第40話 ゲイルとアレッシオ
私はゲーム「ルーンレコード」の世界のゲイルという悪役に転生した。
ゲーム知識を活用して悪役としての死を回避しようと考えているが、ゲームでは学園に居るはずのない人物が4人存在する。
その1人が1年Aクラス。私と同じクラスに在籍するアレッシオだ。パオロ大司教の息子が何故か学園にいる。
奴は横暴で下品。女をジロジロ舐め回す視線がとても不快だ。元のゲイルも同類だったと考えると自身への嫌悪感も掻き立てられる。
とんでもない奴が入ってきたものだ。
重要なのは、何故ゲームと違い奴が学園に入学したのかという事だ。
パオロ大司教は父であるドレイン方伯と親交が深い。
パオロが大司教としてロンドアダマスの枢機院から独立できているのも父の影響力あってのこと。
またパオロは皇国の真聖教トップ組織である枢機院の上に立ちたいとも思っているが、それには国の最高権力者の支援が必要である。
そのため皇位を狙う第二皇子と密約をかわしており、第二皇子派を影から支援をしている。
わたしの父にとってのパオロ大司教は皇帝と繋がる枢機院とは別の意思で動く真聖教の組織のトップであり、真聖教を重要視する皇国でドレイン家の権勢を支える重要な役割を果たしている。
また、父は皇帝に成り変わりドレイン家が皇国を手中に収める事を夢見ている。
これはドレイン家としての野望であり、その役目を私、ゲイルに託そうとも考えている。
父が第二皇子を支持するのは基盤が弱いからである。
力の劣る第二皇子につけばドレイン家の影響力を高めやすい。
もちろん、ドレイン家には劣勢の第二皇子を皇位にするだけの力がある(と考えている)。
第二皇子派をドレイン家側で固めて皇位につかせることが出来れば傀儡に出来ると考えているのだ。
これらは私がゲーム制作の中心にいたのでわかる。はっきりそう設定していたのだから。
両者とも現体制を覆そうと考えているところは同じだ。それゆえ互いに同調しているとも言える。
ただし、パオロが裏で悪魔召喚を模索している事は父も知らない。
悪魔というのもゲーム制作者サイドの知識による捉え方で、彼らは神の僕を召喚するのだと考えているのだが・・。
その悪魔の召喚に絶対に必要になる希少な「神」のルーンを持つ者は私の知る限り2名いる。
ゲームの主人公であるルーク。そして
現時点でパオロがその事を知っているわけではないが、天才と呼ばれる私にその素養があるのではないかと疑ってはいる。
アレッシオがパオロの命令で入学したとなると、やはり私が日本人の記憶を取り戻した後の行動がパオロの思惑通りではないためなのだろう。
転生後に2度ほどパオロ大司教より『神の身もとに近づくための勉強会』なるものへの誘いがあった。転生前にも同様の誘いがあり2回ほど参加しているが、転生後はもちろん断った。
私がゲームディレクターとして設定に携わった「神の呼び声」という秘密結社への勧誘装置になるのが『神の身もとに近づくための勉強会』である。怪しい宗教法人がよく使う手口だ。
自分達で考えた設定ではあるが、「神の呼び声」という秘密結社はロクでもない悪魔崇拝組織であり、パオロ大司教はそこのロクでもない指導者もしている。
こんなのに関わると悪魔召喚に利用されるのがおちだ。
しかし、私が『神の身もとに近づくための勉強会』への参加をやんわり断っている事が、学園の変化の原因である可能性は高い。
だから私を取り込むためにアレッシオを送り込んてきたのか・・?
とも思ったが、アレッシオは私に好意的どころか敵対的にすら見える・・・。
奴の行動は全くよくわからないのだ・・・。
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私がいる1年A組には10人の生徒。
担任教師は アーサー-ロブウェル。
エリザベス(皇女)
エイブ(レクサム公爵家)
ゲイル(ドレイン方伯家)
アレッシオ(父:パオロ- フェッラーラ大司教)
アルウィン(デズモンド伯爵家)
ヨハンナ(アルムガルト伯爵家)
アリーチェ(アブラーム子爵家)
イルバート(ウィルバード子爵家)
エドナ(オブライアン子爵家)
ハインツ(ダンカール子爵家)
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