第36話 初めての魔法実習
南棟の4階には水魔法の実習教室と火魔法の実習教室がある。
どちらも天井が高く広いのが特徴だ。
僕がアビー達(あとマーガレットとシャルロット)に連れられて4階の水魔法の実習教室の前に行くと、煌びやかな白銀の鎧を着た女性が2名入り口に立っていた。
兵士がいるなんて水魔法はそんなに危険なのかな? 横にいるアビーに目を向けると、
「皇女様の護衛よ」とアビーが教えてくれる。
1年A組には皇帝陛下の第4子であるエリザベス皇女殿下が居るというのはラノベ知識で当然知っている。そしてエリザベス殿下は水魔法の才女だ。水魔法の授業を受けることも当然想定済みではある。
しかし、護衛が教室前で待っている姿は想像していなかったな・・。
「さすが皇族はやっぱり違うね」
「皇帝陛下のお子で魔法を持つのは彼女だけだしね」
アビーは小声で教えてくれる。
そう。それが次期皇帝レースをややこしくしているのだ。鋭いねアビー。
教室に入るとこの授業の講師であるAクラス担任のアーサー-ロブウェル先生が黄金の美しい髪を靡かせる女子生徒と談笑していた。
黄金の髪を持つ美少女。もちろんエリザベス殿下だ。ラノベの表紙絵よりずっと美しい。僕はそう感じた。
僕が少しだけエリザベスに見惚れていると、それに気づいた先生がこちらに足を踏み出す。
「カイト君だね。私が水魔法を指導するアーサーだ。」
「初めましてカイト-ドレインです。魔法は全くの初心者ですのでご指導をお願いします」
「うむ。」
「あなたがカイト-ドレインさんね。初めまして私はエリザベスといいます。」
黄金の髪を靡かせながら近づいて来る皇女殿下にドギマギしていると、殿下に先に挨拶をされてしまった。
「存じております皇女殿下。一緒に学べるとは恐悦至極にございます。どうぞよろしくお願い申し上げます」
相手は皇女殿下だし、こんな感じでええのだろうか?
「ハハっ そんな畏まりかたする必要ないわよ。おかしい喋りかたするのね。
ゲイルの弟さんだって言うからどんなナルシストかと思ったけど、案外面白い方なのね。」
「ハハハッ・・・・」
「学校では同じ一年生同士、エリザベスでいいわ。仲良くしましょう」
「ではエリザベス・・様。よろしくお願いします。」
「今日は初めての魔法の実習でしょ。あのゲイルの弟がどれほどの実力か期待してしまうわ」
「・・・・えっと。まだ水魔法は一度か二度コップ1杯程度しか水を出したことしかなくて」
「ハハっ そうなのですね。あのゲイルの弟なのに。ハハハっ ギャップがありすぎてなんだか新鮮です。」
「そうなんですよ。ゲイル兄さんと比べられるのはちょっと荷が重いですね。」
「いえ、カイトさんでしたね。ずっと良いと思いますよ。私は気に入りました。これからもよろしくね。」
エリザベスは気さくな女の子だった。いや、それは知っていた。知っていたんだけど実際に会うと近寄りがたい貴賓がある。
この教室の半分は風呂のようなタイルが敷き詰められていて排水のために少しだけ奥に向かって斜度がついている。
その奥にはやはり木で出来た標的が並べられているが、今の僕の力量なら手の届くところに的が欲しい。
生徒全員にアーサー先生より水魔法具の杖が渡され魔法の実習授業が始まった。
メンバーは6名。魔法実習としては多い方なんだとか。水魔法の生徒は先生と相談の上、都合でこの5限に集中させている。生徒が少ない学園ならではのやり方だ。
1A アリーチェ ハインツ エリザベス
1B カイト アビー シャルロット マーガレット
「では授業を始める。皆さん二列に並びそれぞれきちんと集中して学んだ通りに練習してください。カイト君はこちらへ」
皆が魔法の練習を始める中、僕だけは離れた位置に呼び出された。
「まずは水魔法を発動してみてください」
アーサー先生は説明も何もなしにそう告げる。
「はい。では・・・」
僕は水が湧き出るイメージを意識し杖をふる。『水よ出ろ』
ちょろちょろ。。。
大聖堂でやった時のようにちゃんと水が出ている。
僕は「ほっ」とする
「・・・わかりました。どのように意識しましたか?」
「えっと・・・。水が流れてるイメージ・・?」
「そうですね・・おそらく魔法具への意識が低い。
それと、まずは体の奥から水が湧き出すイメージ。もしくは体の中に水が集まってくるイメージを持ってください。水が流れ出るのは湧き出したものを流れ出させる。そう意識するのです。最初はゆっくり集中して始めましょう」
「はい!!」
なんだかイメージしやすくなったかもしれない。
もう一度杖を前方に出して・・・「水よ流れ出よ」
杖の先の宝石が先ほどより青く強く輝く。
ジャーーーー!!
水道を捻った時のような水が杖から放たれる。
おおっ!僕すごい。教会で出した時よりずっと量が多い!!!
「わかりましたか? 今回はどのように意識しましたか?口で説明してください。」
「体の奥から水が胸のあたりに湧き出すイメージをして、その水が杖をつたって杖の先の宝石から流れ出るような感じ??ですかね?」
「よろしい。 その意識を忘れないように何回もチャレンジしてください。
あと、水の湧き出すイメージを色々試してみてください。
それと腕と杖を伝わって噴出するようなイメージも試していきましょう。」
「わかりました!」
僕は何かを掴んだ気がして嬉しくなる。
言われた通り次は海から押し寄せる波ような水をイメージして、、噴出
ジャーーー。
先ほどと同じような蛇口から出てくるような水が出てきた。
「色々試してください。あとは集中の仕方によっても大きく変わります。何度も何度も練習しているうちに意識と発現の関係性がわかってきます。」
「わかりました」
「魔法そのもの・・そうですねルーンとの繋がりみたいなものを感じれれば一人前です。
もちろん今日の今日得られるわけではありませんが、その積み重ねが魔法を自分のものにするのです。
ではあなたは列には戻らずここでひたすら練習してください。魔法の発現量が少ないので他の生徒より、何回もチャレンジできますので。」
魔法の発現する力によってMPを失うってやつね。現実にはMPではなく精神的な疲れを感じるんだったかな。僕は魔法がしょぼいので何度でも試せると・・・。
「疲れを感じたら後ろのベンチで休んでも結構です。」
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