第39話 火魔法

火魔法の実習の講師はカレン先生だ。

カレン先生は火魔法の専属講師で青黒い髪を長く伸ばし青いフチのメガネをしている。

年齢は40過ぎくらいだろうか?とても高名な火の魔法使いであり、この先生に教えてもらえるというのはとても幸運だろう。


「皆さん揃いましたね。では授業を始めましょう。」

メガネをくいっと上げるカレン先生は少しかっこいい。


「皆さんは随分と火を上手く出す事が出来るようになってきましたが、

昨日入学したばかりのカイト君がこの火属性教室にきたので、まずはカイト君に火の魔法を発動してもらいましょう。」


そういうとカレン先生は生徒達に火の魔道具を渡していく。


「カイト君。魔法具の杖はとても貴重なものですのでくれぐれも雑な扱いはしないように。」


「わかりました。」


「では、カイト君、今持っている杖を的に向けて掲げてください。

そして、杖の先から炎が吹き出している事を想像してください。」


「はい。」

カイトは杖の先から炎が火炎放射器のように飛び出して行く姿を想像してみる。


「では、杖を的に向けたまま・・その想像を維持して・・

杖の先の宝石に念じてください。イメージを具現化しろと。」


宝石が赤く輝く


ボッー!


杖の先にガスバーナーのような炎が出る。


「素晴らしいじゃないか。 初めての授業で立派な炎が出るなんて!」


先生がとても嬉しそうに褒めてくれる。僕も前より立派な火が出て嬉しい。

先生教え方上手いな!


「ケッ! お子ちゃまの遊びじゃねーんだよ。ザコが。」


後ろで見ていた黄土色の髪の背の高い男子生徒が毒づいてきた。

ザ、ザコですか、、。


「炎ってのはこう出すんだよ!」


男子生徒が後ろの方で杖を振ると一際赤い宝石が強く輝く。


ゴオオー!!


そして杖の先からは1mほども伸びる炎が噴き出た。

炎の量も音も桁が違うんですけど。。


「危ないのでやめなさい!!アレッシオ君!」


「チッ 俺が誰かに当てるってか?そんなヘマはしねーよ」


それにしてもこれは危ない。もしこの炎に人が飲まれたら大火傷を負ってしまうよ。考えただけでも悍ましい・・。


「とりあえず、こんな遊びを見物させるんじゃなく、早く練習させてくれや」


ヤ、ヤンキーか!?


・・・コイツはアレッシオと言うのか。こんな奴はノベルには出てこなかったんだけど。

モブだからラノベでは触れられなかったのか?


それにしてはとんでもないキャラだ・・これでモブキャラはないだろう。

学園に居たら絶対描かれてないとおかしい・・。


カレン先生は苦々しい顔をするもののそれ以上注意はしなかった。


よし、アレッシオとは目を合わせないでおこう。僕は心に誓う。


この実習で1番火の魔法がうまく使えているのはやはりゲイルだろう。

少し意識を集中して杖の宝石が光ると、吹き出した炎は2mほどの長さになっていた。

スゲェ。やっぱゲイルは天才だ。感動してしまった。




隣の列で魔法の意識を高めているイザベルが目に入る。


イザベルが杖を振るう。


ゴオーーーッ!!

すごい音を立てて1mを超える炎が噴き出る。


ゲイルの次に火の魔法が効果的に使えているなはイザベルだろう。

どうやったらあれだけ上手く魔法を発現出来るのだろうか・・・。


「みんなすごいなー。どうやったらそんなに上手くなれる?」


「練習あるのみよ。今日来て今日こんな事ができたら天才よ。

何回も意識を集中して魔法を使っていると、何かが繋がるように感じてくるわ。そこからが勝負ね。」


なるほど。わかりやすい説明かも。


「やらないのか?じゃあ俺が先にやるぞ。」

ルークは僕を抜かして実習の足場にいくと集中し始める。


「炎をイメージして体、そして腕を通って杖の先から生み出す。そんなイメージですよ。今度は長めに炎を出してください。」


カレン先生がルーク指導をする。


ルークが杖を的に向ける。

「ファイア!」


ルークが叫ぶと杖の先が光る。


ゴオーー!


1mほどの炎が生み出され、ルークの表情に喜びが見える。上手くいったのだろう。


「そのまま維持してみましょう」


カレン先生が険しい顔で指示をだすが、炎はすぐに消えてしまった。


「集中が途切れましたね。」


「あー。しまった。でも今までで1番の出来だな。やったぜ。」


ルークが無邪気に喜ぶ。


この授業では皆が魔法の発現をスムーズかつ高威力で行うためにひたすら魔法を使うわけだが、どういうわけか広い教室なのに2列に並んで魔法の発動の練習を行う。


連続して魔法の行使は行わないのは、どうやらMPの消耗を抑える狙いがあるようだ。


あれからアレッシオも何度か魔法を発現させていたが、次第に集中力が切れてきたのか、威力が弱まっていく。


しばらくするとアレッシオは部屋の隅にある椅子にふらっと向かいどかっと腰をおろした。

その後を追うように、同じA組のイルバートが横に座って「はははっ おれもかなり上達してきたぜー。」と大声で笑いながら話始める。


アレッシオとだべりたいのだろう。大きな男が二人で大声で喋るとなんだかうっとしい。


「さっきの新入りの魔法みた? 俺の○○コより小さかったぜ ワハハッ」


大声で人の悪口いうの良くないとおもいます・・。


「ワハハッ! あいつ魔法の才能ゼロだろ。俺の練習の時間減らすなよな〜ザコが。

ワハハッツ」


それもきこえてますぜ・・。 

練習の時間なのにあんた今休んでるやん!?

またいらいらして心の中で関西弁で突っ込んでしまった。。でも関わりたくないから無視無視。



この世界にマジックポイント(MP)と言う概念はない。

しかし、ゲームには精神力と言う概念があるとラノベで読んだ。

ゲームでは魔法を使うと精神力が減る。しかも強い魔法ほど精神力が減るのが速い。


アレッシオは先ほどの強力な火魔法を何回も使ったので消耗したのだろう。消耗すると意識が飛ぶこともあるそうなので、生徒は疲れたら自由にベンチで休んで良いことになっている。

私語は禁止のはずだけどね。


精神力の回復は速いので、1時間もあればほぼ回復するらしいが、実際の戦闘の際には小一時間待っていてくれるなんて事があるはずもない。実戦では精神力の消耗のコントロールが必要になるだろう。


だからこその剣術だ。剣と魔法。両方を鍛えていかなければならない。



アレッシオ達が休憩で大声でだべっているので、嫌な声が聞こえても魔法に集中するという重要な練習ができそうだ。


それにカレン先生はきっちりポイント押さえて手取り足取り指導してくれるので取り組みやすい。

よし!頑張ろう!



************


※学園編序盤・・説明チックな展開ですみません。

ちょっと一気に登場人物を出しすぎているからかかな?・・・あとで見直して整理するかもしれませんので悪しからず・・・・

by作者

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る