第27話 報告

自分でも上手くいきすぎて信じられないのだが、この大都市リブストンを含むヨースランド領を治める大貴族ドレイン方伯の息子になってしまった僕は、アルフレッドさんとアクセルさんに事情を説明するためにいったん宿に戻る事になった。


アルフレッド商会に着くとちょうど夕食が始まったところで、商会のいつもの面々が勢揃いしている。


「遅くなりました」

食事中のアルフレッドさんに声をかける。


アルフレッドさんは僕の方に振り返るが、いつもの笑顔ではなく心配そうな顔をしている。

「やあ、カイト君。食事の用意ができてますよ。どうぞ座ってください」


僕はいつもの席に座り、テーブルに揃うメンバーに小さく頭を下げる。

テーブルを挟んで正面に座るアクセルは僕が視線を合わせると目を逸らした。やはり機嫌が悪いようだ。

その隣に座るビアンカの顔も暗い。


「話があります」

アルフレッドに向かって切り出す。


「聞きましょう」

「私はとある貴族の息子だと皆さんにはお話をしておりました。

アルフレッドさんには本当の事を伝えておりましたが・・。」

頷くアルフレッド。


「この度、正式にドレイン方伯の息子として認められました。」


心配そうだったアルフレッド顔が喜びの表情に変わる。

「それは本当かい!?!? おめでとう!! いや本当に良かった!!!」


「お、お前がドレイン方伯の息子だと?」

さっきまで怒りを隠さなかったアクセルだったが、寝耳に水のこの話に驚愕の表情を浮かべている。


「ドレイン方伯って偉いの???」

三者三様の反応があった。


「皆さんありがとうございます。

正直こんなにすんなり認めてもらえるとは思いませんでした。

今後ですが・・・・(チラリとアクセルを見る)

私は魔法の才がある事がわかりました。二週間後には皇都にある魔法学園に向かいます。」

もう一度チラリとアクセルを見る。怒ってはいない。


「そしてビアンカにも魔法の才がある事がわかりました。」

「ビアンカも魔法使えるの。偉いでしょ!」

アルフレッドとアクセルは黙ってカイトを見つめている。


「魔法の才がある者は魔法学園を卒業し貴族になるか、真聖教会で聖職者を目指すかの選択をしなければなりません。

成人になる前にわかった場合ですが・・。貴族ではない場合は保護処置として魔法学園の児童寮に入るか修道院に入るかを選ばなければなりません。」

「お・・。」

アクセルが何かを言いかけるが、口をつぐむ。


「ビアンカは僕と一緒に魔法学園に連れて行こうと考えています。既にドレイン方伯の許可はとっています。

アクセルさん、こんな事になって申し訳ありません・・許していただけますか?」


「・・・・」


「ビアンカに魔法の才がある事は、正直驚いた。」

アクセルが話し出す。


「・・・・」


「そうだな。ビアンカのためを考えればそれが最善だ。

カイト。ビアンカは任せた。お前が命にかけても守れ。

それと、皇都に行く前に手合わせしてやる!」


「はい!ビアンカは必ず僕が守ります!」

「ビアンカも強くなる!カイトのあいじんにふさわしくなる!」


「ビアンカに魔法の才があった事は私も驚いたよ。魔法学園さえ卒業出来れば貴族になる。とても素晴らしい事だ。

アクセルも会えなくなる訳ではない。ここはビアンカを暖かく送り出してやってくれ」

「ビアンカはパパのあいじん。離れたくない。。」

「ビアンカ・・・俺も愛してるよ・・。」

アクセルは目を潤ませる。


「カイト君、私としてはビアンカのためにもこの街に拠点が欲しい。

拠点が出来れば皇都との取引も始まるだろう。アクセルはその護衛主任にする。」


「その件ですが、ドレイン方伯と面談の約束を取り付けました。明日の午後か明後日の午前中でどうでしょうか?」


「ありがとう!!カイト君!! いやカイト様かな??」

「カイト君でお願いします。これからも色々お世話になりますから」


アルフレッドさんの笑顔も見られたし、さあ飯にしよう!とフォークとナイフを手に取る

「あれ?僕の食事は?」


モグモグ。

ビアンカはカイトの皿を引き寄せて口いっぱいに頬張っていた。

「それ僕の、、、。」



**********


その後、セッテイングしたドレイン方伯とアルフレッドさんの面談というか商談は上手くいったらしい。


アルフレッド商会はヨースランドのワインの直接流通に参入出来る事になっただけでなく、正式にリブストンの商業組合(ギルド)に加盟できる事となり、リブストンに支店を出すために奔走している。


僕が借りた50000セルについても出世払いで構わないと言われた。

僕との縁を切りたくないからとの事。金を返しても縁を切るなんて事はしないのに。まあ、すぐには返せないですけど・・。


アクセルさんに最後の剣の特訓を受けた。いやあボコボコにされた。。もちろん本気で打たれる事はなかったんだけど、打ち身で全身がいたい。


「これで勘弁してやる。ビアンカを守れるようにもっと鍛錬を積め」

と言われた。


自分の弱さを身にしみて感じる。

もっと強くならないとビアンカも守れないし、ゲイルや学園の女子達に振り向いてもらえないぞ!と自分に言い聞かせる。


**********

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