誕生日プレゼントは幼なじみ

ヨッシー

第1話 誕生日プレゼントは幼なじみ


春は出会いと別れの季節だという。




その理由は簡単で、進学や卒業などの時期だからだ。




そして俺も、新たなる出会いの季節を迎えた。




そう、高校進学だ。



まあ、あまり期待しすぎてはいけないが、高校生ともなればそんな出会いの一つや二つに憧れたりするものだ。 






そんな俺に出会いがあったかというと…



 




ない。






というか、強制的に出会いが阻まれている…気がする。






そう思うのは、今俺の目の前に立っているこいつ、天宮夏花のせいだ。






こいつは俺のいわゆる幼なじみだ。小学生の頃、家が近いからという理由で仲良くしていたのが、なぜか高校まで同じだった。





ちなみにこいつは、だいぶ明るい性格で、クラスでも目立つ方だ。だから本来もっと交流関係はできるだろうに、なぜかそういった話を一切聞かない。








こういう性格の奴は決まって誰かと話していても別の誰かに遮られたりするが、こいつはそういったことがない。謎だ。







ただ、俺にも交友関係が一切ないことから、俺がこいつに若干拘束され気味であるということがわかる。








そして今日は、この俺、天野春斗の誕生日である。






まだ夏というには少し暑さが足りない頃。桜の花が散り始めた頃に迎える俺の誕生日は、毎年、あいつが祝いに来る。







ガチャ




「春斗ー!誕生日おめでとーっ!」




「入ってきて一言目がそれかよ」





慣れた。そして親もどうせ俺には祝ってくれる友達はいないだろうという勝手な(しかし事実の)推測でそれを容認している。






ただ、誕生日を祝われて悪い気はしない。これは人間誰しも共通していることだろう。






そしてこれまた毎年恒例の、夏花からの誕生日プレゼント。






こういうのは普通日常で使えるものなのだが、こいつのセンスは少し変わっている。







なぜか毎回、ペアルックなのだ。






マグカップにしろ、Tシャツにしろ、必ずペアルックなのだ。






今年のペアルックは何になるのだろうとか呑気に考えていたら、夏花は予想外の一言を放った。






「今年の誕生日プレゼントは… なんと私でーす!」






「は?」


 



何を言っているのかさっぱり理解できない。というか、常人では理解できないだろう。





「…どういうことだ?」






「だから、私が春斗のものになるの!あ、もちろん住み込みね?」





「おう、ついにネタ切れか」





なんて、現実逃避をしてみる。







「ネタ切れだったら祝いに来ないよ?」






「おう正論だな」





「…というか、それ、お前の親は認めてるのか?」






「え?話したら笑顔で送り出してくれたよ」





それ絶対諦めの笑みだろ…





とは言わないでおく。





「おう…そうか。」







「とはいえ、うちの親が認めない限りは…」





そうだ、まだ希望はある。なんとしてもこれだけは避けなくては。




しかし、いつから話を聞いていたのか母が、


「私たちは別に構わないわよ?」



と言った。

なんでだよ。希望が一瞬で潰えた。






シンプルに詰んだ。






こうして、俺とこいつの同居生活が始まってしまったのだった。







とりあえず、『俺のもの』とかいう誤解を招くような表現はやめてほしいものだ。








誕生日プレゼントに人を選ぶのは正直どうかしてると思う。







――――――



そんなわけで、今俺は絶賛自室に引きこもって現実逃避を…







したいのだができない。







お察しの通り、すでに俺の部屋に夏花が来ているからだ。








「お前…マジでどこにでもついてくるわけ?」







「うん。そのつもりだよ」






「食費とかの生活費は?」






「おばさんが払わなくていいって言ってくれたよ」




いやそうはならんだろ。まあ高校生だからしょうがないか。







「…寝るのもここなわけ?」






「うん」






「風呂もうちのを使うわけ?」





「うん」




一緒に入るのか、なんていうことは聞かないでおく。聞かないでおけばもし言われてもすっとぼけられる。








「…登下校も同じなわけ?」





「うん」






「どんな噂立てられるかわからんよ?」






「別に構わないよ?私はもう春斗のものだし」






「とりあえずその誤解を招くような表現やめようか。少なくとも学校では絶対そういうこと言ったらダメだぞ」






「言ったら?」





「追い出す」







「わかりました絶対言いません」






本当かよ…不安だな







「いいか?念のため言っておくが、学校ではただの友達同士として接するんだぞ?」






「わかってるって」






マジで不安しかないが、今は信じるしかないだろう。






そんなわけで、史上最大の波乱を巻き起こした今年の俺の誕生日は、こうして幕を閉じたのだった。






しかし、こんな奴が近くにいるのだから、俺の今後の生活がはちゃめちゃになるのは、もはや確定事項とも言えた…

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