第30話 魔法学園
皇都ロンドアダマスには大きく分けて、貴族街、北部市民街、東部市民街、西部市民街、商業区、それと花街と呼ばれる地域がある。もちろん明確に区別されているわけではないが、歴史の中でそう自然と区分ができたのだろう。
その北部市民街の東の丘陵地に皇立魔法学園はあった。
敷地内には、南北二つの授業棟、中央棟、講堂、職員寮、学生寮、児童寮、管理棟、教師・研究者住居棟、魔法学探求棟、そして真聖教会と数多くの施設が点在している。
魔法学園はその敷地全体をとり取り囲むように石垣が組まれていて、防衛のためか門は南に一つしかない。中に入るには必ず正門からしか入れないのである。
もし有事があった際には城としても十分機能できるだろう。
季節はもう4月後半だ。魔法学園は3月初めに入学なので、2ヶ月遅れで入学する事になる。
僕たちの馬車は魔法学園の正門に乗り付け、あらかじめ用意していたドレイン方伯からの書状を警備兵に渡すと、受け取った警備兵はすぐに学園長に確認を取りに向かう。
しばらくして、門がゆっくり開く。
さきほどの警備兵が管理棟前の馬車が何十台も停められるような大きな敷地へと案内してくれた。
とうとう、夢にまで何度も見た魔法学園にきたのだ。
僕は心を躍らせつつ、ビアンカを連れ馬車から降りる。
周囲を見渡すと、西の方角に門、その奥に小さく校舎らしきものが確認できる。
ラノベではほとんどは文字しかなく学園の風景は挿絵や表紙で人物の背景にちょろっと出てきただけなので全くわからない。
わからないけど僕は「きたどー!!」と高鳴る気持ちを小さく吐き出す。
ビアンカは僕の気持ちを察したのか「ここが憧れの魔法学園か!」と僕の声を代弁していた。そう、それが言いたかったのだ。えらいぞビアンカ。
馬車を降りると先ほどの警備兵がすぐに馬車の停留場所の目の前にある管理棟の学園長室に案内してくれる。
「失礼します。カイト-ドレインと申します」
「ビアンカです。よろしく・おねがい・します?」
ビアンカはたどたどしく挨拶する。
幼いし堅苦しい場は慣れていないのだから仕方がない。
「待っていましたよ。お二人とも。どうぞそこに座ってください。」
正面のテーブル前に座る白髪が少し混じる初老の紳士に席を促されて離れた椅子に腰をかける。
「私は校長のフィリップ-ウインドインです。
ドレイン方伯からの手紙を見た時は驚きましたよ。今年入学したゲイル君と同じ歳の隠し子がいたと書かれていましたので。
しかも・・その子がこれまた凄い魔法の才を持っていると言うのですからね。」
「それがあなたですね?」
「はい。」
「ようこそ魔法学園へ。ゲイル君の弟ということでお聞きしていますが、ゲイル君との仲は良いのですか?」
「いえ、まだお兄様とはお会いしたこともございません」
「そうですか。わかりました。」
「さて、この魔法学園の事はどのくらい知っていますか?」
「魔法を発現させた者が通う、皇国の運営する学園ですね。」
「その通りです。
皇国は大魔法使いであられたグローリオン初代皇帝陛下が建国された国です。
グローリオン初代皇帝は魔法を発現できる魔法使いは神のご意志を受けた使徒として皇国を支えるべきだと述べられました。
その意思に基づいて皇国を支える優秀な貴族を育てるべく創られたのがこの魔法学園なのです。
・・・
ですので入学試験は簡単です。魔法を使ってみせるそれだけです」
校長は青い宝石のついた杖を机に置く。
「水魔法の適性があると聞きました。そこの鉢に水をあげてください。」
**********
入学試験?の結果はもちろん、問題なかった。
学生寮と児童寮への手続きも無事終わり、今日は一旦宿へ戻る。
入寮は2日後、入学は3日後の予定だ。
馬車の待機場所に戻るが、管理棟の前には、数多くの馬車が待機していて、すぐには見つからない。
「馬車多くなってる・・??」
「すごい沢山の馬車だね。カイトが魔法学園に憧れるわけだね」
「はははっ 馬車に憧れたわけではないんだけどね」
なぜかビアンカが賢い事を言っている気がする。
混雑する馬車待機場でようやくドレイン方伯の紋章を見つけたが・・・
近寄ると馬車には知らない御者が乗っていた。
「あれ?」
待っているはずのカトリーヌの姿もない。
仕方がないので、馬車の側に佇むカトリーヌではない侍女服の女性に聞くことにした。
「あの・・・これはドレイン方伯の馬車ですよね??」
「はいそうです。」
「えーと・・・カトリーヌさんは?」
「カトリーヌ?・・・。 あなたは?」
「私はカイト・・カイト-ドレインです。」
「・・・・カイト・・様でしたか。この馬車はゲイル様の馬車になります。」
「えっゲイルの!!!!」
ちょっと動揺して声を張り上げてしまった。
「カイト様!!馬車はこちらです。」
そんなところにカトリーヌがこっちを見つけて駆け寄ってくる。
「ご自身の馬車も見分けられない程の知能なのですか?」
カトリーヌは一言多い。よくドレイン方伯の屋敷で生き残れたものである・・。
でも僕はそんなカトリーヌを気に入っているけどね。
「でもこの馬車にもドレイン方伯の紋章があるんだよ」
馬車の紋章を指差す。
「本当ですね・・・・・。」
「・・・・・!!」
いつもはどんな時も表情を変えず淡々としているカトリーヌがこの時は一瞬驚きの表情を見せその後に嫌悪感を露わにする。
「久しいな。カトリーヌ」
カトリーヌの視線の先に長めの黒髪を靡かせる男が立っていた・・・。
間違いない・・・・僕が憧れていた心の師匠 ゲイルその人である。
***********
※ここまでで皇都へ向かう旅は終了となります。
学園編はウキウキワクワクとなるのでしょうか? いや、作者にそんなテクニックはございません。残念ながら(´・ω・`)
ですが、どうか読んでくださいませ!!
どうぞこれからもよろしくお願いいたします。
by作者
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