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「頼もしいコンビの誕生ね。木葉君、少しアレンジ教えてあげようか。やってみる?」
「はい、お願いします」
早苗さんは木葉君を教室に連れて行き、様々な花器を並べ、花材の茎で花留めをする方法を教えている。
店長は事務室で仕事をし、桃花ちゃんは店頭で接客をしている。
私は葉子のことが気に掛かり、仕事に集中出来ない。店長が花束を抱え事務室を出てきた。
「華ちゃん、この花束配達してくれる? 今日はそのまま直帰していいから」
「配達ですか?」
店長から渡された花束は、アガパンサスやトルコギキョウ、ネリネやスイトピーの淡い花色と小さな葉のグリーンを合わせた花束。
自己主張せず、派手ではなく、見ていると心が和む。
「あの配達先は?」
「配達先は華ちゃんの義姉さんの病院。華ちゃん、ご家族とちゃんと話し合った方がいいよ」
「店長……。お気遣いありがとうございます」
私はエプロンを外し、事務室のロッカーからバッグを取り出し、店長から花束を受け取った。
「お言葉に甘えてお先に失礼します」
「お疲れ様」
「椿さんお疲れ様でした」
店長やみんなの優しさがとても嬉しかった。でもその反面、とても怖かった。
葉子に逢うことも、兄に逢うことも、両親に逢うことも、怖かった……。
葉子の掛かりつけ医は確か、TAZAWA総合病院だったはず。目黒のTAZAWA総合病院に問い合わせると、やはり産婦人科病棟に入院していた。
目黒駅からタクシーでTAZAWA総合病院に行き、救急入口から入る。受付で病室を聞き、エレベーターで病棟に向かった。
―産婦人科病棟五階―
葉子の病室は501、ドアをノックすることを躊躇しているとドアが開いた。
病室から兄と母が出て来た。
「華……」
「華、どういうつもりだ。葉子はショックから憔悴している。帰ってくれ」
「葉子さんに逢わせて……」
「こんな花束を持って、嫌がらせか!」
兄は花束を奪うと、病棟の床に投げつけた。
スイトピーやトルコギキョウの白い花びらが床に散らばる。
兄はさらに花束を土足で踏みつけた。
「兄さん! やめて! 花に罪はないわ! 花だって生きてるのよ」
「やめてだと! お前は人の命を殺めたんだぞ! こんな花がなんだ!」
兄は何度も何度も花束を踏みつけ、私に背を向けてエレベーターに向かった。
私は泣きながら、グシャグシャに潰された花を拾い集めた。
「華……。今はまだ早いわ。葉子ちゃんがもう少し落ち着いてからにしなさい」
「母さん、私は本当に突き飛ばしていないわ」
「華、もうそんなことはどうでもいいの。葉子さんは流産してしまった。赤ちゃんはもういないのよ」
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