トラウマの真実(5/8)

 衝撃の事実を目の当たりにした僕だったが、予想していたということもあり、冷静でいられた。ただし、奴らの手元を見るまでだったが。


 奴らは手に包丁を握っていた。しかも全員が。

 僕はなぜ今まで気づかなかったのかと後悔すると同時に、とてつもない恐怖に襲われた。


 ――このままだとお父さんが殺される。


 僕は考えるよりも先に足を進めていた。

「何やってる?」

 思ったより大声が出た。僕はすぐに止めにかかろうとしていたが、遅かったみたいだ。

 僕の声を聴いた瞬間、奴らは一斉にお父さんの首元に向かって包丁を突き付けた。まるで僕が来るのを待っていたと言わんばかりのタイミングで、奴らは同時に首元を切った。

 僕は絶望した。すべてに絶望した。

 僕はどこで間違えた? どうすればよかった? 何ができた? 考えても答えは出てこないのに。そんな僕を見て奴らは笑っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る