第7話 魔女の森

森の中に入ると早速、薬草を探し始めることにした──しかし中々見つからずに苦戦していたが、それでも諦めずに探し続けた結果、ようやく見つけることが出来た。

(やった!)喜び勇んで手を伸ばすと突然背後から声を掛けられた──振り返るとそこには見知らぬ女性が立っていた。「あら? あなた……こんなところに何の用なのかしら?」女性は妖艶な雰囲気を漂わせながら微笑んでいた。

「あなたは……?」オレが尋ねると彼女は微笑みながら答える。

「私は魔女よ」

(え……?)一瞬、理解が追いつかなかったが彼女が何か呪文を唱えた瞬間に意識が遠退いていく──そしてオレはその場に倒れ込んでしまうのだった。

目が覚めるとそこは薄暗い部屋の中だった──起き上がって周囲を見渡すと鉄格子のようなものが見える……どうやら牢屋の中に閉じ込められているようだ。

(ここはどこなんだ……?)困惑していると不意に足音が聞こえてきた。視線を向けるとそこには先程の女性が立っていた。「あら? お目覚めかしら?」彼女は楽しそうな笑みを浮かべながら近付いてくると言った。「ごめんなさいね、少し手荒な真似をしちゃったみたいで……」申し訳なさそうに謝る姿を見てオレは慌てて首を横に振る。

「いえ、大丈夫ですから気にしないでください」そう言って笑いかけると彼女も安心したような表情を浮かべた。「それなら良かったわ……ところでどうしてあんな森にいたのかしら?」

その問い掛けに対してオレは正直に答えることにした──すると彼女は納得したように頷くと言った。「なるほどね……」そして少し考えるような仕草を見せると続けて話しかけてくる。

「ねえ、もしよかったらなんだけど……私の弟子にならないかしら?」突然の提案に戸惑ったが、それでも悪い気はしなかったので承諾することにした。

すると彼女は嬉しそうに微笑んで言った。「ありがとう! それじゃあ早速、修行を始めましょうか!」

(え……?)戸惑うオレをよそに彼女は呪文を唱え始める──その瞬間、オレの身体の中に何か熱いものが流れ込んでくるような感覚を覚えた。

(これは……魔力か?)驚いていると今度は別の呪文を唱え始める──それと同時に激しい痛みが全身を駆け巡った。まるで身体を引き裂かれるような激痛に耐えられず絶叫を上げるが、それでも彼女は容赦なく呪文を唱え続けた──やがて力尽きたように倒れ込むとそのまま意識を失ってしまったのであった……。

気がつくとオレはベッドの上に横になっていた──周りを見るとそこは簡素な部屋であった。

「あら、気がついたみたいね」そう言って部屋に入ってきたのは先程の女性だった。彼女は笑みを浮かべながら近付いてくるとベッドの側にあった椅子に腰掛けた。

(さっきのは夢だったのか……?)そう思って自分の身体を確認するが特に変わったところは見られないようだ……どうやら本当に夢を見ていたらしい。そう思った時、ふと疑問が浮かんだので質問してみることにした──彼女が何者なのか気になったからだ。すると彼女は微笑みながら答えてくれた。「私は魔女よ」

(えぇ!?)

心の中で叫ぶ──どう見ても普通の人間にしか見えないのにまさか魔女だとは思いもしなかった。しかし、そうなると気になることがあったので質問してみることにした。

「あの……もし良かったらですけど、魔法を教えていただけませんか?」思い切って頼むと彼女は少し考えた後で言った。「そうねぇ……あなたに覚悟があるのなら教えてあげてもいいわよ?」

(覚悟?)言葉の意味がよく分からなかったがそれでもオレは頷いて答えた。「はい! お願いします!」すると彼女は笑みを浮かべた後に言った。「それじゃあ早速始めましょうか」そう言って立ち上がると部屋の奥にある扉を開けて手招きしてくる──どうやら付いて来いということらしい。

オレは緊張しながら彼女に続いて部屋に入るとそこは広い空間になっており、中心には大きな魔法陣のようなものが描かれた祭壇があった。「ここは……?」オレが尋ねると彼女は説明してくれた。「ここは私の工房よ……ここで魔法の修行をするの」そう言うと彼女は呪文を唱え始めた──すると次の瞬間、突然辺りが真っ暗になったかと思うと床から無数の手が伸びてきてオレの身体を摑みかかってきたのだ!慌てて振り払おうとするが次から次へと伸びてきて絡みついてくるため身動きが取れなくなってしまう。

「きゃああ!!」悲鳴を上げるオレに構わず、彼女は呪文を唱え続けた──そしてしばらくするとようやく手が離れてくれたが、今度は全身を締め付けられるような感覚が襲ってきたので必死になって抵抗していると突然、目の前に鏡が現れた──そこには自分の姿ではなく別のものが映し出されていた。

(これって……オレなのか?)呆然と見つめていると今度は頭の中に直接声が聞こえてきた。『さあ、そのまま進んで行くのよ……』まるで催眠術にでもかかったかのように彼女の言葉に従い、ゆっくりと前に進んでいく……そして魔法陣の中心まで来た時に、ふいに頭の中に声が聞こえてきた。『汝よ、我と共に永遠なる快楽を貪る覚悟はあるか?』

「え……? それってどういう……」オレが戸惑っている間にも頭の中の声は語り続ける。『汝が欲するならば与えよう……永遠の命と若さを……』その言葉を聞いた瞬間、オレの中で何かが弾け飛んだような気がした──気がつくとオレは首を縦に振っていたのだった。すると周りを取り囲む無数の手が私を包み込み始めた──まるで母の胎内にいるかのような安心感を覚えながらオレは目を閉じた──そして気がつくと目の前には美しい女性が佇んでいた。

「あなたは?」オレが尋ねると彼女は微笑みながら答えてくれた。「私は魔女よ」

(あ、さっきの人だ……)そう思うと同時に先程のやり取りを思い出して赤面してしまうが、そんなオレを余所に彼女は話を続けた。

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