第6話 新たな依頼

それから数日間はギルドの依頼をこなしながら過ごしていたのだが……ある時、街を歩いていると偶然にもサランと出会った。彼女はオレの顔を見るなり不機嫌そうな表情を浮かべると言った。「……あんた、よく会うね」

「そうかもな……」オレが苦笑しながら答えると彼女の方から話しかけてきた。「まあ、いいわ……ところで最近、ギルドに入ってきたっていう新入りだけど、どう思う?」

「どうって言われてもな……別に普通だと思うぞ」オレは少し考えた後で答える──何しろまだ会ったことすらないのだから印象も何もあったものではない。

「ふーん……そうかい」そう言うとサランは去って行った。その後ろ姿を見つめながらオレは首を傾げる──彼女の質問の意図がよく分からなかったからだ。

(何だったんだ、一体?)疑問に思ったものの考えても仕方がないと思い直したオレはそのままギルドへと向かう事にした。

依頼をこなした後で酒場で食事をしていると、マスターが話し掛けてきた。「お前さんも最近は頑張ってるようだな」

「そうですか?」オレは苦笑しながら答える──正直、自分でも実感はないのだが周りから見るとそう見えるのかも知れない。「ああ……それに冒険者ランクも順調に上がっておるしな」

そう言われて改めて自分の冒険者カードを確認する──そこには『Eランク』と記載されていた。サランに続いてギルドに入ったばかりなのにオレも一気にランクが上がったのだ。

(まあ、それもこれも仲間達のお陰だな)心の中で感謝の言葉を述べると、オレはマスターとの会話を続ける事にした。「ところでマスター、ちょっと聞きたいことがあるんですけど……」オレがそう切り出すと彼は怪訝そうな表情を浮かべる。「何だ?」

「実はオレ……ギルドに入ったばかりなんですけど、どうしても外せない用があってパーティーから抜けようと思うんですよ」

「……ほう、つまりお前さんはソロで活動するってことか?」マスターは興味深そうに見つめてきたのでオレは頷いた。

「まあ……そんな感じですかね」

(本当は仲間がいるんだけど……)心の中で呟く。すると彼は顎に手を当てて何やら考え込んでいる様子だったがやがて口を開いた。

「ふむ……それなら丁度良いかもしれんな」そう言うと一枚の依頼書をカウンターの上に置いた──そこには『薬草の調達』と書かれている。それを見てオレは首を傾げた。

(どういう事だ?)不思議に思っているとマスターは説明を始めた。「この依頼書には書いてある通り、ある森で採れる薬草を採りに行って欲しいという依頼なのだが……実は最近になって魔物が出没するようになりましてな」

「え!? そうなんですか!?」

(初耳だぞ……)驚くオレに対してマスターは淡々とした様子で話を続ける。

ああ、お前さんも知っているかも知れないがここ最近になって魔物の活動が活発になっているのだ──そこでお前さんにはその森へ行って薬草を採りに行って貰いたいのだが……」マスターの話を聞きながらオレは考え込んだ──つまりこれはチャンスなのかも知れないと思ったからだ。何しろパーティーから抜ければしばらくはソロで活動することになり、そうなれば必然的に高難易度の依頼を受けることになるだろうからだ。

「分かりました、やりますよ」そう言ってオレは依頼書を手にとってカウンターから立ち上がった──そしてそのまま酒場を出るとギルドを後にしたのだった。

(待ってろよ……必ず強くなって帰って来てやるからな!)心の中で呟くと気合を入れると森に向かって歩き始めた──目指すは『魔女の森』と呼ばれる場所だ。そこには強力な魔物が生息しているという噂もあるが……今のオレならきっと大丈夫なはずだと信じることにした。

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