第四話 謝罪

「えぇーーーー!まじか、お前……なんか羨ましい……」


 退院した次の日、学校に行って絢斗あやと霧島きりしまさんが、お隣になったことを伝えた。


「声、でけぇよ。羨ましいって何がだよ……」

「いや、だってお前隣に同じクラスの女子が住んでだろ?最高じゃん。」

「いやいや、気まずいだろ。普通に」

「そうかなぁ……」


 絢斗はかなり俺のことが羨ましいらしい。でも、俺は今かなり気まずい。朝、学校に登校するときもかなり注意した。ばったり合わないようにして周りを見ながら登校してきたので少しつかれた。


「なんで、気まずいの?」


 そう、言って日和ひよりが後ろから話しかけてきた。


「お前、気付いたら後ろいるよな。まぁ、良いけど……」


 なんで、気まずいの?か……なんでだろう…あんまり話したことないから?いや、でもなんか違うような……


 日和の問に考え込んでいると俺の頭に、あのシーンが急に頭に上がってくる。

 そう、俺が霧島さんを庇ったあの時が。


「うわぁ……あれかぁ……」

「「どれ?」」


 日和と絢斗が俺の独り言に同時にツッコミを入れる。


 今まで忘れてたけど、俺あん時助けるためとはいえ、思いっきり抱きついてんだよなぁ……もしかして、そのせいか?霧島さんがぎこちないの。もしかして、俺に抱きつかれて気持ちわるかったのか……


「な、なら、謝らないと。」

「お前は一体何をしたんだよ……」


 絢斗がそう言って俺に冷ややかな目線を向けてくるので、日和と絢斗に説明した。


「いや、流石に違うでしょ……太陽に生命いのち助けてもらってんのに気持ち悪いとは思わなくない?」


 そう冷静に言っている日和のそばで絢斗は声も出ないほどツボっていた。


「なんで、笑ってんだよ。」

「い、い、いや、だってぇ、アハハハハハ!」

「だめだ、話にならん。」


 しばらくして笑いが収まり絢斗が話す。


「ふぅ、笑いすぎてしんどい。いやぁ、だってモテてるお前が生命張って助けた娘に対して気にするとこ小さすぎて面白かった。ごめん」

「そうかなぁ……」


 どっちにしろとりあえず、今日謝りに行くか……ん?モテてる?なんか忘れてるような……


「あ!ラブレター返事するの忘れてた!」


 急に思い出したので、声に出して言ってしまった。


「おい!太陽!」


 絢斗が俺を止めるように横でうつむいてる少女を小さく指差しながら言う。


「あ、いやその日和これはだな……その、あれだよ、」

「……れ?」

「え?」

「誰?」

「なぜ、名前を聞くのですかな?日和殿……」

「見に行く。そいつが変なやつじゃないか。」


 俺と絢斗がラブレターをもらったとなるとすぐこうなってしまう。だからいつも、俺と絢斗はラブレターをもらっても日和に言わないようにしている。


「大丈夫だから、断るし。てか、なんで毎回そんなに怒るんだ?」

「それは……変な女にあっくんとたいくん取られたくないし……」

「嫉妬かぁ?」


 赤面しながら話す日和を絢斗が茶化す。


 なんだか、こいつらと話していると安心する。


「ありがとう、ふたりとも。」

「なんだよ、急に……小っ恥ずかしいこと言って。」

「いや、なんとなく。」


 俺の何気ない言葉に絢斗も赤面してしまった。


 コイツラと友達で入れて俺は幸せだ。


 その言葉は、なんとなく口には出さなかった。



 ◯



 全ての授業が終わり放課後になる。カバンの中からあのときもらったラブレターを取り出す。その裏に書かれている連絡先に連絡を入れる。


 えっと、なんて送ろうかな……

『連絡が遅くなってすみません。この度、お手紙をいただけたことは嬉しいのですが、お付き合いすることはできません。申し訳ございません。』


 めっちゃ硬いな……まぁ、いいか……送信っと。次は、霧島さんに謝らないと。


 そう思い霧島さんを探すと帰ろうとしている彼女を見つけた。


「き、霧島さん!一緒に帰りませんか?」


 すぐに声をかけなければと思い、そう言ってしまった。

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