第五話 帰り道

言ってしまった……つい、勢いで霧島きりしまさんに変なことを言ってしまった。ただ、謝るだけで良かったのに……


「わ、私とですか?」


霧島さんが驚きながら俺に聞く。


「え?うん、霧島さんと一緒に帰りたいなぁ…と思ったから。」


まさか、乗ってきてくれるとは思っていなかった。今までの霧島さんを考えると、謝られて速攻逃げられるとおもっていたけど……


「わ、私で良ければ……」

「え!良いの?」


まさかの返答が多すぎた。そのせいで、少しテンションが上った俺は無意識に霧島さんの手を握っていた。


「あ、ご、ごめん!」


すぐに俺は手を放す。霧島さんは下を向いてうつむいてしまったままだ。


また、やってしまった……謝ろうと思ってたのに、また嫌われるようなことをしてしまった……でも、今日は逃げられてないな。


「そ、それじゃ帰ろうか……」


気まずい状況を変えるためにそう言って俺は教室を出て歩き出す。





どう、謝ろうかな……


「きょ、今日は水瀬みなせくんたちと帰らなくて良いんですか?」


学校から出て、しばらくして俺が謝り方を考えていると霧島さんがそういった。


「みなせ……あぁ、絢斗あやとか。あいつは、今日部活だから。俺は、退院したてだからもう少し休みもらった。」


顧問の先生が安静にするように、と言って一週間の休みをくれた。


「俺は早くやりたいんだけどなぁ……」


思わずそう呟いてしまった。横の女の子に聞こえるくらいの声で。


「私のせいで……すみません…」


そう言って霧島さんがまた、うつむいてしまった。


「違うよ、霧島さんのせいなんかじゃ……」

「いえ、私のせいです。私なんかを庇ってくれたから……せきくんが……」


霧島さんがそう言ってどんどん落ち込んでしまう。


「俺さ、ずっと親父に言われて来たんだ。『女の子を守るのは男の仕事!眼の前で助けれる子がいるなら必ず守れ!』って。あのときの、霧島さんはどっちにも当てはまっちゃったから。」

「それでもぉ……」


そう言ってもなお、霧島さんは納得していないようだ。


「わ、私にお礼をさせてください!」


霧島さんが食い気味にいうので俺は迷った。


「お礼って言ってもなぁ……あ!それじゃあ、俺のこと関って呼ばないでよ。太陽たいようって呼んで!あんまり関って呼ばれることないから……」

「そ、それだけですか?」

「え?だめ?」

「い、いえ」


霧島さんは、思っていたのとは違うかったらしくかなり混乱していた。


「ん〜、じゃあ敬語もやめてくれる?」

「そんなことでいいなら……」


霧島さんは、渋々納得してくれたようだ。そして俺たちの会話が終わる頃にはアパートの前についていた。


「ついたな。」


俺たちは階段を登り、部屋の前まで来る。


今日はかなり霧島さんと仲良く慣れたような気がする。


そう、思ってドアノブにてをかけたときあること思い出した。


あ!あのこと霧島さんに謝ってない。


「霧島さん!」

「はい?」


すぐに横で部屋に入ろうとしている霧島さんに声をかける。


「あのとき、抱きついてごめん!」


――バンッ


言い終わると同時に部屋に逃げられてしまった。


「えぇ……またぁ……」


どうやら、まだまだ俺は嫌われているようだ……

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