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「年の差恋愛がどうかしたの?」


「前社長と小林さんの噂、本社でも聞いていて。小林さんの出世って、女を武器にして勝ち取ったものだと思っていたんですけど。小林さんって、厳しいけど実力もあるし、言ってることは正論だし。噂とは全然違っていて……」


「噂なんて信じてはダメだよ。早苗さんは実力で役員になったの。女を武器になんてしてない」


「ですよね。前社長は再婚されたし、そんな噂は関係ないですよね」


「そんなこと気にしてたんだ」


「いえ……本当は……、違うんですけど」


 桃花ちゃんは恥ずかしそうに、視線を伏せた。


「もしかして、桃花ちゃん誰かに恋をしているの?」


 年の差って……。

 まさか店長!?


「椿さんは口固そうだし、お姉さんみたいだから、相談に乗って貰えますか?」


「私なんて、相談に乗れるほど恋愛経験ないから」


「あの、木葉君なんですけど。彼女いるのかな」


「木葉君?」


 年の差って、桃花ちゃんより二歳年下なだけ。さほど年齢差はない。


「カラオケで『年上が好き』って言ってて。それから急に気になりだして」


 可愛いな。

 桃花ちゃんは木葉君に恋してる。


 イケメンで優しくて、爽やかな好青年。

 時々刺激的なセリフもいうけど、そこもまた可愛い。


 私がドキッとするんだから、若い桃花ちゃんが恋をしても不思議はない。


「凛子ちゃんと仲がいいですよね。付き合ってるのかな」


 凛子ちゃんと?

 それはナイよ。


 だって凛子ちゃんは社長と。


 あーー……。

 完全に自己嫌悪だ。


 鬼畜社長のマンションに転がり込むなんて、地獄に落ちたも同然。


「木葉君はいい子だよ。多分彼女はいないと思う。凛子ちゃんとは単なるバイト仲間だよ」


「良かったあ。ベテランの椿さんから聞いて、安心しました」


 ベテランか……。ちょっとグサッときた。嬉しいような、悲しいような。年齢だけ重ね、目標は早苗さんだけど、今の私はその足下にも及ばない。


 ◇


 ―銀座店―


「おはようございます」


 店長と目が合った。かなり気まずい。


「おはよう。早苗さんは本社で会議があり午後から出社だから。午前中は少し忙しいけど、宜しくお願いします。華ちゃん引き継ぎの件だけど、事務室でちょっといいかな?」


「はい」


「桃花ちゃんは外回りの花を準備して」


「はい」


 店長と私は桃花ちゃんを店頭に残し、事務室に入る。事務室のドアを閉める直前、店長は桃花ちゃんの様子を確認し用心深くドアを閉めた。

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