第4話 屋台巡り
「お~…夏祭りって感じだね」
「そりゃ夏祭りだからな」
ちょっと色々あったが、俺たちは夏祭りの会場にやってきた。
「それにしても、人多いな…はぐれないようにしろよ」
ん…?俺ってもともと1人で楽しむつもりなんじゃなかったっけ…?
まあこんなところに女子高生1人置いていくのも危ないし、これでいいか。
「少し屋台巡りでもするか。夏花はどこ行きたい?」
「ん~まずは何か食べたいかな~」
「そうか。じゃあ焼きそばとかどうだ?」
「焼きそば!いいね!」
焼きそば屋台を探すか…
そう。実を言うと俺はほぼノープランでここに来ている。花火しか眼中になかった。
よって、屋台の情報なんか知らない。焼きそばの屋台があるかどうかすらもわからないのだ。
まあお祭りといえば焼きそばみたいな感じあるし…探せばあるだろ!
――――――
「すみません、焼きそば2つお願いします」
めっっっっちゃ時間かかった…!
探すのに手間取って1時間ほどかかってしまった。半分くらいは人の流れがすごかったせいだが。
そうして俺は焼きそばを受け取り、夏花にも1つ渡そうと振り返ると…
そこに夏花の姿はなかった。
多分、まだ近くにはいるのだと思うが、どうやら人混みに紛れて見失ってしまったようだ。
「っ…夏花!」
考えるより先に、俺の目は彼女を探し始めていた。
一旦この人混みから抜けた方が早いか…?
そうして、人混みのわずかな隙間を探して抜け出そうとしていると――――
ドンッ
―――――
まずい。春斗とはぐれてしまった。
これまでは屋台探しをしているだけだったからよかったが、いざ屋台が見つかって春斗が焼きそばを買いに行っていると、その一瞬の間にあっという間に人の流れに押し流されてしまい、屋台が見えなくなっていた。
早く見つけて合流しないと…!
しかし、探している間にもこの人の流れに流されていくのはよくない状況だ。一旦脱出した方がいいかもしれない。
そうして私は、道行く人に謝りながら、脱出のための道を開けていった。
しかし、その途中で――――
ドンッ
―――――
さて、俺が今置かれている現状を説明しよう。
夏花とはぐれたので人混みから脱出しようと試みたら、誰かにぶつかってしまった。
1つ不自然なのが、俺はちゃんと人を避けるようにしていたはずなのに、あんなに勢いよくぶつかってきたことだ。
しかし、そのままにしておくわけにもいかないのでそちらを見てみると、それは見知らぬ女だった。見た目からして10代か20代だろう。
「あ、ごめんなさい…って、春斗くん?」
「…?なんで俺の名前を…?」
聞いたところ、そいつは俺と同じクラスだったらしく、たまたま同じタイミングでここに来ていたらしい。
すっかり失念していた。俺の中ではクラスメートとまともに話した記憶などほとんどないので(主に夏花のせい)、そもそもクラスメートという概念自体を失念していた。
「春斗くん1人で来たの?良かったら私と一緒に回らない?」
「いや、悪い。人探し中なんだ。」
「人探し?弟とか?私も手伝うよ」
俺に弟はいない。いたとしたって弟が迷子なら多分もっと焦っている。
そのとき、俺の視界の隅に、人が避けている場所があるのを見つけた。そこには、夏花と3人組くらいの男の集団が見えた。
体格からして大人だろうか。こんな形で俺が危険視していたことが起こるとは…
「っ…!」
「?どうしたの?」
「悪い。ちょっと行ってくる。ぶつかったのは悪かった。」
それだけ言い残すと、俺はその場所まで駆け出した。
――――――
私がぶつかってしまったのは、柄の悪そうな3人組の男だった。
「あっ…すみません…」
面倒事になる前に、謝って逃げようとした。
しかし、逃げ出そうとした私の腕はとてつもない強い力で掴まれてしまった。
「おいおいお嬢ちゃん、ぶつかっといてその態度はないだろ?」
周りの人々が離れていく。この周りが目を背けていく様子… 知っている。
あの時の私も、同じような思いだった。
誰か助けて――――
「なにしてんだよ?」
あのときと同じセリフが、全く違うトーンで聞こえてきた。
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