第三話 おすそわけ

 私、霧島美月きりしまみつきのお隣さんは生命いのちの恩人でした。


 いつも通りの時間に学校を出て、一週間前に引っ越したアパートに帰宅していた。家についたので鍵を取り出そうとしていると、昨日までいなかったお隣さんが帰って来ていることに気がついた。挨拶をしようと横を向くとお隣さんと目が合う。


 せ、せ、せ、せき君!??


 その人は私のことを助けてくれた、生命の恩人だった。


「こ、こんニチハ」


 関くんも私に気付いたようで、挨拶をしてくれた。

 でも、その時の私は頭真っ白で、挨拶を返す余裕もなかった。


「ご、ごめんなさい!」


 そんな状態の私は、反射的に何に対してなのかも分からない謝罪をして部屋に飛び込んでしまった。


「はぁ……どうして……関くんを見ると逃げてしまんだろう……」


 そう考えているときに、助けられたときのことが頭に蘇る。


 あのときは、轢かれかけて、それ関くんがかばってくれて……


 あの時から、関くんの顔を見ると抱きかばってくれたシーンがフラッシュバックしてしまう。体を張って助けてくれたのに、そんなことを思い出して恥ずかしくなってる自分の気持ちが、申し訳なくて逃げ出したくなってしまうんだと思う。


「あぁ……これからどうしよぉぉ……」


 関くんが入院しているときに、何度かお礼を言いには行ったけど、もっとちゃんと関くんと話さなきゃ……


 そんな、こんなを考えながら家事をしていた。ふと時計を見ると帰ってきてから3時間がたとうとしていた。 


 もうこんな時間かぁ……あぁ……そういえば今日ご飯の食材ないや。買いに行こっと。


 近くのスーパーに買い物に行くために着替えをし家を出る準備をする。


 ん〜、眼鏡はいっか。買い物だけだし。


 家では、基本メガネを外しているので、するのが面倒になり私はそのまま家を出た。



 ◯



「ふぅ……絢斗あやとが、三人前も、もらってくれて助かった。後、三人前か……なんとか……いけるか。」


 作りすぎた後、絢斗に連絡を取り『ほしい』と言われたので、届けに行っていた。文とも一人暮らしをしていて、ご飯がなかったらしい。日和ひよりにもわけに行こうと思ったが、今日は外食しているとのことなので帰って来た。


「「あ、」」


 アパートの階段を上がり、部屋あるの階についたら俺の部屋の隣から出てきた人とまた目が合う。


 霧島さん……?め、メガネしてない……かわ…いや、と、とりあえず挨拶をしないと……


「え、えっと……き、霧島さん、こんばんは……」

「……こ、こんばんは」

「えっと……これからどこに?」


 うわぁ……なんか、今の俺、なんか気持ち悪いな……


「えっと、食材を買いに行こうかと……」

「ご飯まだなの?」

「え?はい……」

「それならハンバーグいらない?作りすぎちゃって……」


 だめだぁ…俺何故かめっちゃテンパってる…


 何故か、混乱している俺は、霧島さんに意味の分からない提案をしてしまった。


「え?い、良いんですか?」

「俺は全然良いけど……」

「じゃあ、もらってもいいですか?」

「う、うん……」


 もらってくれるんだ……


 その後、霧島さんが持ってきたお皿にハンバーグを取り分けて霧島さんに渡した。


「あれがとうございます!」

「いや、こちらこそもらってくれてありがとう。」


 そう言って俺は、霧島さんと分かれて部屋に戻った。


 なんで、俺は霧島さん見てあんなにテンパっていたんだろう……わからない。


 俺の気持ちがなんでこうなっているのか俺にも分からなかった。


 でも、ちょっとだけ霧島さんと距離縮まった……かな


 そのことが少し嬉しいということは俺にもわかった。

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