計画

4日間でとりあえず事情聴取も済み、近衛騎士団も一部を残して引き上げることとなった。


今後も調査出張所を設けて昼は5人ほど駐在して調査を続けるとのこと。エリザベス殿下が登下校時の警護の役目もあるらしい。


マチルダ副団長から、調査出張所の担当官としてメルヴィン-サイクス中隊長を紹介された。

「メルヴィンは優秀だからなんでも相談しなさい」とのこと。

なにか情報が手に入ったら彼に言えばいいと言うことだろう。


でもシャルロットから情報を聞き出して欲しいとお願いされている件には僕は消極的だ。

シャルロットが自主的に話さない限り、彼女を利用して聞き出そうなんてことは思っていない。



**********



さあやっと夏休みがやってきた!!


この夏休みは15日間。その間に4つの事はやりたいと思っている。


一つは図書館を利用しまくること。図書館は9:00-16:00が開館時間なのだが・・授業があるので利用しにくい。

学園が休みの日も利用できるので、利用する人は休みの日に利用すればいいのだが、僕はこれまではほとんど利用していなかった。

だから夏休みはいっぱい利用するのだ。


二つ目は魔法具店に行ってみたいと言うこと。

皇都には3つの魔法具店があるらしいのだが、ロビン先生がお薦めしてくれた魔法具店に行ってみようと考えている。僕の予算は50,000セルだ。

ドレイン家からの仕送りと魔法学園から支給されるお金があるのでそのくらいなら出しても良いかと思っている。

ちなみに魔法学園ではお金の預かりをしてもらえるので、そこから引き出すんだよ。


3つ目はビアンカとアビー達を連れて演劇の観覧だ。前にマーガレットの店でビアンカのドレスを作ったからね。そのドレスを着て観劇するんだ。


4つ目は海水浴だ!夏なのに海水浴ができないのは寂しいとカトリーヌに色々と調べてもらっていたら、ロードライズ川の河口付近に砂浜があって泳げるということが判明した。


ラノベでゲイルがヨハンナとアリーチェをつれて海水浴をしていたから海水浴ができるところがあるとは思っていたんだよね。ラノベでは水着は着ていなかったようなので水浴び程度だったが、2人のブラウスが透けてエロチックに描かれてたのだ。


カトリーヌは馬車まで借りて探しに行ってくれたんだって。その時は砂浜で何人もの子供達が海水浴しているのが見られたらしい。

やるなカトリーヌ。今度なにかしてあげないといけないな。


***


と言うことで、休日1日目の今日は参加者を集めて夏休みの作戦会議を行うために先日の事件の取調室になっていた会議室を借りている。


「さて全員揃ったかな? じゃあ僕たちの夏休み補完計画を始めよう!」

言い出しっぺの僕がもちろん夏休み補完計画のリーダーだ。


「補完?」

マーガレットからツッコミがはいった。


「失われた夏休みを補完する計画だよ」

「・・。そういうことか。そうだね補完しなくっちゃ」

納得してくれたらようで良かった。TVアニメの有名な計画からパクったと言っても君たちにはわからないだろうからね。


「まずは、演劇を見に行こうと思っているんだけど、カトリーヌから報告よろしく!」


「はい。皇立大劇場では現在、「聖ビルクスの奇跡」という演目が、昼と夜に一度ずつ公演されております。

今1番の人気女優であるローズ-テイラーが出演している大人気の演目でして。10日後8月3日の昼の公演を一応8名で抑えております。つきましては人数を確認したく思います。」


「じゃあ8月3日にはマーガレットの仕立て屋さんに昼前にあつまって、レストランで食事してから観劇にいこうよ。では参加する人!!」


「もちろん」「いくでえ!」「はい!」「やっほー!」「いくの・・」

色々な返事があったがここに集まった全員参加するらしい。実家に帰る必要はないのだろうか?アビーに実家に帰られるといやだけど。


参加者はアビー、マーガレット、リオニー、シャルロット、ウインライトとなった。もちろんビアンカとカトリーヌ、僕も行くので総勢8名の大所帯だ。


「じゃあ、寮の人は寮で集合ね。その他はマーガレットの仕立て屋さんで。ドレスの着替えが必要な方はそこでね。

カトリーヌは馬車を用意しておいてくれる?」


「わかった」「OK!」「かしこまりました。」



「じゃあ2つ目の夏休み保管計画!水着大作戦!」


「海に泳ぎに行くことの計画?」アビー

「おおおお!!沸るぜぇ!」ウインライト


「場所は、ここから4時間ほど馬車で西に行ったところにあるインストスという街の近くの浜辺だよ。実際は三角州に面した河口なんだけどね。海水と川の水が混じりあった半分海みたいな場所なんだと思う。」


