第2話 8月の第4木曜日
「優作〜!」
バスに乗ってきた日比野にふざけてそう言うと、ちょっとだけ照れたようにオレの隣の吊り革に小さく掴まった。
「伊藤のそういう自由さが、ボクにはちょっと羨ましいよ」
「オレの天才的な読み通り、やっぱり日比野はまたこの日、この時間にバスに乗ってきた。オレの天才的な読み通り」
「ただの全体会議だよ」
久しぶりに会えた日比野にオレはテンションが上がっていた。でも、日比野もオレに笑顔を向けてくれて、それがオレにはたまらなく嬉しかった。
「ていうか、日比野、こうもクソ暑いのにYシャツにベストまで着て暑くないの?」
日比野は先月と同様に、綺麗に磨かれた靴に上下グレーのストライプのスーツを着ていた。背の高さも相まって、正直バスの中全員を見回してもまず間違いなく目立っている。
「いや、暑いよ」
「いやなんでだよ」
どうやら日比野にとってはYシャツは下着らしい。その後スーツの歴史について語られた。普通に面白かった。
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