第68話 探索5日目(ルーク班)

【ルーク視点】


アインホルンの森の探索5日目

俺たちの班は、ゲイルやエリザベスの班と一緒になりワイバーンがいると言う岩山を目指す。


エリザベスはこの皇国の皇帝、いわば神様に近い存在の娘。皇女だ。俺のような庶民には一目見ることも許されなかった存在。だった・・。


護衛を従えて歩く貴賓溢れるエリザベス殿下を見ながら、俺はそんな雲の上の人物と一緒に行動できる事に特別な感情を抱いていた。


*******


俺は皇国の南側にある小さな街のテムクックと言うパン屋の倅として生まれた。


パン屋はそこそこお客がついていたが、俺には弟に妹もいて生活は貧しかった。


そこに良くパンを買いに来てくれる鍛冶屋のアデルモさんから弟子を取りたい問う話があり、俺は12歳からアデルモさんに弟子入りすることになった。


最初は水汲みや清掃のような雑用仕事ばかりを任されていたものの、1年後には研磨やちょっとした装飾の手伝いなどの細かい仕事を任されるようになった。


14歳のある時、その街の代官をしている貴族から銅の魔法具の制作の依頼が舞い込んできた。


注文された魔法具は装飾が施された美しい銅の杖で、宝石職人など多くの職人が関わる仕事だったが、銅の杖の赤い宝石を取り付ける部分の最後の研磨を任され、試行錯誤しつつも仕事をやり終えた。


親方のアデルモさんが最後に宝石を取り付けた時はとても嬉しかったのを覚えている。


アデルモさんは「お前が最後に仕上げた部分を確かめてみろ」と杖を渡してくれたのだが、手に取った俺はそのしなやかなフォルムと先端に付く赤い宝石に心が奪われた・・・・。


そして・・・・これが火を生み出す魔法具だったことを思い出す。



子供の好奇心だった。



俺は「火よ出ろと」念じた。


瞬間、杖の先端の赤い宝石が光り輝く。


ボワッ


そんな音と共に拳ぐらいの炎が杖の前に出現した。


「ルーク!!!お前なにをやったんだ!!」

アデルモさんが怒った声をあげてすぐに魔道具は取り上げられた。


しかし、それが大きな転機となった。


その後すぐに俺が魔法を使える事を知った発注元の貴族から、領主メルヴィン伯爵に伝わり、屋敷に呼び出され、トントン拍子でこの学園に来ることとなったんだ。


メルヴィン伯爵の計らいで入学できたこの魔法学園は貴族が数多くいると言うだけではなく、美男美女の集まりだった。


特に1年生のレベルが非常に高い。


赤い髪の美少女アビーを筆頭にセレナ、イザベルなど美しい女性とウインライトのような半狼族(ハーフワーウルフ)のイケメンもいる。


そして、クラスは違うけど、美しい黄金の髪を輝かせる皇女殿下に、公爵の息子、イケメンの方伯の息子etc・・ (公爵の息子のエイブは気の強い子豚的存在だが・・・)


庶民上がりがこんなところに来て良いのか??


そして俺がこんなところでやっていけるのかと、正直最初は怯えていた。


でも、クラスメイトのアビーは貴族の娘なのに積極的に話しかけてくれて・・そこから他のクラスメイトとも仲良くなり学園生活が楽しくなった。


4月に入ると魔法の実技の授業で雲の上の存在であるエリザベス殿下と言葉を交わす機会までできた。


美しい金髪を靡かせる絶世の美女のお姫様とお近づきになれる・・・。


俺は有頂天になって火の魔法に熱心にとりくんだ。もちろん皇女殿下にかっこいいところ見せたい!それだけの理由でだ。



********



その憧れの存在になったエリザベス殿下と行動を共にできる。それだけで俺の心が躍る。


「ルーク。今日はなんだか嬉しそうねえ。」

アビーが後ろからやってきて横に並ぶ。


「まあね。」

「ふーん。エリザベス殿下がいるからでしょ?」


見事に俺の心境をあてるアビー。アビーには嘘をつけないな・・。


「ルークはエリザベス殿下にはやたら気を遣ってるもんね。とってもやさしいし、私の時とは大違いよ。」


「皇女様なんだから当然だろうが。俺は庶民だぞ。雲の上の存在だったんだしな」


本音を言う。アビーとはなんでも言える関係で誰よりも彼女と仲がいい。もちろん美しいアビーに対する恋心もある。


「まあその気持ちはわからなくはないかな。でも・・。身分が違うんだからあんまり馴れ馴れしくしたらだめよ」


「エリザベス殿下には正直憧れはある。でもアビーがいるのにそんなことしないぜ。」

「私がいるのに?? どういう意味かしら?」


「アビーって。美人だろ。」

「ありがと。珍しく褒めてくれるのね。でもどう言う意味かしら?」


「アビー・・こんな美人がそばにいるのに目移りするわけがないってことだよ!」

「えっ。もしかして口説いてるの??」

アビーの顔が笑みに変わる。


「そんなんじゃない。」

「じゃあなんなのよ。」


「へへっ アビーは怒るところも美人だぞ。」

「なに、それ。へんなルーク!」


アビーのことはもちろん大好きだ。口説きたいとも思っている。学園を卒業したら俺も貴族の仲間入りだ。そうしたらアビーに求愛する。そう心に決めている。


ルークはクソ真面目であった。


**


ラノベの話ではゲームの攻略ルート次第でルークはハーレムルートに行くらしいのだが・・いったい何があったのだろうか・・・?



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