第53話 動の魔法講義

「動」の魔法。これは実は一番ポピュラーな魔法だ。所有率No1!!それが「動」の魔法だ。


しかし、「動」の魔法が使えるんだぜー!俺つぇえ!とはならない。

「動」の魔法は補助魔法の位置付けだからだ。


いやいや、もちろん「動」の魔法は基本属性と呼ばれるくらい重要な魔法である。

だから使えるとなかなかに便利なのだ。


「動」の魔法とはすなわち狙った物体を動かす魔法だ。


すげ〜。パチパチパチパチ。

みんなちゃんと拍手してよ。


「・・・・・・」


いや凄い魔法なんだよ! あの憧れのテレキネシスなんだからね。


「テレキネシスってなに?」

「アビーさん。質問は手をあげてね。テレキネシスとは念動力のことだよ。」

「念動力??」

「細かいことは気にしないで」

「・・まあいいわ。あとで聞くから」


テレキネシスといっても、映画で出てくるようなテレキネシスと違うのは、魔法具が必要だと言う点とその力は非常に弱いということかな。


この魔法学園を卒業する時になっても、5-600gの物体を動かせれば御の字のようだし。

だから人をそのままぶっ飛ばすってのは夢のまた夢なのだ。

それができたら空を飛べるのにね。


では動魔法しか持たない人は、戦闘で役に立たないのでは?と言われるとそんな事はなく、たとえば矢を弓が無くても飛ばしたり、石ころを飛ばしたり・・・。


しょぼい?って?


そうだね。実は「動」魔法だけでは結構しょぼい。

動魔法とは別に「速」ルーンと言われるものを持っていて初めてさきほどの攻撃は成り立つしね。


もし「速」ルーンも同時に使えれば、水の魔法を持つ人と共同魔法を使う手もある。コンビネーションを練習すればウォーターカッターという魔法を協力して使えるかもしれない。



「はいはーい!!」

「はい。アビーさん何か質問??」


「うん質問。「速」のルーンは知っているけど、まだ習ってないよね。カイトはなぜそんなに詳しいの?」

「いい質問だね。まだ習ってないけど重要だから勉強したんだ。「速」のルーンは「動」や「風」魔法と組み合わせるとかなり応用が効くからね」


「はいはい!」

「はい、マーガレットさん」

「えーと、カイト先生はどこで勉強したのかな??」


「えーと、図書館?」

適当な事を言う。


「ふーん。カイト先生は勉強熱心なんだね」


「じゃあ講義を続けるよ!」

「はいはーい!!」

「はい、アビーさん。また?」

「さっき言ってた ウォーターカッターって何?」


「水を細く射出して、それを高速で敵にぶつけることで相手を切り裂く魔法だよ」


「私にも使える?」

「アビーにも使える可能性はあるよ。いや・・結構可能性は高いと思う」


「なぜそんなことが言えるのよ?」

「僕の第六感がそう言うのさ」


「何それ? フフッ。」

「じゃあ次いくよ」


基本5属性魔法と言っても様々なルーンの組み合わせで成り立っている。

「火」属性魔法が使えるというのは、「火」「集」「出」の3つのルーンを持つと言うことになる。

「水」魔法なら「水」「集」「出」のルーンだ。


「動」魔法なら「捉」「体」「動」のルーンになる。


勘違いしてはいけないのはここで出てくる「捉」とか「集」「体」って言うルーンの名称は古代から伝わる魔法のルーンを研究して体系化してまとめた時につけられた名称であって、絶対の意味を持つわけではない。


「体」と名付けられたルーンは恐らく体を持つもの・・要するに「物体」に対して働くという意味でつけられたのだろう。


ちなみに「風」魔法のルーンは「捉」「気」「動」だ。


皆さんお気づきのように、風魔法は本当は「動魔法」なんだ。

対象が形あるもの「体」か?

見えないけど漂うものである「気」か?

だけの違いなんだよ。


「火」「水」「雷」「風」「動」の5つの基本属性のうち、「火」「水」「雷」は生み出す魔法。「風」「動」は動かす魔法ってこと。


魔法の知識があまりない人にでもわかりやすくするために「ルーン」そのものではなく「属性」という呼び方をしているだけで、「属性」とは「セット」と考える方が良いと思うよ。


「OK??  返事は??」


「OKーーー!!」


カイトは5限目終了後、魔法学が苦手だというクラスメイトに空いた教室で講義を行っていた。

メンバーは、ルーク、アビー、マーガレット、リオニー、シャルロット、ウォルター。



**********


カイト先生の特別講義が終わって皆下校していく。

とはいえアビーとマーガレットは乗り合い馬車で皇都の中心に向かい、ルーク、リオニー、シャルロット、ウオルターは学園寮生活者だ。


僕は授業棟エリアの門を潜るとアビー、マーガレットと別れて寮方向に5人で歩いていく。


2人と別れるとさっきまでマーガレットがいた僕の横のポジションにスッとシャルロットが無言のまま入ってきた。


この特別講義はアビーが発案者なのだが、参加者を募ったらシャルロットが真っ先に手を挙げた。横にいたカミーユは少し驚いた顔をしていたけど、苦虫を噛み潰したような顔しただけで止めるようなことはなかった。

シャルロットとカミーユどう言った関係なんだろう? 不思議なのだ。


「シャルロット。最近カイトにべったりだな。カミーユはほっといていいのか?」


ルークも最近のシャルロットの行動に疑問を持ったのだろう。


「カミーユはカミーユのするべきことがある」


「するべきこと?」


「・・・・・」


「カイトはなんかモテモテやなあ。ゲイルと比べたら月とスッポンやのになあ」


リオニーはストレートだねえ。僕が月なのかな???


「カイトはいいな!モテモテで。見た目は負けてないつもりなんだけどな」


ウォルターまで絡んでくる。


「カイトが俺よりモテるわけないだろ。シャルロットもそんな事言われて迷惑だよな。俺とも友達にになろうな」


「・・・・・・

カイト以外はいらないの」


ルークはあしらわれた。


僕が得意げに講義をしてた時はリオニーと男どもはよくわからない顔で暇そうにしていたのに、終わった途端にこれだ。


「いやモテてるわけじゃない。よね。シャルロット」


「カイトなら構わないの」


何が構わないのかがさっぱりわからない。


そうこうしているうちに男子寮が近づいてきた。

男子寮の前にはいつもの通りカトリーヌが待っていてくれている。


「おかえりなさいませカイト様」


「美人の侍女さんが待ってるからいいよなーカイトは。 じゃ!またなカイト」

そう言って男達は去っていた。ホッ


「ほなまたね男子生徒諸君!」

リオニーも寮に帰っていく。




「あれ?シャルロットどうしたの?」

「カイトなら良いの・・」


「カイト様、また少女に手をだしたのですか? ゲスいですね。」


またって人聞きの悪い・・・。


「手を出してない。手も触ったことないし。

で、どうしたのシャルロット?」


「・・手をだしてもいいの・・」


「えっと・・・。もう一度言ってくれる??」


「・・・話がしたいかな」


「いいよ。何の話がしたい?」


「二人で・・話がしたいの」


二人は無理だろう・・・。ちょっと怪しいぞ君。


「ここでならいいぞ」

「・・・・・・ならいいの。」


シャルロットはカトリーヌを睨みつけて女子寮の方にあるいていく。


「またなシャルロット」


「カイト様。女心を弄ぶのは控えた方がよいかと・・。」

「なんにもしてないんだって!!」



***************

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