第10話 討伐その後…新たな師匠

(くそぉ・・・左腕が治ったと思ったら今度は右腕かよ)そう思いながら項垂れてしまうオレだったがふとあることを思い立ち考える──もしかしたら左腕が治ったことでバランスが崩れているのかもしれない。(なら逆に今度は右腕から鍛え直せば良いんじゃないか!?)そう考えたオレは早速、筋トレを始めることにした。

まずは腕立て伏せからだ・・・最初は30回も出来なかったのだが今は余裕で出来るようになった・・・これも魔女さんに教わったトレーニングのおかげかもしれないなと思い感謝していた・・・。次は腹筋だ!これも難なくこなせるようになり最後には逆立ちしながらのスクワットまでできるようになった・・・ただバランス感覚が問われるので最初は少し難しかったが今では難なく行えるようになった。

そして最後に腕立て伏せを20回ほど行った後、オレは床に倒れ込むようにして横になった・・・。ふぅ・・・疲れたなぁと思っていると突然、腹の虫が鳴る音がした──そういえば朝から何も食べてなかったっけ?そう思うと急に空腹感に襲われ始めた・・・。「お腹空いたな・・・」そう呟くと同時にぐぅ〜っと大きな音が鳴り響いてしまった。それを聞いた瞬間、顔が赤くなるのが分かった・・・周りを見回すと誰もいなかったためホッとしたのだが、今度は別の問題が発生することになる・・・。

「お腹空いたな・・・」オレの腹の音を聞いていたのか誰かが呟いたような気がしたのだ。慌てて周囲を見回すと少し離れた場所に一人の少年が立っていた──彼はこちらを見て微笑んでいるように見えたが気のせいだろうか?とりあえず話しかけてみることにしたオレは彼に話しかけた・・・すると少年は嬉しそうな表情を浮かべながら口を開いた。「キミもお腹が空いているんだね!」そう言うと懐から干し肉のようなものを取り出してオレに渡してきた。

「ありがとう!ありがたくいただくよ」そう言って受け取ると一口噛った──その瞬間、口の中に肉汁が広がりとても美味しかった。あまりの美味しさにオレはあっという間に平らげてしまった・・・そんなオレを見て少年はニコニコしながらこちらを見つめている。その視線に気づいたオレは恥ずかしくなってしまい顔を背けてしまう・・・だが次の瞬間、突然全身に衝撃が走ったかと思うとオレの体は急速に成長を始めた!

「な、なんだこれは!?」慌てて自分の体を確認するも既に手遅れだったようで腕や足が伸びていき全身が大きくなっていった・・・。そして数秒後には元の体より成長してしまった・・・。

(やばい!このままでは家に帰れない!)そう思ったオレは急いでその場を離れることにした。幸いなことにオレの家は森の中にあるため周囲に人の気配は無かった・・・これなら大丈夫かと思い安心しかけた時だった──突如、目の前に巨大な生物が現れたのだ! その生物は全身を鱗で覆われており鋭い爪と牙を持ちながらこちらを睨みつけていた。そして次の瞬間、襲いかかってきたかと思うと凄まじい速さで迫ってきたのである!あまりの恐怖に身動きが取れずにいるとあっという間に押し倒されてしまい身動きが取れなくなってしまった・・・。必死に逃れようと試みるがビクともしない・・・絶体絶命だ!

(もうダメかもしれない・・・)そう思い諦めかけた時だった──突然、目の前に魔女さんが現れたかと思うとオレを押さえつけている魔物に向かって叫んだ。「やめなさい!!」その瞬間、ピタリと動きが止まる魔物・・・助かったと思いホッとした瞬間、今度は別の魔物が襲い掛かってきた!慌てて逃げようとするも既に手遅れだったらしく左腕を掴まれてしまった。

そしてそのまま持ち上げられると勢いよく投げ飛ばされた!!地面に叩きつけられた衝撃で一瞬意識を失いかけたが何とか持ちこたえることができた。だがしかし、休む暇もなく次々と襲い掛かってくる魔物たち・・・オレはもうダメかと思ったその時だった──魔女さんがオレの目の前に立ち塞がり両手を広げて庇ってくれたのだ!

「逃げて!!ここは私が食い止めるわ!!」そう言うなり呪文を唱え始める彼女だったが数体の魔物が一斉に飛びかかってきてあっという間に吹き飛ばされてしまった。それを見たオレは思わず叫んだ!

