第55話 パオロとアレッシオ

帝都の貴族街にあるパオロ大司教の皇都別邸はさほど大きくない。それどころか貴族街にあっては小さな屋敷である。


この屋敷は大司教が皇都にて枢機院や元老院などに用がある時に利用するために教会が持つ邸宅で、私的なものではない。


しかし、実質的にはパオロの所有物のように扱われ、今はパオロの息子であるアレッシオが自身の家として利用してる。


その小さな邸宅の応接の間にパオロ大司教が茶を飲みながら座っている。




アレッシオは少し慌てていた。

アレッシオが邸宅に戻ると庭には教会の馬車が2台停まっていて、玄関先に出てきた召使がと言うのだ。


ゲイルの襲撃の件であろうか?アレッシオは考える。

ゲイル襲撃の後、襲撃を行った従者の3人がヨースランドの修道院に戻されてしまった。事件への関与発覚を防ぐためとのことだったが・・



「父上。わざわざ皇都までどうしたんだ。俺は会いにきてくれなくても上手くやってるぞ」

アレッシオは応接間に入るなりそう言った。


「お前は親に対する口の聞き方も忘れたのか?」

パオロは口につけていたティーカップをテーブルに置いてから苦言を口にする。


「俺は父上に言われたままやっている。何か悪いところがあると言うなら教えてくれ」


「まあいい・・・・。私はお前になんと言った?」


「・・・・」

アレッシオは少し考えて、


「学園の生徒の中で魔法の才能があるやつを見つけて俺らの仲間にすればいいんだろ?」と答える。


「ゲイルについて私はなんと言った?」


やっぱりゲイルのことかよ。とアレッシオは苦い顔をする。


「友になり神の呼び声に入れろと」


「その私の命令をちゃんと覚えているとはな。

であればお前は脳なしか!?」


「まってくれ。違うんだ父上。俺はヨハンナ・・アルムガルトの長女の才能を知って我々の仲間に引き込むべく勘張ったんだ。そこにゲイルのやつが現れて、俺を、俺様を侮辱しやがった。だから・・・」


「だから襲撃したのか???」

「奴を殺そうってわけじゃない。ヨハンナを仲間にするために連れ帰ろうとしただけだ。」


「馬鹿者が!!!!!

ドレイン方伯とアルムガルト伯を敵に廻すつもりか!!!!!」


「・・・・・」


「私がどれほど神経を注いでドレイン方伯に取り入っているのかわかるか? 今、大司教の地位が盤石なのはドレイン方伯の力あってこそなんだぞ! あの忌々しい枢機卿どもに指図されない今の力を得るのにどれだけ時間と労力をかけたと思っているのだ!!」


「すまない。父上・・」


「お前をすぐにでもリブストンに戻したいところだが、ゲイル襲撃の失敗が理由と思われてドレイン方伯との関係が崩れては困る。お前は今まで通り学園生活を送れ。

ただし絶対にゲイルとは敵対するな。わかったな」


「わ、わかった」


「いいだろう。では今回だけは許そう。

もう一点。

お前に「神の呼び声」の従者はつけん。

また、B組に入れたシャルロットとカミーユにはお前と一切接触するなと言ってある。勝手に接触するような行動は慎め。あやつらには別の役目がある。」



**********



授業の合間の休み時間、僕はトイレを出たところでシャルロットと偶然?顔を合わせた。

いや、待っていたのか?


「カイト・・・」

「どうしたのシャルロット」

「カイトこっちに来て」


それだけを言うとシャルロットは廊下の先にある階段に向かって歩き始める。


「どこに行くの?」

「・・・・・」


僕は何か急用かな??と仕方がなく着いていくと、シャルロットは階段を上り切り建物の屋根裏に出るための扉の前でとまった。


「ここなら誰もこない」

「二人きりでないとできない話?」


「そう・・」

「うん。いいよどんな話をしたいんだ?」


「カイトは私の事どう思う?」

「どうって??・・・ クラスメイト・・??」


「そうじゃないの」

「女性としてってこと?」


「そう。」

「かわいいと思うよ。」


「だったらカイトは私を好きにしていいの」

「えっ・・。ど、どう言う事?」


「・・・・・好きにしていいってこと」

「か、か、かわいいと思うけど・・。」


突然シャツのボタンを外し始めるシャルロット。


「まってまって。ここ学園だし。だめだよそんなことは。」

「じゃあ学園でなきゃいいの?」


「いや・・そういうわけでは・・・」


心臓が高鳴る。ドキドキだ。いきなり可愛い女の子から迫られているのだから男としては当然の反応ではある。


「ちょっと・・心の準備が・・」


僕は動揺してしまいよくわからない少女のような発言をしてしまう。


「じゃあ学園の外でならいいの・・・・」


その時、教会の鐘が鳴った。授業の合図だ。


「あっ急がないと! 地理の授業がはじまっちゃうぞ!」


そう言って僕はシャルロットの手をとり、逃げるように階段を降りた。


「やくそくね・・・」


カイトに手を引かれるシャルロットの最後の言葉は小さく、動揺して焦ってたカイトの耳には届いていなかった。



***************


※お読みいただきありがとうございます。

魔法学校入学編はここまでです。次からは夏合宿編に入ります。


誤字脱字、幼稚な表現色々ありますがどうぞこれからもお読みいただければ幸いです。

もし指摘いただいたらすぐ直しますw

by作者

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