夜雨あけ僕がふらすよ天気あめ

※よさめあけ 僕がふらすよ てんきあめ


「魔女ちゃん、お休みなさい」

「お休みなさい、かっこいいドラキュラお兄さん。お菓子ありがとう! たくさんもらえたけど、お兄さんからのが一番嬉しいよ!」


「二人ともありがとう、お休みなさい」

「お休みなさい」「またね」


お隣に住むかわいい女の子。お母さんと帰って行く。

僕も、お母さんにもご挨拶。母も。

まだ寝る時間ではないけれど、お休みなさい。


今日は、ハロウィーン。


いつもかわいいあの子は、今日は魔女ちゃん。普段よりも更にかわいかった。


最初にうちに来てくれて、それからお母さんと一緒にやっぱり約束をしていた余所のお宅を回って、最後にまた、うちに挨拶に来てくれたのだ。


僕があげたカボチャのかご。


あの子が好きな、チョコクッキーをたくさん焼いてかごに入れた。実は、カボチャクッキーも入っている。


「よかったじゃないの。ドラキュラお兄さん。かっこいいって」

「……お世辞だよ」


僕は、デカくて怖くてモテない。


平均身長よりかなり高くて、余所の犬には吠えられて、お隣に頼まれて魔女ちゃんのお迎えにいった時は、念の為にと預けられた保護者用の身分証明書と魔女ちゃんからの弁護がなければ多分、通報されていた。


自覚はある。

僕のことを怖がる人を責めるつもりはない。正直なだけだ。


でも、魔女ちゃんにそう思われたらどうしよう、とは思っていて。


「お世辞、ねえ。まあ、そう思いたいならいいわよ。それより、飴、どうするの。『僕が焼いたのよりも市販品の方がいいかも』って言って、たくさん買ったやつ」


ああ、そうだった。


もしかしたら、って。

母さんが僕に勧めたドラキュラの仮装も、僕が作ったお菓子も。


魔女ちゃんに、怖いとか、嫌だとか言われたら、って。


不安になっていたのは、僕。


そうだよ、お世辞だって、なんだっていい。


魔女ちゃんが褒めてくれたんだから。


「明日、もらってもらうよ。飴の雨をふらせたら、喜んでくれるかな」


「そうね、きっと。お兄さんからなら、ね。あ、今日、夜はこれから雨だって。明日は晴れよ」


「ありがとう、母さん」


母さんは、天気予報を確認してくれた。


じゃあ、明日は天気あめを降らせよう。


かわいい魔女ちゃんのために。


喜んでくれるかな。くれたらいいな。


あれ、さっき母さんが言ってた「お兄さんからなら」、ってどういう意味かな。


……まあ、いいや。



※夜雨は夜に降る雨です。

※あめ、には雨 と飴を掛けております。

※ふらす、には振らす、と降らすを掛けました。


※参考・引用[蜂蜜ひみつ様ご著作/てんとれないうらない/第77話/天気予報/ 今日は雨/  明日は飴が/降るでしょう/ 9点]より。


怖い、デカい。

自分に自信のないお兄さん。


明日はドラキュラお兄さんから、お兄さんに戻ります。

ハロウィーンが終わっても、飴予報が現実になったら、魔女ちゃんの笑顔がお兄さんの晴れを快晴にしてくれることでしょう。


もちろん、お隣の玄関は汚しません。ビニールシートも風呂敷も、予備のカボチャのかごも持参しますよ。









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