14
「華ちゃんもそろそろ担当持たせてもいいわね。ねぇ店長」
「そうだね。でも昨日社長憤慨してたからな。スクール開校の話は消滅かも」
「だよね、ちょっと言い過ぎたかな。でも私は広い教室に何十人も詰め込むよりも、十人前後を教える方がいいわ」
「そうですよね。私もその方がいい。早苗さんがずっと本社になったら、銀座店回らないですよ」
「だから、華ちゃんが頑張るんでしょう。店長、華ちゃんに幾つか担当回して」
「そうだね。そろそろ華ちゃんも一人立ちする時期かも知れないな」
いつも反対するのに。
あっさり賛成したのは、昨日私と寝たから?
店長に視線を向けると目が合った。思わず視線を逸らす。
「おはようございます」
午前のクラスの生徒さんが、続々入店する。
「おはようございます」
私は準備した花材やグリーンを教室に持ち込んだ。
――午前中のレッスンを終え、昼休憩。店番は店長に任せ、教室の片隅で早苗さんと昼食をする。
私は駅で買ったサンドイッチとジュース。早苗さんはコンビニ弁当だ。
「ねぇ、華ちゃん。今日店長変じゃない?」
「えっ?」
「なんか落ち着きがないんだよね。奥さんと喧嘩でもしたのかな」
「……そうですか? いつもと変わらないと思いますけど」
「そうかな」
早苗さんはカンがいい。
私と店長の不倫なんて、きっとすぐに暴かれてしまう。
「早苗さんはあれからどうしたの?」
「私? 社長からもらった特別賞与、パァーッと使ったの。アイツからもらったお金、財布に入れると運気が下がりそうで嫌だったから」
「えーー……全部ですか! 勿体ないなあ」
「ホストクラブじゃ、足りないくらいだよ」
「ホストクラブ!? 早苗さんって、そんなところに行ってるんですか?」
「たまーにね」
早苗さんがホストクラブだなんて、驚いたな。
「華ちゃん行ったことないの? 今度連れていってあげようか」
「いえ、私はそういうところは苦手なので……」
「だよね。華ちゃんは免疫ないから、きっとすぐ男に騙されちゃうよ。危険な恋はスリリングで刺激的だけど、気をつけなよ」
「はい、重々気をつけます」
もう……。
片足、突っ込んでる。
「それより昨日私達社長に楯突いたけど、お咎めなしだってよ。あんなに憤慨していたのに、お咎めなしなんて、どうしたんだろう」
私との約束を社長は守ってくれたんだ。
そんなに前社長が怖いのかな。
「早苗さん、社長と何かあったんですか?」
早苗さんは箸を止め、私をギロリと睨む。
「別に。Bクラスはプリザーブドフラワーを使った壁飾りね」
「はい」
早苗さんと社長の間に、何か蟠りがある。私には社長の方が早苗さんに気を使っている気がする。
やっぱり……。
あの噂と関係しているのかな。
気になるけど、パンドラの箱を開ける勇気はない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます