第2話 幼なじみがヤンデレになってた件
俺と夏花の同居生活が決まってしまったわけだが、あれから1週間。
俺は、夏花と同居生活することに、早くも不安を感じ始めていた。
そう感じる理由が…
「悪い、待たせた」
この日は日直で夏花を待たせていた。
「待った」
「…?やけに不機嫌だな…どうした?」
「…別に?」
こういうときはこちらが察しなくてはいけないのが暗黙のマナー…な気がする。
とはいえ…しばらく離れていては、その心理はわからない。
というのも、高校に進学した現状こそこうだが、中学時代は各々の友人との関わりも多かったため、互いに話す機会もそうそうなかった。
しかし、高校でも同じになり、しかも昔の友人がいないとなると、必然的にここで関わることになってくる。
つまり、今の俺に夏花の心理はわからん。
こういうときはゴリ押しで聞き出してしまうのも一種の手だ。
「なぁ…本当になんなんだよ?俺がなんか悪いことしたなら謝るぞ…多分」
「多分なんだ」
まあ、こいつが長く待たせすぎたとかの理由で怒るはずがないので正直心当たりは本当にない。
「悪いこと…か」
「だって日直ってさ…」
その日直という単語が聞こえたとき、自分の中で1つの心当たりかもしれないものが出てきた。
しかし、この心当たりが的中していると怖い――――が、それと同時にあいつが同居を申し出てきた理由にも察しがつくので少しの興味もあった。
「日直のペアの子とすごく楽しそうに話してたじゃん。」
心当たり、ズバリ的中。
…仕方ないんだ。夏花以外の同級生と話せる機会なんてなかなかないから…
それと同時に、その発言がさらなる意味を持っていることも理解している。
夏花は本来あの場所にいたわけではないはずなのに、さも自分が見たかのように話している。
つまりはどこかから見られていたということだ。
なぜそんなことをしてくるのかは知らないが、普通に恐怖だ。
しかし、話には聞いたことがある。
そういったストーキング行為をしてきて対象と他の人が接触していないかを確かめるようなことをする人を『やんでれ』と言うらしい。
つまり、束縛的ななにかだろう。
なんだか異常に交友関係が全くできないのも、あいつが先回りしているのか…?
―――――――
あれから、『ヤンデレ』という言葉を少し調べてみた。
どうやら、ヤンデレもいくつかのタイプにわかれているらしい。
ちなみに、ヤンデレというのはなにやら「病む×デレ」という2つの言葉を組み合わせた造語で、性格を表すそうだ。
その割に最近のヤンデレの病み要素は少ない気がするのだが…
ともかく、ヤンデレというのは相手への愛情により暴走するみたいなものだと捉えておけばいい。多分。
ヤンデレには束縛型のイメージしかなかったけど他にもタイプがあると知ったときは意外だった。
まあとにかく、夏花はヤンデレなので気をつけなくてはいけない、と言うことだ。
しかし、中学時代に疎遠になっていただけで何故ここまで変化が起こったのか…
俺に浮いた噂が立ったことはなかったし…
とにかく、今は考えても仕方ない。俺があいつから解放される時間、すなわちお互いの入浴時間の間にようやく事態の全貌がのみ込めてきた。
……ちなみに冷静に考えなくてもこの状況は普通に考えてヤバい。
幼なじみとはいえ、女子が俺の家の風呂を使っているのだ。
幸いなことに両親はいるので変なことにはならないと思うが…
今ちょっと残念だなと思った自分が情けない。
というか、あいつの親は本当に許可したんだろうか。なんかすれ違いとか起きてたりしそうなんだよな…
とはいえ、夏花の両親については俺も割と知っている。昔から家族ぐるみの仲だったのでそことの交流もあった。
多分子供への理解は深いと思うんだが…
もしかしたら、向こうは2、3日程度のお泊まり感覚で考えているのではないかと、若干の期待と共に考えてみる。
いやしかし、夏花がそんな中途半端な説明で出てくるとも考えづらい。多分この説は無いだろう。
俺は今日も諦めてこの生活を受け入れるしかなかった…。
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