五日目 金曜日
第20話 罰とベルヴェデーレ宮殿
全身
ホテルのビュッフェは素通りし、街に出てカフェを探すことにした。罰が必要なのだ。頭痛と倦怠感を抱えた
最初に飛び込んだカフェで、アプフェルシュトゥルーデルを頼んだ。刻んだリンゴをパイ生地で
となれば甘さに関しては折り紙つきだ。ふんだんにかかった粉砂糖、さらにはホイップクリームが皿を埋め尽くしている姿も禍々しい。覚悟を決めて、ナイフを入れる。断面からシロップ漬けのリンゴがたっぷり零れ落ち、甘い匂いに鼻を
さくさくの生地に、リンゴはしっとり。舌のうえで
夕方のフライトまでは時間がある。今日はすこし足を延ばして、昨日廻れなかった名所を見て回ることにした。
此処でも移動はトラムが便利だ。プラハと同様、時間制のチケットに打刻し懐中に忍ばせておけば、その時間内は何度乗り降りしようと自由。降りる駅を正確に知らなくとも、思いたったら其処で降り、気が済んだら
地下鉄とトラムを乗り継いでベルヴェデーレ宮殿へ。複数路線が交差する路上駅で、番号を確かめながら乗車すると、鉄錆が匂いそうな年代物の車輛が明るい町並みを
門を入って直ぐ目にするのは宮殿を横から望む、
ナポレオン戦争後のウィーン会議で華やかな饗宴の舞台となったこの宮殿は、今は美術館となって様々な名品が展示されている。中でも世紀末象徴派の作品群が自慢らしく、クリムトの『接吻』が目を惹く。その耽美で退廃的な作風は中欧から欧州各地へ伝染し一世を風靡したが、
外へ出て、正面から宮殿の全景を望んだ。前にひろがる泉に空の青が映る。庭園の緑は今を盛りと萌えあがり、青と緑とで左右正対称の白い宮殿を
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