第49話 皇立大劇場前

「やっぱ大劇場はすげえ迫力だな!!」

「そうね。私は入ったことあるわよ」


圧倒的な迫力の皇立大劇場を見て喜ぶルークと、入った事くらいで自慢するアビー。


「じゃ入り口付近までいってみようぜ」


ルークとアビーが仲良く劇場入り口の方に歩きだすが、その入り口も10m以上の高さがあるアーチ状になっていて、近づけばその存在感に圧倒されそうだ。


「カイト様」


突然すっとカトリーヌが寄ってきて耳元で呼び止める。


「どうしたの?」

「あれを」


カトリーヌが目配せした先に、ドレイン家の馬車が見えた。


そしてその馬車からは鮮やかな青色のドレスを着た「ヨハンナ」が降りてきて、エスコートしている男性の手を掴む。その男性はもちろんゲイルだった。


「ゲイルとヨハンナ・・演劇見にきたのかな?」


「他にこの劇場に正装で来る理由などないと存じますが。」


「ヨハンナはすっごく綺麗だね」

ヨハンナのドレス姿は本当に素敵だった。


「綺麗・・・。ドレス綺麗!欲しい!」


ビアンカが涎を垂らしそうな勢いでヨハンナを凝視している。

確かにこれを見ちゃうと欲しくなるのはわかるかも。でもビアンカにはまだ早いのでは?


ゲイルとヨハンナは腕を繋いだままこちらに歩いてくるが、こちらに気づくと足を止める。


「Bクラスの連中か・・。」

「やあ、こんな所で会うなんて奇遇だね。」


ゲイルはめんどくさそうだが、ヨハンナは満面の笑みで話かけてくれた。


「お兄様、ヨハンナ。ご機嫌麗しゅう。今から観劇ですか??」


慌てて言ったこともないセリフを吐いてしまった。


「お前にお兄様と呼ばれる筋合いはないがな。ここで何をしている??観劇ではなさそうだが?」


相変わらず冷たい・・。だけどその冷たさとダンディな口調がめちゃくちゃかっこいい・・。


「君たちは今日の演目を見ていかないの??

僕は今日出演するローズ・テイラーっていう役者さんがすごく好きでさ。

とっても美しい役者さんなんだよね。だからゲイルに無理言って連れてきてもらったんだ。」


ゲイルのニヒルなカッコ良さに対してヨハンナは笑顔がとても可愛くてスタイルも見惚れるほど綺麗だ。

さすがA組No.1ヒロイン。実は僕もヨハンナが一番お気に入りだったかもしれない。そんな気がしてきた。

・・・・。

いや、アビーももちろん素敵だよ!


「カイト様、鼻の下が伸びでおいでです。」


確かに顔が緩んでいた。ビアンカみたいに涎は垂らしていないけど。

顔を引き締め直そう。


「ヨハンナにゲイルじゃない。演劇をみにきたんだ?」


あれだけ毒牙がどうだと言っていたのにフレンドリーに話しかけるアビー。


「よっ!お二人さん。素敵なドレスだな。なになに?二人は付き合ってるのか?」


どストレートなルーク


「君たちに応える必要性を感じないが?」


「へへっ それは僕とゲイルの秘密だよ」


秘密になってないが、仲は良さそうだね。

ゲイル兄さんが羨ましい。


「お二人は付き合ってたんですね。」

「美男子に美少女!絵になりすぎるんですけど〜〜〜。」


セレナもマーガレットも2人に視線が釘付けになってしまっている。


「フフッ・・秘密だからね。 いこうよ!ゲイル。 じゃあ皆んなまたね!」


素敵な笑顔を振りまきゲイルの腕を引っ張って中に入っていくヨハンナ。


「カイト!私も演劇みたい!!」


ビアンカが僕の腕を掴んでゲイルとヨハンナに続いて一緒に中に入ろうと引っ張ってくる。


「だめ、だめ。ここはドレスを着ていく所なんだぞー」


マーガレットがそんなビアンカの腕を取って制止してくれた。


「ビアンカもあんな素敵なドレスが欲しい〜〜!!」

「ビアンカちゃんドレス欲しいの??? ドレスかあ・・・。」チラッ。


マーガレットが視線を僕に投げかけてきた。

今日はマーガレットの実家の仕立て屋でビアンカのお洋服を仕立ててもらう予定になっているけど・・・

一緒にドレスも作るか??との合図だろう。


マーガレットの耳元に顔を寄せて、

「いくらくらいするの?」と小さく呟く


「5,000セルにまけとくわ」

僕はカトリーヌの方を振り返り手をパーにして差し出す。

カトリーヌは頷く。


「じゃそれで」小さく呟く


「じゃあビアンカちゃんのお洋服とドレス作っちゃおうかなー!」


「やったー!!マーガレット大好き。これで演劇見ることできるね」


マーガレットに抱きつくビアンカ。


なんて甘え上手なのだろう。。ビアンカの将来が不安だ。。。



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