第16話 車窓
と、プラハへ向かうらしい高速列車とすれ違った。音も衝撃もたいして感じなかったのは二重窓の力か、整備が良いおかげか。この路線はオーストリア国鉄とチェコ国鉄の双方が乗り入れ、共同で管理しているのだが、共に技術力には歴史と定評のある国だ。
通過駅には遠足にでも行くのか、小学生の集団が立っている。
窓から見るレールは畑の中を走る間は単調な直線だったのが、駅が近くなると途端に動きが
やがて二つめの停車駅に着いた。無個性のビルが整然と並ぶ街の姿は如何にも無個性だ。半世紀に
再び走り出した列車の窓から見える工場群は比較的新しく、最近築かれたものと見える。上下段に自動車を載せた貨物列車がゆっくり走り、レールのそばでは雛菊が揺れている。ウィーンまでの
プラハとウィーンとの間の列車を、カフカも胸を
車内にはモニタ画面があり、速度や次の停車駅の情報が示されている。ウィーンまでの旅は約四時間、途中で停車する駅の数は片手に足りない。
スナックを載せたワゴンが通り過ぎたあと車内放送が、食堂車が営業していると告げた。
「行きますか?」と訊ねるダヌシュカさんはもう立ち上がっている。座席に荷物を置いたまま食堂車へ向かった。
豪華な食堂車ではない。カウンターと十ほどの座席が配置された明るい車内は、ちょっと小綺麗なフードコートといった風情だ。メニューにはチェコ料理やオーストリア料理もあるが、ライトな車内の雰囲気に合わせサンドウィッチを択んだ。イギリス生まれの機能的な料理は、チェコのフレビーチェクを思い出させる。
窓の外には、山一つを崩すかの勢いで斜面が削られている石切り場が遠く見える。青い空には綿菓子をちぎったような雲。一面緑の絨毯を
貨物車が大量に置かれて、まるで車輛の墓場のようだ。
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