第28話 侍女
アルフレッドさんとドレイン方伯が面談した日の翌日からドレイン方伯の城に住むことになった。(と言っても2週間ほどだけど)
今日もこの街では朝、昼、夕方にありとあらゆる教会の鐘が街中に鳴り響く。
城の中にまで教会があるくらいだ。鐘の音はこの街のどんなところでも聞こえるのだろう。
大貴族というのは贅沢なもので、僕には頼んでもないのに専属の侍女が付く。カトリーヌとう二十歳くらいの黒い髪が美しい女性が僕の侍女としてやってきた。
礼儀作法もしっかり教育を受けているとのことで、貴族の仲間入りしたばかりの僕の教育係も兼ねているのかもしれない。
「カイト様、本日よりカイト様の侍女としてお世話をさせていただくカトリーヌと申します。」
「初めまして、カイトといいます・・。
その・・カトリーヌさんの方が年上ですし「様」はなくていいですよ。」
「私が年増なので「様」呼びはおこがましいと? では殿下とお呼びしましょうか?」
「いえいえ、そういう意味ではありません。カイトさんとか、カイト君と呼んでいただけると嬉しいのですが」
「主人に対して「さん」「くん」呼び・・。私に不敬罪をなすりつけて鞭打ちにでもなさるおつもりですか?」
カトリーヌは淡々と表情を変えずに返答する。
「そんな事しませんよっ!もっとフレンドリーになりたいなと。。」
「私は親密になる必要性を感じません。いえ親密になりたくはないです」
「・・・・・」
これは完全に拒否られている??
「では、まずは服を着替えさせていただきます」
カトリーヌは手に持っていた服をテーブルに置く
「これでいいよ。先日買ったばかりだし」
「貴族には貴族の服装というものがございます。さあ早く手をあげてください」
「えーと、自分で着替えるからカトリーヌさんは出ていってくれる?」
「そういうわけにはまいりません。侍女の仕事ですので。さあ早く」
手を水平にあげると、カトリーヌがガシガシ服を引っ張り上着を脱がす。
シャツのボタンを外し、シャツを脱がす。
そして・・・ズボンのベルトに手をかけ・・・・、
「いやいや!!ズボンは自分で脱ぎますので、あっち向いててください。」
「なにかイヤラシいことを想像してらっしゃるのですか?」
「そんなことありません!」
「では、」
ベルトを取り、ズボンを脱がし・・・・次はパンツに手をかけた。
「!!」えっ!パンツは流石にまずい!
僕はそれを慌てて手で止める。
「何か卑猥なことを考えていらっしゃるのですか?」
「そんなこと考えてないです!」
「ではやましいことを考えてらっしゃるのでしょうか?」
「パンツは自分で脱ぎますので、向こうを向いてください!」
「それは命令でしょうか?」
「命令です」
「・・・。仕方がありませんね。」
カトリーヌが反対方向をむくとさっとパンツを脱いで履き替える。
「脱ぎ終わりましたか?」
「履き終わりました。」
パンツを一瞬で履いた僕は、机の上にあった新しいズボンも素早く手に取ってそう答える。
「カイト様の命令は極力従うようにいたしますが、私はドレイン方伯様に雇われている身。卑猥な命令には従えませんので、ご記憶ください。」
カトリーヌは振り返りカイトに服を着せながらそういう。
「・・・・・・はい」
上質な紺色の生地に金の刺繍が入った正装になったカイトはなんだか本物の貴族のようだった。
「まるで貴族のようですよ。では夕食にまいりましょう。」
そう言ってカトリーヌは僕を食堂に案内した。
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ドレイン方伯の城は、成金じみた豪華な家具や調度品でいっぱいだ。食堂も広く豪華な装飾が施され、天井のシャンデリアには沢山の蝋燭が灯っている。
カトリーヌは食堂まで僕を案内すると、「私はここで。」と引き返してしまった。
その食堂にはドレイン方伯の妻が何人か、それに息子や娘たちが同席している。
僕が来るとドレイン方伯から家族に顔見せと紹介が行われたのだが、ほとんどの同席者は僕の事を事前に聞いていたようで驚く様子はなかった。
しかしその目は余所者を見るような険しい目をしている。
いきなりどこの馬の骨ともわからない男が次男のポジションにやってきたので当然だ。
夕食は日本で食べるフランス料理に近い凝った料理が出てきたので驚くばかりだ。
緊張しながら、その食事をいただく。
礼儀作法については簡単にアルフレッドさんから教わっていたけど、貴族の作法はわからない。
緊張の食事の後、部屋に戻ろうと立ち上がると30代の女性が12.3歳の少年を連れて声をかけて来る。
「はじめまして、ヴァルター(ドレイン方伯)の妻のカリーナと言います。この子は息子のアルベルト-ドレインです。三男、いえ、これからは四男になりますわね。フフッ」
ドレイン方伯には妻が4人ほどいて、彼女はその妻の一人だ。
アルベルトと呼ばれた少年は金髪の前髪が長く片目が隠れているが、隠れていないもう一つの目でこちらを睨みつけている。
「はじめまして、カイトです。
こんな形で突然ドレイン家の一員になってしまい、私も驚いています。右も左もわからない若輩ものですので色々と教えていただければと思います。」
「若輩ものだなんて、謙遜がすぎるわー。非常な魔法の才をもってるんでしょう?」
「いえいえ、発現したと言うだけで今の私は無力です」
「何故真聖教会の聖職者にはならないのかしら? このヨースランド教区を指導するパオロ大司教様は神に最も近いお方ですよ。パオロ大司教様の元で修道すればあなたの神から受け取ったギフトを最大限に活かす事ができるでしょうに」
「私は敬虔な真聖教徒ではありますが、魔法学園を卒業し、お父様、ひいては皇国のお役にたちたいのです。」
実際はそんな崇高な事には全く興味はない。ゲイルと共に、いや、ゲイルに弟子入りして魔法学園のヒロインたちとウハウハしたい!ただそれだけなのだがそんな事は言えない。
「パオロ大司教様に師事する事こそ皇国のため、いえ神の御心に沿う事だとおもいますわ。アルベルトは神の御心に沿いパウロ大司教の元で修道に励むと決めておりますの。ねぇアルベルト」
「お母様、コイツは神からギフトを受け取りながら神に仕えないと言ってるんですよね。外道だな。いやペテン師か?」
アルベルトが僕を睨みながら言う。
「・・・・・。コホンッ
ペテン師ではない事はパオロ大司教が一番ご存知のはずですよ。ハハッ・・ハハッ。」
ペテン師と言う言葉につい反応してしまう。ペテン師なので・・。もし嘘の母を辿られたらバレてしまう・・。
「いずれにしても、神のご意志は変わりません。いずれあなたもパオロ大司教様の偉大さに気づく時がくるでしょうね。」
そう言うと2人は礼もせず去っていく。
何だったんだ??あいつら。
アルベルトか・・。ラノベでは出てこなかったな。
まあ、原作は学園編の途中までしか読めなかったのだが・・・。
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