「三角州??カイトは変な言葉しってるわよね。」


「フフフッ 僕はドレイン家次男だからね色々しってるのだ。海に川から土砂が運ばれて堆積したところだよ。」


「ふーん。」


「そうそう、その日はインストスの街に一泊することになるからね。泊まれない人は参加できないぞ。」


「皆んなもう大人なんだし、大丈夫よ。ねぇ?」


「そんなことより、水着!!新しい服の事よね。私のところでつくるよ!」

マーガレットが三角州を吹き飛ばすように話題を変えてくれる。


「そう。所詮、海は飾りだよ。水着がなければ始まらないからね。

カトリーヌ!自分の水着持ってきた?」


「はいカイト様、こちらに。」


カトリーヌが木箱から青い生地の服を取り出し掲げる。


カトリーヌが取り出したそれは青と水色の糸が使われた絹のような滑らかな生地でできていて光沢があり、手触りが非常に良さそうだ。

そしてその水着と呼ばれる服には肩から袖がなく、太ももより先の部分もない。ワンピースタイプの競泳用水着に近い形をしていた。


「おおおおお!」

ウインライトがうなり声を上げる。


「これが水着!?」「袖もボトムパンツもないやん!?」「これ下着じゃないの?!」

女性陣からは少し動揺の声が上がる。


アビーは少し怪訝な顔をしているし、すぐにフォローしないと水着計画が白紙になってしまう。


「みんなは泳いだことがあるかな? 水の中では服は行動の妨げになるんだ。

服のせいで溺れて亡くなるなんてよくあることなんだよ。

だから漁師さんは裸で潜るんだ。 

僕はみんなに裸で泳いでもらってもいいんだけど・・」


「皆様、大変申し訳ございません。カイト様は変態でございます。もしこの気持ち悪い発言を聞きたくない場合は無理に参加していただく必要はございません。」


カトリーヌが少し焦った顔をしている。カトリーヌはいつも冷静だけにこう言うところはちょっとかわいいね。変態は余計だけど・・。


「ドレイン家ですからね。」


「でもカイトの言う通りやで。うちは漁港がある街の宿屋の娘やけど、漁師はみんな裸で潜っとったわ。うちもちっちゃい時はよく裸で潜ってたんやで〜」


リオニーナイスフォロー!!!!説得力あるなあ。


「そう。僕はみんなに裸で泳いで欲しいわけじゃない(欲しいけど)だから、水の中でも動きを妨げない「水着」を作ろうとおもったんだ」


「そう考えると、カイトはやっぱ天才やなあ。「水着」ええやん。これでうちも気兼ねなく泳げるわ」


「そ、そう?? じゃあ私もつくるわ」


「そんなこと言われると、この新しい服を作るの楽しみになってきた。私の店で全員分つくるから今から採寸に来てよ。」


「ちょっとまって、試作はもう一つあるんだ。カトリーヌもう一つのもよろしく」


そう言われてカトリーヌは今持つ水着をテーブルの上に置くと、木箱からもう一枚の生地を取り出し、全員に見えるように掲げる。

その水着は服として見る事はできなかった。一見シルクの布に紐が付いているだけだったのだから。


「なにこれ?」

女性陣にまた動揺が走る。


「カトリーヌ、今の服の上からでいいから着用してみて。ああ、後ろの紐は締めなくていいよ」


「はい・・。」

カトリーヌが筒状になった布を頭から通し水着を胸の辺りに装着する。生地には肩紐と胸部分を補強する紐がついていて、今で言うブラジャーのような装着状態だ。


「えっ。それはちょっと・・。」

「ええええ!?」

「ワイルドやなあ。」

女性陣にさらに動揺が走る。


カトリーヌは恥ずかしかったのか、すぐに取り外しその上半身だけの水着をテーブルに置くと、木箱からもう一枚取り出し高く掲げる。


「下着のパンツ・・?」

「これだけで人前に!?」

「おおおお・・・これはスゲエ・・」

「ああ、そういうことかいな。セパレートとワンピースの二つあるんやね」


「もう一つはセパレートだよ。実はカトリーヌにワンピースを着てお風呂に入ってもらったんだけど、お腹のくびれのあたりが水が溜まって抵抗を受けるらしいんだよね。だからより泳ぎやすいようにセパレートにしてみたんだ。

こっちの方が断然おすすめするよ!!(他意はない!)」


「カイト様のご趣味でございます。変質的なご趣味の衣装ではございますが、確かにワンピースのものより水の抵抗は少なくなりました。」


カトリーヌ厳しい〜。まあ僕の趣味なのは間違いないのだけど。


「ふーん。カイトの趣味ねえ。」

「俺の趣味にも合うな」


「うちこっちにするわ!泳ぎやすい方が絶対ええもん。いっぱい魚つかまえたる!」

「カイトの趣味なら・・・わたしも着るの」


「この胸のところに紐が入ってる構造は新しいよね?この紐を背中で結ぶの?」


「これもカイト様のご趣味です。水で服が捲れ上がらないようにとの事です。」

「使い心地はどうだった?」


「胸がしっかり支えられてとても良いですね。癪ですが今度私の下着にもそういった構造のものを作って見ようと思っています。」


癪って・・いったかね??


「いいわね・・。私の店でこれつくりたい!」


わいわいがやがやと水着について色々意見が出てきたが、話がまとまると、全員セパレートタイプを作ることで決まっていた。


「カイト!誘ってくれてありがとな。スッゲェ楽しみになってきたぜ!!」


「全ては、我々のシナリオ通りだ。問題はない」


その言葉を聞いたカトリーヌが耳元にやってくる。

「カイト様、私はこの変質者的な計画でカイト様がご友人を失う事を危惧しておりました。それが、これだけ美人な方々を集めて変態的格好をさせる事になるとは。そんな事ができるのはカイト様だけです。改めてその鬼畜なご手腕に感服いたしました。」


**


その後マーガレットの店で水着を見分し制作に取り掛かってもらうことになり、海水浴Xデーは6日後の29日に決定した。



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