「銀座店の歓送迎会は昔からファミレスか居酒屋と決まってるのよ。今回は早苗さんの功績により、ランクアップ。早苗さんに感謝しないとね」


「私は別にファミレスでも居酒屋でも良かったけどさ。新社長嫌いなんだよね」


 やっぱり、あの噂は本当なのかな。


 エレベーターは最上階に着き、みんなでディオラマに入店する。


「いらっしゃいませ」


「フラワーショップ華です」


「お待ちしておりました。個室にご案内致します」


 個室?

 ディオラマに個室あるんだ。


 店員に案内されたのは、VIPルームだった。


「凄い」


 木葉君は息をのみ、室内を見渡した。天井にはシャンデリア、ゴージャスな雰囲気。


「随分奮発したわね。それとも、見栄を張りたかったのかな」


「早苗さんを繋ぎ止めるために必死なのでは?」


「馬鹿馬鹿しい。新社長は従業員に媚を売るタイプではないわ。逆よ、力を誇示したいタイプ」


 以前新社長を拝見したことはある。でも会話は交わしたことはない。前社長は気さくな人だったが、新社長は傲慢な方だという噂があり、近付き難い。


「早苗さん脅かさないで下さいよ」


「華ちゃん社長と話したことないの?」


「はい」


 緊張して待っていると、店長が少し遅れて入店した。


「お待たせ。社長ももうすぐいらっしゃいます。取り敢えずドリンクを注文しましょう」


 店長は店員を呼び、ドリンクを注文する。未成年者の凛子ちゃんにはノンアルコールのトロピカルドリンク。


 と、その時……。

 黒のブランドスーツに身を包んだ男性が、セクシーな女性と共に入室した。


 男性は少し冷たい眼差し、女性はロングヘアの美女。


 赤い口紅。赤いスーツはミニタイトスカート。美脚の足下はエナメルの赤いパンプス。まるでホステスだ。


「待たせたな。今夜はドンペリを用意させた。料理もオーダーしてある。存分に堪能するがいい」


 ドンペリ……!?

 マジで?


 ドンペリがグラスに注がれ、シャンデリアの光りに照らされ、グラスの中で宝石みたいに輝いていた。


「社長、本日はお招きありがとうございます」


「銀座店は我が社で営業成績はトップ、小林さんのフラワーアレンジ教室は大人気で、半年以上入会待ちらしいね」


「お陰様で、ありがとうございます」


「檀、小林さんに特別賞与を」


「はい」


 檀と呼ばれた派手な女性は、どうやら社長の秘書らしい。


 社長は金一封を早苗さんに手渡した。店長が拍手をし、私達もつられて拍手をする。


「新人アルバイトも大人気らしいね。人選に誤りはなかったようだ。小林さんには今後フラワーアレンジ教室に力を入れて欲しいと思っている。そのため、本社ビルに本格的にスクールを開校することも視野に入れている。銀座店はスタッフの増員も視野に入れ、調整するつもりだ」


「本社ビルにフラワーアレンジのスクール開校ですか? ありがとうございます」


「取り敢えず、今後益々の繁栄に乾杯するとしよう」


 グラスを手に取り、乾杯をする。初めて口にするドンペリにみんな興奮気味だ。

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