第6話 聖暦
父ちゃんに皇都に行く許可はもらったが、皇都がとっても遠い事。家には皇都に行くだけの旅の路銀が無い事。
その事実に超絶なショックを受ける。
しかしショックを受けつつ一番大事な事を忘れている事を思い出した。
「父ちゃん、今って聖暦何年何月??」
「・・・・お前、難しい言葉知ってるな。聖暦・・この国のこよみの事だな」
「そうそう。おしえて」
「年は知らん。今が何月の何日くらいかはだいたいわかるぞ。空を見てみろ」
父ちゃんが空に浮かぶ月を指差す。
夜空には月が二つ。赤い月と黄色い月が輝いているが、山の稜線に降りてきている真丸の黄色い月を見る。
「黄色い月が一回満ち欠けするのが大体2ヶ月だ。だから月が満ちはじめて満月になったら1ヶ月。消えたら2ヶ月」
ふむふむ。日本の月の約二分の一のスピードで満ち欠けするんだね。
日本の学校で習った知識があるのですんなり理解できた。
「今は新年を迎えて4回目の満月だ。だから今は7月1日か2日くらいだ。」
わかりやすい説明だった。
父ちゃんは農業のプロだ。それで正しいのだろう。
しかし「月」はわかったが聖暦がわからなければ話にならない。
「家にカレンダーないの??」
記憶ではカレンダーなど家に無いことは知っているが、日本の知識で思わず口に出してしまう。
「カレンダー??それはなんだ」
「暦を記す書物だよ。今が何月何日かを記録していくための表・・かな。それがあれば聖暦何年かも書いてあったりする」
「お前、うちが書物なんて馬鹿高いもの買えると思ってるのか!!!そもそも、お前は文字読めるのか!!」
父ちゃんはまた怒り始めた。
「あっ。。」
そもそも僕はこの世界の文字が読めるのだろうか??
「もういい!!さっさと帰って寝ろ!!母ちゃんの仕事もちゃんと手伝えよ!」
**********
次の日、僕はまた寝坊した。
ブラッドウルフの見張りをしてたから・・なんて言い訳を受け付けてくれない母ちゃんからこっぴどく叱られたのは言うまでもない。
ただ、昨日夜更かししたのは悪いことばかりではない。
父ちゃんと話ができたんだから。そして路銀がないこともわかった。
暦がわかる方法は簡単だ。文字も読めない父ちゃんに聞いたのが間違いだったのであって、知っている人に聞けばいい。それだけだ。
では誰なら知っているか?
絶対知っているのは学識がある人間。そうこの村で一番学識があると言えば真聖教会の人だ。聖職者である助司祭様なら博識なので必ず知っているだろう?
そうと決まれば教会へ出発だ。
何も持たずに外に出れば母ちゃんに怒られるので、まずは洗い物に行って、洗濯物を干して、それから水を汲みに村の中心に行く時がチャンスだ。
フフフ・・。悪い笑みが浮かんでしまった。
僕の家から村の中心まで歩いて10分ほど。
さっそく井戸がある広場近くの教会に訪れる。ここで聞けばすんなり聖暦を教えてもらえるだろう。
教会はこの村で一番大きな建物で全て木造だけど立派で目立つ。村を知らない人でもすぐに発見できる建物だ。
「・・・・・・・」
しかし僕はウキウキして訪れたのに、教会は閉まっていた。ガッチガチに戸締りされて。
お〜〜神よ。神は必要な時にいないのかと、僕は教会の前で跪き涙を流した。
そういや、バーン村は小さな村なので教会には通常は人がいない。月に1〜2回ミサが行われ、(不定期。冬はミサは無い)その時だけ助司祭様とお供の修道士がやってくるんだった。
喜びすぎてうっかりしてたよ。
ミサがある前日に準備のために修道士が村にくる。そしてミサがある事を周知する。
村人のミサへの出席率は子供と老人や病人を除くとほぼ100%らしいから皆さん信心深いことで。
*****
時は少し流れ・・ミサの日当日になった。
もちろん張り切って助司祭様に聖暦の事を聴きに行ききっちり教えてもらいました。
聖暦について尋ねると、子供なのにとても敬虔な姿勢だと助司祭様はとても感心してくれた。
・聖暦は神の最初の使徒たる英雄アーノルドが生まれた日を基準に、グローリオン皇国の初代皇帝グローリオンが定めた暦だと言うこと。
・グローリオン皇国は真聖教を国教と定めた事。
・真聖教の保護者たる皇帝が真聖教会の法皇でもあること。
などなど色々教えてくれた。まあ、ラノベの知識でだいたいは知ってたけど。
それよりもなによりも今日が聖暦何年かと言うことが最重要である。
ジャラジャラジャラジャラジャーン。
頭の中でシンバルが鳴り響く。
「今日は聖暦1093年7月21日です」
おおお〜〜〜。
と、言う事は、、ゲイルは生きてるやん!
しかもまだ入学してないがな!!まだ余裕あるでぇ!!
ふ〜〜〜〜〜セーフや!!
何故か関西弁が頭にこだまする。それぐらい嬉しい知らせだった。
僕の顔がとんでもなく酷いニヤつき顔だったのか、助司祭様が急に悪魔をみるような目つきに変わった・・・。
**********
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