第77話 取り調べ2
昨日はルークとカミーユがマチルダ副団長の取り調べを受けて終わった。
その夜、寮の食堂でルークと一緒になったので取り調べの様子を聞いてみたが、結構ガチの取り調べらしい。時間も一人にずいぶん使ってたしね。
マチルダ副団長の印象は厳しくも優しい感じの人だったとのこと。あの歳(30代半ば?)で副団長なのでかなり出来る人物なのだろう。
今日は朝から、アビー、サイモン、イザベル、マーガレットの順で取り調べが進んだ。やはり事件の日にエリザベス殿下と行動を共にしてた人間から調べているようだ。
だから今日も僕は暇だった・・。
自習っていっても、この教室でやることは限られている。
ノートを読み返す。それしかない。
*****
結局、マーガレットが帰ってきたところで、今日は解散となった。
「アビー!一緒にかえろう!」
「俺も一緒だからな」
陽気な声でアビーの元にマーガレットとウインライトがやってくる。
「そうだね。帰ろう」
アビーとマーガレット、ウインライトは同じ乗り合い馬車仲間だ。
しかしマーガレットやウインライトが「一緒に帰ろう」と声をかけるのは珍しい。いつもはアビーの側にはルークがいるし気の合う皆んなで自然と一緒に帰るからだ。
「アビーちゃんうちも見送るでー。」
僕とリオニーは寮なのだが今日はアビーを一緒に馬車停留場まで見送ることにした。みなアビーの事を気遣っているのだろう。
「ルークはやっぱあれから変やで。皇女殿下を救って本気になってもうてるな」
そのリオニーがアビーにズバッとぶち込んできた。
全然気遣ってないやん!!
あわあわ。あわてる僕。
「・・・・ルークはバカだよね・・・。皇女殿下となんて一緒になれるはずがないのにね!」
アビーは少し暗くなりながらも明るく切り返す。
「あははっ そらそうや。いっときの熱みたいなもんやで。うちもゲイルと火遊びはあってもええとはおもってるけど・・本気になったら大火傷やで」
リオニーは火遊びはウエルカムなのか・・・。
「ゲイルはかっこいいからね。私も憧れるな〜」
マーガレットまで・・・・。さすがゲイル。
「カイトが本気でもかまわないの・・」
その声の主が僕の腕を掴む。
えっ?! シャルロットも一緒だったんだね。
「はははっ・・。」
「そういや今日はアビーとマーガレットはどんな聴取されたん?うちらB一班やったから明日の参考に聞かせてや」
「誰か不審なものは居なかったか?とか?」
マーガレットが答える。
「うんうん。ほかにはなんかいっとった?」
「カイトの言うとおり暗闇の中で殿下だけを攫うためには手引きしたものがいるはずといってた。」
「そうじゃなきゃ無理だからね」
「ケンロック先生は殺されたけど、顔見知りだったら警戒しないわよね」
アビーも会話に参加してきた。
「先生も含め、B二班とA一班全員が容疑者にはなってるだろうね」
僕は賢そうに当たり前のことを言うが、それを聞いたウインライトが顔をしかめる。
「そんな奴が俺達の中にいるかな?みんないい奴ばかりだぞ。」
「クラスメイト一人一人との関係を聞かれたよ、特にB二班を中心に。」
「そうねマーガレットの言うとおり、クラスメイトの関係は詳しく聞かれたわよ。
でも私たちにはいないでしょう? ルークはエリザベス殿下を救ったんだし、怪しむならAクラスだと思うけど」
「Aクラスといえば外道のアレッシオなんやけど、その日は謹慎くらってたからなあ・・・・。
ゲイルはちゃうで。そんなことをする理由ないやん。イケメンやし」
イケメンは理由にならないとは思うが・・。
「ゲイルはヨハンナがいるからね。いいな〜ヨハンナ」
ヨハンナがいるのも理由にならない・・。
「私が一番聞かれたのは・・・ルークの事。
ルークはどんな人物か?ルークとはどんな関係か?ってしつこく聞かれた。」
アビーが嫌そうに話す。
「それはきっついなあ。アビーちゃん傷心してるのに」
「私もルークについてはしつこく聞かれたかも。ルークは殿下を助け出した功労者なのにね」
「マーガレットも聞かれたんだ。私にだけしつこく聞いてるのかと思ったわ。
あとはカミーユのことかな?彼の情報があまりに少ないって怒ってたけど・・知らないものは知らないもの。」
「そうそう、カミーユの情報が少ないとぼやいてたよね」
「おっ! 馬車来てるぞアビー、マーガレット急ぐぞ。みんなじゃあまた明日な!!」
「あっ。 じゃあまたね。カイト海の予定よろしくね」
「海って何?? ああ馬車で聞くからいいかな。じゃあまたね!」
そうやってウインライト・アビー・マーガレットは馬車に乗り込んで行った。
アビーの傷心をもう少し癒してあげたかったけど・・・。
夏休みの海の予定を考えよう!
