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社長に連れられて、玄関フロアに一歩足を踏み入れたら、目の前にはホテルの披露宴会場ではないかと思えるくらいの広いリビングルーム。
窓の外は広いバルコニー、ベンチや観葉植物もあり最高の景色だ。
「ご主人様お帰りなさいませ」
一人の若い女性が私の目の前に現れた。ピンク色のメイド服を着用し、髪を二つに結び、黒い眼鏡を掛けている。
社長秘書、檀ゆりとは明らかにタイプの異なる女性。しかもアニメの声優のような声をしている。
「あんず、彼女をゲストルームへご案内しろ」
「はい、ご主人様。お嬢様、こちらへどうぞ」
あんずと呼ばれたメイドは私をゲストルームへと案内した。
「こちらでございます。室内は約十二畳、ミニキッチンとバス、トイレつき、ダブルベッドとドレッサー、テレビ、クローゼットが設置されています。何か不足なものがございましたら、お申し付け下さい。すぐにご用意致します」
「いえ、そんなに長くお世話にはなりませんから。あの……あなたは……」
「わたくしは
「住み込み?」
この部屋に社長と二人きり?
だとしたら、本当は社長のセフレ?
檀ゆりや凛子ちゃんと肉体関係のある社長、手当たり次第身近にいる女性に手を出す男だ、きっと彼女にだって……。
ていうか、女性の許容範囲広すぎ。
社長は誰でもいいの?
でも彼女が住み込みでここにいるなら、私はある意味安全かも。
「住み込みですか。社長とはお付き合いは長いのですか?」
「お付き合い? わたくしはメイドでございます。こちらでは一年働かせていただいています」
「男女の……お付き合いは?」
「お嬢様、滅相もございません」
「私はお嬢様じゃないわ。フラワーショップ華corporationの社員なの。単なる社員、椿華です。宜しくお願いします」
「宜しくお願い致します。社長が女性をこちらに連れてこられたのは初めてだったので、てっきりご婚約者様かと……」
あの社長がここに女性を連れ込まない?
嘘でしょう?
「この最上階のフロアにはメイド専用ルームと、社長の専属運転手専用のルームがございます。以前は社長秘書専用ルームもありましたが、秘書の方はご結婚され今は空室となっております」
檀ゆりは結婚前まで同じこのフロアで暮らしていたんだ。
もしかしたら、同じフロアで暮らし社員の目を誤魔化すために、秘書専用ルームを作ったのかも。
「檀さんはこちらに宿泊されることは?」
私、何バカなことを聞いてるのよ。
「いえ、転居後は一切ございません」
そうだよね、社長はホテルで密会しているんだから。わざわざ人の目に触れることはしない。
彼女の話が真実なら、社長が私をゲストルームに招き入れたのは、性的な対象ではないということになる。
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