第65話 再生魔法2カイトは大忙し

アインホルンの森探索3日目の今日はAクラス1班とBクラス1班、Bクラス2班は休日となった。


負傷者が相次いだため先生方が会議でこの3つの班には休日が必要と判断したのだが、負傷者がいなかったBクラス1班も休日となったのは僕がAクラスのイルバートとBクラスのサイモンを再生魔法で治療する必要があったからだ。


昨日は、再生魔法でイルバートの傷口の止血は出来たが、そこで精魂尽き果ててしまったためサイモンまで手が回らず、今朝からサイモンに再生魔法の治療を開始ている。


Bクラス二班で探索を行っていたサイモンは昨日、ワイルドボアの集団を発見し狩を行った際に負傷した。


カイトの班でもあったように追い詰めると奴らは反撃してくる。


ワイルドボアの突進を避けきれなかったサイモンはモロにくらってしまって腕や肋骨を骨折したのだ。もし鉄の胸当てがなかったらその突撃で命を失っていたかもしれないほどの衝撃だったらしく、胸当ては変形してしまったのだとか。


クラリス先生が治癒魔法をかけてくれてはいるが、そう易々と全身打撲と骨折は治らない。


僕も今朝サイモンに再生魔法の治療をしたのだが、ワイルドボアに激突された際に折ってしまった骨折は複数箇所ある上に、見えない部分の再生は魔法行使の難易度が高くて今の僕ではまだ骨折を完全に治すことができていない。


逆にイルバートの傷は完全に元通りとまで言えないが、ある程度は治療できたと思う。明日には動けるようになるだろう。



この再生魔法について興味深いことをクラリス先生に聞いた。


先生によると損傷を負ってから時間が経てば経つほど治療が難しくなるそうで、そのことが再生を難しくしているとのこと。


僕はまだ再生魔法についてのルーンの知識などは学んでいない、いや、所持しているものが僕以外いないのだから、恐らく学園の魔法学の講座で再生魔法を取り扱うことはないだろう。


再生魔法に時間が関係すると言うことは、もしかすると時間的な意味を持つルーンが魔法の発現に関係しているのかもしれない。

夏合宿が終わって夏休みに入ったら、学園図書館で調べてみようと思う。


ルーンの意味を解き明かせば治療の効果をあげられるかもしれないし、新しい魔法を生み出す事が出来るかもしれないなんて考えている。




「カイト、なにぼーっとしてるんだ?」

昼食後、そんな事を考えているとルークがやってきた。


「ああ、再生魔法について考えてた」


「サイモンのことだな。俺もそれを聞きたくて声をかけたんだ。

あいつまともにワイルドボアの突撃くらったからな。最初死んだように動かないから焦ったんだぞ。

でもさっき話をした感じだと随分良くはなっているようでよかったよ。

ありがとうなカイト。」


「ああ、まだ治療中なんだけどね」


「あいつどうだ?明日には復帰できそうか?」

ルークが心配した顔で尋ねてくる。


「明日は難しいだろうね・・。

骨折箇所も見えないなかで再生魔法をかけなければならないと言うこともあるのと、時間が経つと再生しにくくなるそうなんだ。」


「再生魔法も万能ではないか・・。」


「いや、僕の技量が足りないだけかもしれない。なんたって人を再生魔法で治すなんて今回初めてなんだから」


「それはそうか。魔法は一日や二日ではうまくならないからな。」


「そろそろ、魔法の疲れも取れてきたから、治療に向かうけどルークもくる?」

「そうだな、助けにはならないけど応援しにいってやろう」



********



「カイトはいるか!?!」

僕がサイモンの再生魔法治療を終わろうとしていたら、突然カレン先生がログハウスのドアを開けて飛び込んでくる。


「カレン先生!? どうしたんですか?あわてて」

「アルウィンがフォレストスパイダーにやられた!お前に治療を頼みたい」


「Aクラスの生徒ですね。今どこに??」

「すぐここにくる。治療できそうか??」


「今、サイモンに再生魔法を使ったばかりですので・・。少し休憩をもらえれば・・」

「わかった。お前に任せる」


そう話していると、急造の担架に乗せられたアルウィンというAクラスの生徒がログハウスに運ばれてきた。


「ううううう・・・・」

唸り声を上げるアルウィンの太ももに巻かれた布が赤く染まっている。

太ももをやられたようだ。

その顔は苦しみに歪んでいて、額の汗もひどくかなり症状が重もそうに見える。


クラリス先生が布を取り払うと、太ももに空いた二つの穴のような傷から血が流れ出していて、しかも傷口の周辺は紫色に変色している。


「これは・・・」


「フォレストスパイダーは相手を壊死させる毒を持つ。蜘蛛の巣にかかった獲物を毒で動きを封じてから食べる為だ」

カレン先生が説明する。


「・・・・早くしないとまずいですね。やはり今から治療します」


「体内に入った毒まで再生魔法で治すことはできないはずです。カイトくんが傷口周辺を再生魔法で治療した後に私が治癒魔法を行います」

クラリス先生の話はもっともだ。再生魔法では体内の毒までは対応できないだろう。


「わかりました。とりあえず僕はやれる事をやるだけです。」


僕は再生魔法の杖を木箱から取り出すと、傷口に精神を集中して杖を向け、


『元の状態に甦れ』そう念じる。


杖の先の宝石が眩しく光ると傷口がゆっくりと塞がり、紫色だった皮膚の色も元の状態に戻っていく。


僕の額から汗が滲みでてきた。精神的に非常な負荷がかかっているのがわかる。しかし彼を助けるために集中を切らせるわけにはいかない。心を強く持ち魔法具に力を注ぎ続ける・・・。


傷口が塞がった。と感じた時、フッ・・・と、意識が・・・遠のく・・・・・・・。



「カイト!!!」

意識を失う瞬間、カレン先生とクラリス先生の慌てる声が聞こえた。



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