19
「杉山さん、前へ」
「はい。
今年入社したばかりなのに名前には木や花に関する文字が並ぶ。
前社長のこと言えないじゃない。採用理由は名前?
でも社長が採用しただけあって、確かに美人だ。
「そう資格があるなら早いわね。華ちゃんに担当を任せるつもりだったから、ちょうどいいわ。今日から私のアシスタントね」
「本当ですか? 一生懸命頑張ります」
強力なライバル出現だな。
若いし美人だし、外見はすでに負けているのに、フラワーアレンジの技術も知識も上回っていたらヤバいな。
失敗すれば彼女が担当を持ち、私がアシスタントに逆戻りかも。
「僕は店長の幹です。正社員の小林と椿。アルバイトの木葉と小桜。取り敢えず、小林から指導を受けて下さい。わからないことは遠慮なく聞いて下さいね」
「はい」
「今後、歓送迎会に関しては、銀座店店長に一任する。以上だ」
「社長ありがとうございました。先日は大変無礼な発言をして、申し訳ありませんでした」
「先日? 銀座店の売上成績と小林さんの表彰を兼ねてセッティングしたまで。そのような気遣いは無用だ。そういえば、店長はあの日は真っ直ぐ帰宅したのか?」
「はい。椿を送り帰宅しました」
「彼女を送った。成る程」
社長と視線が重なり、思わず目を逸らした。
「申し訳ありません。社長、配達があるので、私は失礼します」
社長の前を通り過ぎようとした時、何かに躓き前のめりになる。
転けそうになった私を店長が直ぐ様抱き止めた。
躓きの原因は、檀の白いハイヒール。わざと足を引っ掛けたんだ。
「華ちゃん大丈夫? 慌てなくても配達時間にはまだ余裕あるから」
店長の腕から、慌てて離れる。
「店長ありがとうございました。すみません」
私達の様子を見ていた社長が背を向けた。秘書も社長の後に続く。
気付いたのかな……?
私と店長の嘘……。
社長は車に乗り込み、車は走り去る。
「椿さん大丈夫ですか?」
接客を終えた木葉君が走り寄った。
「あの社長秘書、気にいらないな。わざと足を出したに違いない」
「違うわ。私がうっかりしてたからいけないの。じゃあ配達に行ってきます」
「いってらっしゃい」
車に乗り込みハンドルを握る。社長に店長のことを知られてしまった……。その思いから、ハンドルを握る手に力が入る。
「椿さん、私も社長の秘書苦手です。威圧的ですよね」
だよね。
檀は人妻なのに、全ての女性に敵意向き出しだよ。
それでも社長が手放さないのは、それだけ有能な秘書なのか、それともそれだけ魅力的な女性なのか。
凛子ちゃんがいるのに、秘書を抱く神経がわからない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます