第33話 初めての授業

僕のクラスは1年B組。担任教師はロビン-コーンウッド先生。風魔法のスペシャリストだ。


ロビン先生は三男坊なのに魔法の才があるってことだけで家督をついだ。だからコーンウッド家当主になる。


魔法使いは神に選ばれし使徒。

この話からもこの国ではいかに魔法が使えるということが特別視されているかがわかる。


ロビン先生と一緒に教室へ入ると教室が少しだけざわめいた。


「静粛に! 今日は新入生を紹介します。カイト-ドレイン君です。みなさん仲良くするように」


「ええ!?」「ドレイン!?」

「カイト・・きたの」「ドレインって!どういうことなんや!?」

どよめく教室。


貴族の超大物の名前が出たので当然だ。


「静粛に!!」

そう言ってロビン先生が目配せする。


「カイト-ドレインです。魔法は発現させたばかりなので上手く使えませんが、足を引っ張らないように頑張りますので、よろしくお願いします。あと・・気楽にカイトと呼んでください」


「セレナさん」

ロビン先生が女生徒の名前を呼ぶ。


「は、はい」

「今日はカイト君の指導案内役をお願いするね。昼には食堂の案内もしてやってほしい」

「わかりました」


生徒全員の注目を集める中、僕はセレナと呼ばれた生徒の隣にすわり、教壇にいるロビン先生を見る。


教室は黒板のある教壇を中心に半円形状に長テーブルと長椅子が配置され、それが階段状になっている。かなり黒板が見やすい造りだ。


「今から皇国の歴史の授業だよ。カイト君が受けてない部分は後でノートを貸すよ。」

セレナが話しかけてきた。


「ありがとう。わからない事があったら聞いてもいい?」

「もちろん。なんでも聞いてよ」


このセレナは金髪の可愛い系の子だ。ラノベでもゲイルと少し親しくなっていた。天然なやらかしキャラだったな。

ラノベの世界のキャラクターが目の前にいるなんてテンションが上がるね。頑張って農村から出てきた甲斐がある。


この魔法学園は貴族としてのエリートを育てる学校だ。魔法学園なので魔法の授業もしっかりあるけど、国語はもちろん歴史、地理、産業、計算学、皇国法、真聖教学、国際政治学(2年〜)、領地経営学(2年〜)、用兵学(3年)なども必須科目としてある。

また、剣術は必須だ。日本で言う体育の授業みたいな位置付けになるのだろう。


武術系はそのほかにも選択科目として弓術、槍術、馬術、騎兵術を学ぶことが出来る。生徒数が少ないのでこれらの選択科目は1・2・3年生合同授業になる。


魔法学は1年生は基礎魔法学。2年生後半からの応用魔法学が必須科目。

魔法を使って訓練する魔法実習も当然ある。


読み書きについては一年生の最初の2ヶ月間に集中して行われる。それ以外では夕方5限目の選択科目で選択するか自習するしかない。

読み書きやっててよかった。アルフレッドさんに感謝。



一限目の『皇国の歴史』の授業は5月から始まったのでまだ序の口だ。


今日の講義は今から2000年前の出来事についてであった。


皇国があるノーブル大陸は2000年以前には人間族は住んでおらず、平地には狼人族ワーウルフ(ワーウルフ)、山地にはドワーフ族、森にはエルフ族が住んでいた。


ドワーフ、エルフはテンプレ通りだね

人間族は何処に住んでいたかと言うと、


『南のアーブル大陸の北部にいくつもの人間族の国があった。


2000年前その人間族が住むアーブル大陸北部に大陸南部から豚人族オーク(オーク)が勢力を伸ばしてきたため、多くの人間族が二つの大陸の間にあるトラブゾン諸島を経由して移住し始めた。


そして現在のアラゴン王国の地の狼人族を駆逐した人間族はその地にイスパタ王国を建国しさらに西へ勢力を伸ばして行った。』


まあ要約するとそんなところかな。


この世界ではまだ活版印刷がない。いや文明的にはそろそろあるのかもしれないがまだ活版の印刷物を見た事がない。


だから授業に教科書はなく、本のような分厚く綴じられたノートに黒板に書かれた内容を生徒が自らインクとペンで書き写していく。


現代日本のように教科書がないのでキッチリノートに写してないとあとで困ることになるのだが、万年筆と違ってインクをつけながら書くのは結構大変だった。


一限目の授業が終わると、クラスメイト達が次々と僕に声をかけてくる。


「僕はサイモン。よろしくね。カイト君ってあのドレイン方伯の子息様なのかい?」


「ああ、妾の子だから気を使う必要なんかないからね。仲良くやってよ」


「大貴族の子息がBクラスなんて事があるんだね。」


「へぇ、あのドレイン方伯の息子にしては低姿勢ね。私はイザベル-ロンベルトよ。男爵家だから気軽にイザベルって呼んで。」


「うちはリオニーやで宿屋の娘や!イザベルはこう見えて凄いんやで」


「ああ、よろしくね」

何が凄いのかを言わないリオニーは元気そうな半狼人族の子だ。

イザベルは火魔法が凄かったはずだけど、それかな?


「よっ!俺はルーク。あのドレイン伯の息子だって言うから身構えたけど、カイトとは友達になれそうだな!昼食は一緒しようぜ」


グイグイくる白髪のイケメンな男子。

彼がゲームサイドの主人公だ。真面目で正義感の強いまさに主人公的キャラクターである。庶民上がりで体裁を気にせず気さくなのもいい。


ラノベのルークは当初は転生ゲイルともそれなりに仲良くしていた。

だけどゲイルのモテモテっぷりが、真面目で正義感が強いルークに合わなかったらしく、次第に嫌悪していく。


ルークと恋仲になりかけていたアビーがゲイルと親しく喋るようになって嫌悪が嫉妬にかわる?? くらいのところで僕はこの世界に転生してしまった・・・・。

続きが気になるが・・僕がいるこの世界ではゲイルと敵対はしないでほしいかな。


ただ、僕も転生したからには赤髪の美女アビーと仲良くなりたい。実は1番好きなキャラでもある。果たしてこれからどうなるのだろう。


「じゃあ私も一緒するよ。私はアビー。よろしくね。」

はい、大本命がセットでやってきました。ドキドキするね。




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