第5話 新たな仲間

闘技場から去るとサランとルウナさんが待っていた。サランは少し不満そうな表情をしていたが、ルウナさんは満足そうな笑みを浮かべているように見えた。「いや、本当に凄いわね」彼女はそう言うとオレの方を見て言った。「まさかこんな短時間でサランを倒すなんて……正直ビックリしたわ」

「ありがとうございます!」オレは素直に礼を言う──自分でも信じられないくらいの強さを手に入れたと思う。これも全て仲間達のお陰である事は言うまでもないだろう。

その後、サランに対して視線を向けると彼女はバツが悪そうな表情をしていた。オレが見ている事に気付いたのか視線を合わせないように顔を背ける。そんな彼女に向かってオレは笑顔を浮かべながら言った。「今回はオレの勝ちだな……でも次やったら分からないからな?」そう言うと彼女も同じように笑って答えた。「……ああ、その時はまたお手柔らかに頼むよ」

その言葉にオレは満足すると改めてルウナさんの方を見た。「それで……オレに頼みたい事って何ですか?」オレが尋ねると彼女は真剣な表情になって言った。「……実はあなたには冒険者を辞めて欲しいの」

(え?)予想外の言葉に戸惑っていると彼女は更に続けた。「あなたはこれからもっと強くなっていくわ……それこそ私やサランなんてすぐに追い抜くくらいにね──だけど、それだけじゃない……これから先、強敵達と戦うことも増えてくるでしょう……そんな時、もしあなたが死んでしまったらと思うと心配なのよ」

彼女の言葉に胸が締め付けられる思いがした──確かに彼女の言う通りかも知れないと思ったからだ。だがそれでもオレは自分の意志を伝えようと口を開いた。「でも……オレは冒険者を辞めるつもりはないですよ」そう答えるとルウナさんは困ったように眉尻を下げる──それを見て罪悪感を覚えずにはいられなかったが、それでも折れるわけにはいかなかった。

「どうしてそこまで冒険者に拘るの? あなたくらいの実力者なら引く手数多のはずよ? それなのに……どうしてそこまで固執するの?」

彼女の問い掛けに対してオレは迷いなく答えた──「確かに冒険者を続けることはリスクが高いかも知れません……だけど、それでもオレには守りたいものがあるんです」オレがそう言うと彼女は黙って聞いていた。

「それはこの国に住まう人々であり、そして仲間だと思っています」そう答えるとルウナさんは複雑な表情をしていたがやがて諦めたように溜息を漏らした。「……分かったわ、そこまで言うなら仕方がないわね」そう言って彼女は微笑むと手を差し伸べてきた。

「これからよろしくね、アルフ」

その言葉にオレは笑顔で応えると彼女の手を握り返した──こうして新たな仲間が増えたのであった。

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