第五話 帰り道
言ってしまった……つい、勢いで
「わ、私とですか?」
霧島さんが驚きながら俺に聞く。
「え?うん、霧島さんと一緒に帰りたいなぁ…と思ったから。」
まさか、乗ってきてくれるとは思っていなかった。今までの霧島さんを考えると、謝られて速攻逃げられるとおもっていたけど……
「わ、私で良ければ……」
「え!良いの?」
まさかの返答が多すぎた。そのせいで、少しテンションが上った俺は無意識に霧島さんの手を握っていた。
「あ、ご、ごめん!」
すぐに俺は手を放す。霧島さんは下を向いてうつむいてしまったままだ。
また、やってしまった……謝ろうと思ってたのに、また嫌われるようなことをしてしまった……でも、今日は逃げられてないな。
「そ、それじゃ帰ろうか……」
気まずい状況を変えるためにそう言って俺は教室を出て歩き出す。
◯
どう、謝ろうかな……
「きょ、今日は
学校から出て、しばらくして俺が謝り方を考えていると霧島さんがそういった。
「みなせ……あぁ、
顧問の先生が安静にするように、と言って一週間の休みをくれた。
「俺は早くやりたいんだけどなぁ……」
思わずそう呟いてしまった。横の女の子に聞こえるくらいの声で。
「私のせいで……すみません…」
そう言って霧島さんがまた、うつむいてしまった。
「違うよ、霧島さんのせいなんかじゃ……」
「いえ、私のせいです。私なんかを庇ってくれたから……
霧島さんがそう言ってどんどん落ち込んでしまう。
「俺さ、ずっと親父に言われて来たんだ。『女の子を守るのは男の仕事!眼の前で助けれる子がいるなら必ず守れ!』って。あのときの、霧島さんはどっちにも当てはまっちゃったから。」
「それでもぉ……」
そう言ってもなお、霧島さんは納得していないようだ。
「わ、私にお礼をさせてください!」
霧島さんが食い気味にいうので俺は迷った。
「お礼って言ってもなぁ……あ!それじゃあ、俺のこと関って呼ばないでよ。
「そ、それだけですか?」
「え?だめ?」
「い、いえ」
霧島さんは、思っていたのとは違うかったらしくかなり混乱していた。
「ん〜、じゃあ敬語もやめてくれる?」
「そんなことでいいなら……」
霧島さんは、渋々納得してくれたようだ。そして俺たちの会話が終わる頃にはアパートの前についていた。
「ついたな。」
俺たちは階段を登り、部屋の前まで来る。
今日はかなり霧島さんと仲良く慣れたような気がする。
そう、思ってドアノブにてをかけたときあること思い出した。
あ!あのこと霧島さんに謝ってない。
「霧島さん!」
「はい?」
すぐに横で部屋に入ろうとしている霧島さんに声をかける。
「あのとき、抱きついてごめん!」
――バンッ
言い終わると同時に部屋に逃げられてしまった。
「えぇ……またぁ……」
どうやら、まだまだ俺は嫌われているようだ……
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