【1】秘密の恋
華side
2
「
爽やかな好青年。スレンダーな体。
ブルーの瞳、黒髪。カラコンだと思ったけど、名前からしてどうやらハーフらしい。
ここはフラワーショップ
フラワーショップ華corporationの店舗は、都内に数十店舗あり、小さな店舗は駅の構内から銀座店のようにフラワーアレンジを専門とする店舗もある。
店長は
副店長は
独立しても十分やっていけるはずなのに、当社と専属契約を結び社長が手放さないという噂だ。
そして私、
勤続七年目にして、未だに副店長早苗さんのアシスタントだ。
銀座店の正社員は三名。
社員は外回りが多く、店内の混み合う夕方から夜の時間帯と、日祝はアルバイト二名でシフトを組んでいる。
人員的にはとても足りている状態とはいえない。
アルバイトの一人は向日葵女学院大学在籍の、
某アイドルグループのメンバーよりも色白でキュート。彼女が働く夕方から夜の時間帯は、銀座のネオン街に流れる男性の足が止まり、来店客がドッと増える。
そして今回採用されたのが、イケメンハーフの木葉羅瑠久。これは銀座で働く御姉様方と、女性客のハートをゲットするためだ。
社長の魂胆はみえみえで、バイトのスタッフは美男美女を揃え売り上げアップを目論む。
先代の社長が今年引退し、
履歴書は写真重視。面接は美形有利。
芸能プロダクションでもないのに、従業員まで美に拘わる周到ぶり。
今就職試験を受けたら、きっと私は書類選考で落とされていただろう。
「木葉羅瑠久か、ハイカラな名前だね。お母さんがアメリカ人なんだ」
「はい。母がアメリカ人で父が日本人。外見はハーフですが、ずっと日本で育ったので、英語は苦手ですが簡単な英会話くらいなら可能です」
店長の質問に日本語でスラスラと答える。
なんだ、日本語ペラペラで英会話も出来るんだ。これで日本語しか話せなかったら、逆に笑えたのにな。
「今夜、木葉君の歓迎会をするから。凛子ちゃんも参加出来るよね」
「はい」
「新社長になりアルバイトは容姿で合否が決まる。だからみんな続かないのよ。すぐに辞めちゃうんだからさ、教えてもキリがないよね。華なんて、今だったら絶対受からないよね」
ていうか、副店長の早苗さんだって不採用だよ。
「まぁまぁ、内輪揉めしないで。社員同士楽しくやりましょう」
「楽しくなんてやってらんないよ。得意先回りの花材もう用意してる? 華、得意先回りに行くよ」
「はい。今日は五店舗です」
車に花材とグリーン《葉もの》を積み込み、私と早苗さんは二人で契約先の銀座のクラブやバーに向かった。
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