第34話 初めての学園食堂

昼食の時間になり僕たちはセレナに導かれ食堂に向かう。


授業棟は南北一棟ずつあってその間に中央棟がある。

学園の食堂は1Bの教室がある南棟の2階の渡り廊下を渡ったその中央棟にあって、中央棟の1階は教師/講師のための部屋(日本の職員室に近い)三階と四階は図書館になっているが、この図書館は皇国でも屈指の規模だそうだ。


学園の食堂は天井が高く至る所が装飾されていて寮の食堂よりずっと豪華な作りだ。

しかも、受付で食べたい料理を注文するとテーブルまでウエイターが料理を持ってきてくれる。贅沢ここに至れりだ。もう農民生活にはもどれない。


学園の右も左もわからない僕に、セレナが空いてるテーブルを探して案内してくれる。

丸テーブルは4人掛け、クラスメイトほぼ全員でずらずらとやってきたので、3つに別れる事になった。

同席するのはセレナ、ルーク、アビーだ。


メニューには美味しそうな料理が並んでいるが、よくわからないものも多い。

こう言う時はとりあえず無難なものを選ぶ。旅をした時に身につけた知恵だ。


魚系のセットメニューでいいかな?


ルークとアビーは食べるものが決まっているのかメニューなんて見ずに受付に向かうが、セレナだけはメニューをマジマジと見つめて考え込んでいる。


「悩んでるの?セレナさん。」

「うん悩んでるよ。今日の日替わり「ウッドボアのステーキ」か、「オーロラサーモンのオイル煮か」・・どうしようかなあ。」


「ウッドボアにオーロラサーモン?? 聞いたことないな」


「大貴族の子なのに知らないの? ウッドボアはエルフ族からは神獣扱いされてる貴重な猪。オーロラサーモンは特別な日しか遡上しない珍しい川魚なんだよ。私も一度しか食べたことないんだよ。そりゃ悩むよ!」


「また悩んでるのか?セレナ」

ルークが笑いながら受付から帰ってきた。


「早く決めないと次の授業に遅れるよ」

アビーも席に着く。


僕は席を立って受付に行こうとするが、セレナに袖を引っ張られた。

「待って待って。すぐ決めるからね」


・・・結局5分かかって注文した。


「もうセレナったら、カイト君を案内する時間無くなっちゃうよ。図書館覗いてみようと思ったのに」


「セレナが、悩むのはいつものことだな。そして人を巻き込むのもいつものことだ。ハハハッ」


「そうだ。聞いてもいい?? カイトはゲイルとは仲がいいの?」


アビーがゲイルのことを聞いてきた。ドレイン家なんだから気になるよね。


「いや、それが全く・・・。ゲイル兄様とはこの前に初めて会ったし・・」


「一緒に暮らしてなかったの?」

「母が皇都に住んでいたからね。お父様は皇都で沢山の女性と色々あるから、そのうちの1人だよ」


「ゲイルといい女癖が悪い血なのね。」

アビーはカイトをまじまじと見る。


「ゲイル兄様は女癖が悪いの???まだ15だよ!?」


ラノベでもまだ生徒には手はだしてないはず・・・。


「学園に来る前からゲイルの悪評は伝わってきたわよ。貴族の上流社会では有名な悪童だって。侍女をペットみたいにしているなんて噂もあるわ。」


侍女を、ペットのように・・・。 ゲーム側のゲイルはそんな感じだったらしいが・・。


「僕もドレイン家だから・・そんな風に見える??」

「いいえ、カイトはゲイルとは全然雰囲気が違う。なんだかあったかい感じがするわ。・・・褒めてるのよ。」


「そうだな!カイトはそんな奴じゃない。俺もそう思うな。今日からは友達だから仲良く楽しくやろうな」


「でも・・ゲイルも学園で実際に会った感じではそんなに悪い奴って感じはしなかったわね。

第一印象はイケメンすぎてちょっと怖い感じ。」


イケメンすぎてちょっと怖い??まあそんな感じもするかもしれない。


「そうそう、もうクラスメイトの女の子を1人メロメロにしちゃったって。

またその子がとっても可愛いくて・・それでいてなんだかカッコイイ子だったからショックだわ。。」


何にショックを受けたのかはわからないが、ラノベ知識から考えるとおそらくヨハンナだね。

ヨハンナは可愛い僕っ子だ。女の子にはカッコよく映るのかもしれない。


そんな話をしていると、ゲイルが歩いていくのが見えた。

女子生徒2人が一緒にいて食堂中央あたりまで進んで席に座ったようだ。

そのうち女の子の1人が注文をするために席を立つのが見える。


「あの子が毒牙にかかったって言われてる子よ」


毒牙って人聞きが悪い・・。

女の子はヨハンナだった。ラノベの表紙にも出てくるヒロインのうちの1人だ。


「ヨハンナよ。」

「ああ。ヨハンナだね。」


「知ってるの??」

「知らない・・・初めて知った」


「なんなのよ。もう〜。

彼女はアルムガルト伯爵の次女よ。魔法もなかなかの才能らしいわ」


「確かにとっても可愛いね」

「毒牙にかかるなんて。心配になるわ」


「ゲイルお兄様はそんなひどいことをする人じゃないと思うけどなあ。」

「ゲイルのことは何も知らないんじゃなかったかしら??・・先日あったばかりなんでしょ?」


「まあそうだけど・・。」



「もう1人はアリーチェだな。アリーチェも美人だよな。もう2人も籠絡したのか?」

ルークが話に入ってくる。


「アリーチェは水の使い手だったよな。アビーと同じ属性だろ。どんな子だ?」

「そうね。私と一緒に水属性の実習受けてるけど・・可愛らしい子って感じかしら。」


アリーチェはもちろんラノベに出てきていた。ラノベでは実際には毒牙にはかかってない。

いや、毒牙って・・。

手は出していないんだが、周りからすればそうは思わないだろう。


アリーチェは転生ゲイルの魅力という毒牙にはかかっていた。

「ゲイル様〜!」とヨハンナがいてもお構いなしにすぐ割り込んでくる子だったが、転生ゲイルの超好みと言うタイプではなく2年生の夏の時点ではアリーチェの恋は叶ってはなかった。とは言えいつでも手が出せる状態だったので、最終的にはハーレムの一員になっていたはずだと勝手に想像。




そのアリーチェを遠くから眺める・・。その顔はラノベに出てきた時のようにゲイルと一緒にいて嬉しそうにしていた。




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