第7話 僕は魔法が使えるのか?
ラノベ「悪役に転生したけど死にたくない」の悪役転生主人公のゲイルが皇立魔法学園に入学するまで時間があることがわかった。
後は金だ!!金を貯めれば皇都に行ける!!
いや、待てよ。
魔法学園に入学する条件のクリア。これも必須といえる。
僕はラノベの設定を思い出してみた。
皇国では魔法が使えるものは神の使徒と見做される。とても希少な存在だ。
そしてその希少な魔法が使えるものは原則二通りの道が用意される。
一つは聖職者。もう一つは魔法学園を卒業して貴族になる道。貴族の子息が魔法を使える場合でも魔法学園卒業は義務となる。
魔法使いは希少なので皇国が全力で囲い込みに行くと言う事だろう。
魔法が使えるだけで貴族になれる。たとえ田舎村出身の農民の子でもだ。
これは、そもそも皇国は敬虔な真聖教徒でもあったグローリオン皇帝が築いた国であるためだろう。
神の使徒(魔法を使う者)である貴族が国を差配すると言う理想を持っているのだから当然なのかもしれない。
とはいえ貴族が皆魔法を使えるわけでもない。
皇立魔法学園に入学するのは毎年30名程度。めちゃくちゃ少ないのである。
これだけ少なければ魔法が使えるだけで貴族の中でも出世街道まっしぐら。(多分)
なんにせよ、魔法を発現させれば、路銀を稼ぐ必要もなく魔法学園に(強制的に)連れて行ってくれるのだ。これは楽ちんだ。
設定を思い出して良かった。
そもそも魔法が使えず魔法学園にも入れないクソ雑魚などゲイルに相手にされるわけもなく、四の五の言わず魔法を発現させればいいのであーる。
そこで魔法についての設定を思い出してみる。
ラノベでも魔法の原理は全く触れられていない未知の領域だ。だから原理はわからないが、魔法を使うには古代の魔法文字「ルーン」が鍵を握る事は明確に書かれていた。
発現する魔法に即したルーン文字を魔力を伝達する素材(ルビーやサファイア等)に正確に配置して刻みそこに魔力を通す。これが一般的な魔法の発現方法である。
もしくはルーン文字を音で表して魔力を音に込めることで発現する。
音で表す。要するに詠唱ってやつだね。
ラノベではルーン文字の「文字」は書かれていなかった。「火を起こすルーン文字」などと書かれているので「文字」がいったいどのようなものかは全くわからない。
だからルーン文字が刻印された魔法具を買うしかない。
いや、しかし、宝石がついた魔法具だからね。めちゃくちゃ高そうなんですけど!!
恐らく皇都に行く路銀よりよっぽど高いのではないだろうか・・。
諦めよう。予算的に無理だ。
次は詠唱だが、このルーン文字を音で表すと言う詠唱魔法・・・・。これ、言葉では無いんだよね。
普通のラノベなら、「闇より出し漆黒の炎よ我の願いに応え敵を焼払いたまえ。ダークネスフレア!!」
などと唱えれば魔法が発現するんだろうけど、「悪役に転生したけど死にたくない」と言うラノベはそう言うのやめて「ルーン」とか言い出したのだ。
ラノベの中ではルーン文字の音は普通の言葉では無い「人には全く理解できない発音」と書かれている。
だから詠唱で魔法を使える者は魔法発現者の中でもさらに少数。そんなエリート中のエリートでもごく基本的な魔法しか詠唱では扱えないんだそうだ。
はい。これも諦めるしか無い。
「ダメやん。これあかん奴や。」
また関西弁が出てしまう。それぐらい絶望しているのだ。
一晩考えよう。
*****
一晩考えたが良い案が浮かばなかった。
母ちゃんのまずい朝食をペロリと食べたあと、トボトボと仕事をするためにいつもの小川へ向かった。
絶望感で一杯になった頭を小川の水でひやしていると、
「おはよう!今日も早いねっ」とエレナちゃんが洗い物を持ってやってきた。
「お、おはよう。。」
絶望感を漂わせながら応える。
「どうしたの??なにかあった・・? 困ったことがあるなら、なんでもお姉さんに相談しなさい」
急にお姉さん風を吹かせてくるエリナちゃんだったが、その笑顔が今の僕には眩しかった。
「エリナ。。魔法ってどうやったら使えるようになるのかな」
ボソボソとつぶやく。
「魔法!?!?」
エリナちゃんはびっくりした顔をした。
「魔法なんて神様の恩寵を受けた人しか使えないのよ。使徒様よ。使徒様。もし万が一カイトが魔法を使えたら教会がほっとくわけないわ。」
「でも、でも・・・・・。
僕は魔法を使えるようにならなければならないんだ!」
燻る心の中にある熱い思いをエリナちゃんに吐き出す。
「魔法は努力で使えるようはならないと思う。神様の御意志がないと・・・・・。でも、だったら助司祭に聞いてみるしかないんじゃないかな?」
「!!!!」
そうやん!魔法は神のご意志って設定やん!! 僕はなんでこんなにアホなんやろか!
ラノベで真聖教が出てくる部分は腐ったテロリストや暗殺者、悪魔召喚といった悪い話ばかり出てくるから、真聖教=悪。魔法=貴族と言う感じで捉えてしまっていた。
しかし、設定では魔法の発現者は聖職者になるか魔法学園を卒業して貴族になるかと言う二つの選択肢がある。
普通みんな貴族目指すでしょ。と思わなくも無いが、それはラノベ読者視点。
この国では真聖教は広く浸透していて聖職者の地位は極めて高い。
真聖教が魔法発現者を聖職者に取り込みたがっていると言う事は、魔法の発現の有無を率先して調べる事をやってくれるはず!なのだ。
「ありがとうエリナ!!」ハグッ!!
僕の横で話を聞きながら洗い物をしているエリナちゃんを引き寄せ思わず抱きしめていた。
「えっ、な、何」
恥ずかしそうな顔をして動揺するエリナ。
なんかいい匂い。
女性特有の匂いと感触に思わずこのままキスをしたくなってしまうが、そこまでの勇気はない。ヘタレなのでゲイルに憧れる僕なのだ。
ハグをやめてサッと立ち上がると僕はそのまま教会に向けて走り出した。
あっ。洗濯してない。
あっ・・・・。今日は教会は開いてない・・・・。
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