***********
3日目の取り調べは、B一班全員となった。
シャルロット、リオニー、そして僕の順で恐怖の取り調べ室がある中央棟1階に呼び出される。
僕が行くと扉の前で近衛騎士団の鎧を装備した男が2名立っていて、扉にどうぞと合図を送ってくれた。
恐る恐るノックをする。
「入りたまえ!」
厳しそうな女性の声にそう促され部屋に入ると、正面のテーブルを挟んだ向こうに黒髪の30台半ばの女性が座っていた。
教室に来ていた近衛騎士団副団長のマチルダさんだ。
マチルダ副団長は黒髪を後ろで束ね、白い生地に青い刺繍が入った前びらきのローブを羽織っている。これが近衛騎士団の平時の正装であるのは知識として知っていた。
部屋には他に平時の騎士団の正装の者が3名いる。1人は書記役のようだ。
「では名前と出生地を」
「カイト-ドレインです。皇都で生まれました。」
「あのゲイルくんの弟らしいな。話は聞いている」
「はい。ですが兄とは異母兄弟で・・」
「そうだな、それもロビンとゲイルくんから聞いた。それよりもだな・・君は基本の5属性全てを発現させたと聞いたが・・・。
本当なのか? 俄には信じられないのだが・・。」
「は、はい。本当です・・。」
「すごいな・・・・。すごいことだぞ・・。皇国建国以来基本5属性全てを持つものは現れていないんだぞ。
さすがはドレイン家だと言うしかないな・・。」
マチルダさんが少し興奮しているように感じるのは、気のせいだろうか?
「は、はあ」
「基本属性以外は何が使える???」
「・・・再生とか??」
「それも昨日聞いてはいたが・・・驚くべき才能だ。本当に使えるのだな??」
「は、はい」
「他はなにが使える???」
「「速」とか「圧」とか・・そう言うルーンはあるようです。」
「やはりすごい!! 光や闇はどうだ!? 転移は使えるのか?!」
「そこまでは・・まだわかりません。。」
「はははっ!!! 君は皇国の至宝だ!!!ぜひ近衛騎士団に入隊したまえ。もちろん卒業後でいい!!」
「えっ・・ 今日はリクルートに来られたので??」
「おお!!そうだった。そうだったね。すまない。私も皇国の防衛を担うもの。優秀な魔法使いは喉から手が出るほど欲しいんだよ。 コホンっ すまなかった。」
「では本題に入ろう。エリザベス殿下が誘拐された件だが、その時君はどこで何をしていた??」
「えっと・・・ エリザベス殿下が誘拐されたのは日の入り後どのくらいでしょうか?」
「日が昇る4時間前くらいではと推測している」
「その頃はそうですね。寝ていました。」
「一人でか?」
「いや、雨が降っていましたので、皆で布を雨よけにしてその下で寝ましたが・・。」
「誰が近くにいた?」
「ウォルターとウインライトとロビン先生がいたと思います。」
「そうだな。ロビン先生からもそう聞いている。
ではやはり嘘か・・・・。」
「なにか問題でも???」
なにか良くない予感がする。
「いやなに、シャルロットがどうやら嘘をついているようでね。シャルロットは君と寄り添って寝ていたと証言しているのだよ。」
やっぱり!!シャルロットめ余計なことを・・・・。
「はははっ・・・すぐ近くに皆んな居るんですよ。僕にそんな大胆なことはできませんよ。はははっ・・・。」
「そうかやはりな。シャルロットが嘘をつく理由・・・。と言うことは内通者は・・・。」
やばい。シャルロットが犯人にされちゃうよ!!!!
「あっ!!まってください!! えっと・・どうだったかな?!」
「ん???」
「ごめんなさい!!!嘘は僕がついていました!!!」(涙)
「ん?? どう言うことだ?」
「あの夜は・・シャルロットと寄り添って寝ていました・・。」
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