「やめろぉぉぉぉっ!!!!」次の瞬間には体が勝手に動いていた・・・気がつくとオレは彼女に覆い被さる形で倒れていた・・・。どうやら咄嗟に彼女を庇ったらしい・・・。(良かった・・・怪我はないみたいだ・・・)そう思った瞬間、視界がぼやけてきて意識が遠のいていくのを感じた。(オレ・・・死ぬのかな?)そんなことを思いながらオレは意識を失った・・・。

そして気がつくと目の前には見知らぬ天井が広がっていた──ここはどこだろうと思っているとドアが開き一人の女性が部屋の中に入ってくるのが見えた。その女性はオレに気がつくと駆け寄ってきたかと思うと嬉しそうな表情を浮かべながら話しかけてきた。「良かったわ!目が覚めたのね!」それからしばらくして落ち着きを取り戻したのか女性は改めて自己紹介を始めた。

彼女の名前はリンカというらしい──話を聞くとここは彼女の自宅兼診療所でありオレはここに運び込まれたのだという・・・どうしてここにいるのか尋ねると彼女はこう答えた

「森の中で倒れているところを偶然見つけたのよ」どうやら彼女がオレを助けてくれたようだ──お礼を言うと突然、お腹が鳴ってしまい赤面してしまった。すると彼女が笑いながら食事を用意してくれたので有り難く頂くことにした・・・。そうして食事を終えた後、リンカさんがオレに質問をしてきた。

「ところで、どうしてあんな場所にいたの?」

(そっか・・・オレのこと話しても大丈夫かな?)

森の魔女のとこでやっかいになっていて魔法を教わっていた。

最初は驚いた様子だったリンカさんだったが意外にもあっさりと信じてくれたようだった。それどころか同情してくれたのか優しく抱きしめてくれた・・・。温かくて心地良い感触に包まれているとなんだか安心感を覚えてしまい眠くなってくるのを感じた・・・だがそんな眠気を吹き飛ばすかのように大きな音が響き渡った!

「あっ!」どうやらオレの代わりに彼女が自分のお腹を鳴らしてしまったようだ・・・恥ずかしそうにしている姿がとても可愛らしかった。

「そういえばまだ自己紹介がまだだったわね・・・私はリンカ、見ての通り薬師よ」そう言いながら手を差し出してきたので握手を交わした。すると彼女は真剣な表情で話を聞いてくれた後、こう言ってくれた──「もし良かったら私の家に住まない?」思いがけない提案に驚くオレだったがすぐに返事をすることができなかった・・・。なぜなら彼女には迷惑をかけてしまうと思ったからだ・・・。しかし彼女の真っ直ぐな瞳を見ていると断ることなんてできなかった・・・だからオレは彼女の提案を受け入れることにした。森の魔女には私の方で治療のために暫くは診療所に泊まると言ってくるね。

こうしてオレとリンカさんの奇妙な共同生活が始まったのだった── それから数日間は平穏な日々が続いた・・・というのも彼女が外出することは滅多になく家に引きこもって薬を作ってたからだ・・・だがそんなある日のことだった。いつも通り朝食の準備をしていると突然、家のドアが開き一人の女性が入ってきてこう言った。「ここが薬師リンカの家ね?」

突然のことに驚きながらも警戒するオレだったが彼女は笑みを浮かべながら話しかけてきた。どうやら敵意はないようでホッとした反面、疑問に思ったことがあったので尋ねてみることにした。

「あの・・・あなたは誰ですか?」

すると彼女は微笑みながら自己紹介を始めた。彼女の名はソフィアといいリンカさんの古くからの友人だということが分かった。

その後、ソフィアさんはリンカさんと何やら話し始めたのだがオレにはよく聞こえなかった・・・。しばらくして話がまとまったらしくソフィアさんがこちらを振り向いたかと思うとこんなことを言ってきた──「貴方を私の弟子にしてあげる!」いきなりそんなことを言われても困ってしまう・・・だが断るわけにもいかず結局、承諾することにしたのだった。それからというものオレはソフィアさんに魔法を教えてもらうことになったのだがこれが想像以上に大変だった・・・。

魔女の森の魔女は基本を教えなかったようね「まずは基礎から学びなさい!」と言われて始まったのは魔法の基礎知識を教えるというものだった。最初に教わったことは魔法の発動方法についてだった。どうやら魔法を使うには詠唱と呼ばれるものを唱える必要があるらしい・・・ただ、その詠唱というのは自分で考える必要はなく、自然と頭に浮かんでくるものだということが分かった。

次に教わったのは魔力の扱い方についてだ──魔力というのは生き物なら誰でも持っている力でありこれを制御することで様々な現象を引き起こすことができるそうだ。例えば火を出したり風を起こしたりと様々なことができるらしい・・・ちなみに魔力というのは体力に近いもので使いすぎると疲れてしまうのだという。

それから魔法の属性についても教えてもらった──魔法にはいくつかの属性があり、それぞれによって効果が異なるらしい・・・。例えば水や氷といったものを生み出す魔法は水属性の魔法ということになり、炎や雷を操るものは炎属性の魔法を使えるとのこと・・・他にも地や風といったものも存在しているそうだ。これらの属性を上手く組み合わせて使うことで様々な現象を起こすことが出来るという・・・ただし、組み合わせるというのは想像以上に難しいもので相当な経験と鍛錬が必要なのだそうだ・・・。

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